令和4年4月から、老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給開始時期の繰り上げ・繰り下げの選択肢が拡大されます。
公的年金には国民年金と厚生年金があります。
老齢を原因として支給する公的年金であれば、国民年金からは老齢基礎年金が、厚生年金からは老齢厚生年金がそれぞれ支給されます。
この老齢というのは65歳からをいい、ちゃんと保険料を払っていれば、65歳になると老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることができます。
このように老齢年金は65歳から受け取るのが原則です。
令和4年3月までの公的年金の繰り上げおよび繰り下げ
令和4年3月までの繰り上げと繰り下げの扱いは以下の通りです。変更される箇所に(変更)をつけてます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から支給されますが、本人の申し出により、60歳から70歳(変更)までの範囲で繰り下げ、繰り上げを選択できます。
繰り上げ支給および繰り下げ支給をしない人は、原則通り65歳が年金支給開始となります。
65歳よりも早く受け取る場合を繰り上げ支給といい、1月早く受け取るごとに0.5%減額(変更)されます。
つまり、繰り上げ支給を選べば最大で60歳から年金を受けれますが、0.5%×60月=30%(変更)の減額された金額となります。
反対に65歳よりも後に受け取る場合を繰り下げ支給といい、1月遅く受け取るごとに0.7%増額されます。
つまり、繰り上げ支給を選べば最大で70歳(変更)まで年金は受けれませんが、0.7%×60月=42%の増額された金額を受けれます。
繰り上げ支給も繰り下げ支給も生涯を通じて決定されるので、選択はライフスタイル(働き続けるか、資産はあるか等)を踏まえて決めるのが大事ですが、実際はなかなかうまい具合にいかないのが世の常です。
令和4年4月からの変更で上限が75歳に引き上げ
60歳から70歳までだった繰り上げ・繰り下げを、令和4年4月から60歳から75歳に上限を引き上げます。
この制度の対象になるのは、昭和27年4月2日以降に生まれた人です。
引き上げ後も1月当たりの増額は0.7%なので、最大で84%(0.7%×120月=84)となります。
また、繰り上げ支給の減額率が1月当たり0.5%だったのが0.4%に引き下げられます。この結果、最大で24%(0.4%×60月=24)の減額となります。
原則の65歳を100とした場合の増減率
年齢 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 | 65歳 |
増減率 | 76% | 80.8% | 85.6% | 90.4% | 95.2% | 100% |
年齢 | 66歳 | 67歳 | 68歳 | 69歳 | 70歳 |
増減率 | 108.4% | 116.8% | 125.2% | 133.6% | 142% |
年齢 | 71歳 | 72歳 | 73歳 | 74歳 | 75歳 |
増減率 | 150.4% | 158.8% | 167.2% | 175.6% | 184% |
75歳まで繰り下げを選択すると、10年間年金はありませんが、1.84倍に増えます。
在職定時改定
改正前は、在職中の老齢厚生年金は改定されず、退職等によって被保険者でなくなった時に改定されてました。
しかし、今回の改正からは、65歳以上で在職している老齢厚生年金受給者は、毎年10月に年金額を改定し、納めた保険料を年金額に反映します。
つまり、働き続ながら保険料を納めたことが退職しなくても年金額に反映されることになります。
それと60歳~64歳を対象にした特別支給の老齢厚生年金(65歳からのは本来支給という)の在職老齢年金制度で、支給停止の基準額である賃金と年金月額の合計が28万円から47万円に変更されます。
といっても特別支給の老齢厚生年金があるのは、男性は2025年前、女性は2030年前までなので、現役世代への影響はほぼありません。
平均寿命から見る選択
厚生労働省が発表してる平均寿命の国際比較では、2020年度の日本の平均寿命は男性で81.64歳、女性で87.74歳となっています。
あくまでも平均なので、全ての人に当てはまるわけではありませんが、こういった数値は参考になります。
シェアリングエコノミーの普及により、65歳以上になっても働く場所が増えています。
車をシェアするウーバー、スキルをシェアするクラウドワークスや、宿泊所をシェアするAirbnb等はよく知られています。
日本では規制が壁となってますが、将来的には規制緩和される可能性が高いので、無理のない範囲で働き続けるというライフスタイルも増えてくるでしょう。
2020年の日本の平均寿命は、男性で81.64歳、女性で87.74歳でしたが、平均寿命は年々延びています。
老後資金2000万円問題も、今の現役世代が老後になる頃にはインフレで2000万円では不足するようになるはずです。
そういった意味では、働き続けることや資産運用をすることはリスク回避、緩和になります。
おわりに
・老齢基礎年金および老齢厚生年金の受け取り時期の選択肢が60歳から75歳に拡大されます。
・増減率は、最大で76%(60歳)~184%(75歳)と幅が拡大します。
・繰り上げ支給の減額が1月当たり0.5%から0.4%に引き下げられます。
・在職定時改定が始まります。
以上、年金を受け取りながら働き続けるという選択肢が考えられる、というか当たり前になってくるかもしれません。
繰り上げ支給で年金が増えても、インフレ次第で帳消しとなるリスクはあります。その点も踏まえて選択するのがよいでしょう。