経済成長が右肩上がりで終身雇用制が当たり前だった時代であれば、住宅ローンの借入額は借りられる上限でよかったかもしれません。
借りられる上限で購入すればそれだけ高額の住宅ということなので売却する際も高く売れます。
しかし、変化の激しい現在では住宅ローンを上限いっぱいまで借り入れるのはリスクが高いといえます。
実質的な収入が伸びず、終身雇用制度も崩壊した現在では、無理のないローンの返済計画を考える必要があります。
無理のない返済計画のためにローン以外のことも考える
年収が多いほど住宅ローンの負担も軽くなるので、年収がいくらかは融資の審査でみられます。
特に「一年間のローン返済額÷年収」は返済比率といわれて重視されています。
たとえば、年収400万円の人が年間100万円のローン返済をしているなら、その人の返済比率は25%になります。
金融機関がローンを貸すにあたって設定してるのが、年収が300万円未満だと返済比率は30%以下、それより多いと35%までが上限というのが一般的です。
中には35%を超える返済比率を設定している金融機関もありますが、35%を超えると返済がきつくなります。
一般的に20~25%までに抑えた返済比率が理想とされています。
金融機関が融資してくれる上限を借入可能額、返していけるローンの金額を返済可能額ということもあります。
返済比率35%が借入可能額としたら、20~25%が返済可能額といったところでしょうか。
無理のない住宅ローン返済金額を考えるには、住宅ローン以外のことも考えなければなりません。
これから将来お金を必要とするのは何も住宅ローンだけではなく、車の購入とそれに伴う維持費、子供の教育資金といったものも必要となるからです。
住宅ローン以外の住宅の維持費としては、固定資産税や修繕費、区分所有マンションなら管理費といったものがあります。
忘れがちなのが一戸建ての方です。一戸建てであっても建物は老朽化しますから、将来の修繕に備えて修繕費を積立預金や投資信託等で積み立てておくと無理なく準備できます。インフレによる修繕費の高騰も考える必要があります。
ちなみに区分所有マンションで毎月支払っている修繕積立金は共用部分の修繕のものなので、専有部分の修繕については別に自分で用意する必要があります。
また、住宅を購入する際には、不動産会社に支払う仲介手数料、税金などの清算金、印紙代や登記費用がかかります。
住宅ローンにかかるものとしては、事務手数料、保証料、印紙代、登記費用、火災保険料といった諸費用があります。
ローンの返済金額を決めるもの
住宅ローンの返済金額は、借入金額、借入期間、金利で決まります。
借入金額が多ければ当然返済額は大きくなります。
4000万円であれば、月12.2万円(1.5% 35年)
5000万円であれば、月15.3万円といったようにです。
次に借入期間についてですが、ローンの借入期間が短ければ返済金額は大きくなり、借入期間が長ければ月の返済金額は少なくなります。
たとえば、35年であれば月12.2万円でしたが、25年であれば月16万円になります。
ただし、負担する利息は短ければ少なく、長ければ多く支払うことになります。
住宅ローンの金利は高いほど返済額は大きくなり、負担する利息と総返済額も多くなります。
1.5%の時は12.2万円でしたが、1%なら月11.3万円になります。
また、返済方法には元利均等返済方式と元金均等返済方式とがありますが、現状では元金均等返済方式を選ぶ人は少なく、扱っている金融機関も少ないです。
元利均等返済方式でも繰り上げ返済を随時していけば、そこまで深く考える必要はないと思います。
無理のないローンの返済金額
理想的な返済比率は20~25%といわれており、住宅金融支援機構の2020年の調査では、フラット35を借りている人の平均返済比率は22.2%だったという結果もあります。
自己資金が多いと借入する金額は少なくて済むので、多いことは無理がない返済金額になります。
とはいえ自己資金が多くてもその分借入額を増やしていたら意味がありません。
借入期間が長いほど毎月の返済金額が安くなるので、無理のないローン返済金額のために借入期間を延ばすというのも一つの手です。
利息の支払いを少なくするために借入期間を短くする人は多いですが、借入期間を短くして破綻したら元も子もないからです。
父母や祖父母から援助してもらえるなら「直系尊属から住宅取得等資金の贈与」を受けられます。
これは父母や祖父母といった直系尊属から住宅取得資金を贈与してもらった場合に、条件を満たすことで一定額まで非課税を受けられるという制度です。
おわりに
購入したら住宅ローン控除の申請も必要です。
住宅ローンを組んだ後の金利の動向によっては借り換えを検討することも必要です。
借り換えによって総返済額を抑えることが出来れば、老後や介護資金に回せますし、当分使う予定がないなら投資に回してみることもできます。
妻と夫のどちらも高収入の夫婦はパワーカップルと呼ばれてますが、夫婦で働いていれば収入合算やペアローンを選択することもできます。
ペアローンで条件を満たせば住宅ローン控除をそれぞれ受けることもできますが、死亡しても債務が残るといったデメリットもあります。
人生は必ずしもうまくいくとは限らないので、余裕をもって考えることが無理のない返済計画につながります。