業務が原因でケガや病気を負うことは業務災害といわれ、労災保険の対象になります。
労災保険は、業務上の事由による災害(負傷、疾病、障害、死亡)や通勤による災害で被害にあった労働者や遺族に必要な給付を行う社会保険(労働保険)です。
業務に起因するケガや病気は労災保険の対象になりますが、業務以外のことが原因でケガや病気を負った場合は支給対象になりません。
業務外で負ったケガや病気で休業する場合は、健康保険の傷病手当金を受給することができます。
業務外のケガや病気は労災保険の対象外
まず、労災保険は業務上の事由によって労働者がケガや病気になった場合に給付されるので、業務と関係ないことが原因のケガや病気は対象外です。
休みが短期間で済む場合は有給休暇を取って対応できますが、休みが長い場合は私傷病休職の申請をするのが一般的です。
私傷病休職の制度については健康保険等の法律に規定がなく、各企業が就業規則によって決めています。
私傷病休職の期間については、ある企業は3か月、別の企業は1年だったり2年だったりとまちまちです。
零細企業なんかだと私傷病休職制度自体がないことも多いです。
私傷病休職制度があったとしても賃金を支払ってくれるとは限りません。
中には就業規則に1か月や3か月賃金を支払ってくれると記載してる企業もありますが、ほとんどの企業はノーワーク・ノーペイの原則に基づいて無給です。
ノーワーク・ノーペイの原則は、労働者が働いてなければ使用者も賃金を支払う義務はないという原則ですが、これは当然と言えば当然の話で違法でも何でもありません。
健康保険の傷病手当金の支給要件
短期間の休業であれば有給休暇で対応できますが、そうでなければ健康保険法の傷病手当金があります。
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の事由によるケガや病気で働けず、療養のために3日以上連続して欠勤した場合に4日目から対象になります。
傷病手当金の支給要件
1.療養中であること
2.働くことができないこと
3.連続して3日間の待期を満たしたこと
注意は3日間の待期は通算ではなく、連続していて初めて完成するという点です。
そのかわり待期期間に休日が含まれていても、有給休暇として処理されていても大丈夫です。
傷病手当金の支給額
傷病手当金の支給額は、1日につき直近12ヶ月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額です。
標準報酬月額は保険料の計算をする際に使われるもののことです。
標準報酬月額は1か月分なので、それを30分の1にすると1日分になります。
1日分の3分の2が給付日額になります。分かりにくい人は1日あたりの3分の2といった理解でもいいと思います。
重要なのはざっくりとでいいので、こういう制度があることを知っておき、どれくらい受給できるか知ることです。
それから休職してても社会保険料は免除されません。
それと賃金を全部または一部受けることができる場合は、この期間は傷病手当金は支給されないことになります。
賃金の一部が支給額より少ない時は、差額が支給されます(併給調整)。
ちなみに出産手当金、障害厚生年金、老齢退職年金、休業補償などでも調整されます。
傷病手当金の支給期間
傷病手当金の支給期間は、連続して3日以上働けず、「支給が始まった日」から1年6か月の範囲が限度です。
1年6か月分が支給されるのではなく、1年6か月が限度ということです。
支給が始まった日は、あくまでも実際の支給開始日から起算され、たとえば3日間の待期期間を満たして4日目に仕事をし、5日目に再び労務に服することが出来なくなれば、5日目から支給されます。
賃金が受け取れるときは傷病手当金が支給停止されるので、賃金を受けなくなった又は報酬の額が傷病手当金より少なくなったときはその日が支給が始まった日になります。
傷病手当金の支給申請
傷病手当金を受けるには「健康保険傷病手当金支給申請書」での申請が必要です。
申請には、医師又は歯科医師の意見書および休業期間や報酬の支払いについて事業主の証明が必要です。
申請書の提出先は、全国健康保険協会の被保険者であれば都道府県支部に提出し、健康保険組合の被保険者は会社の担当者(総務など)に確認します。会社の担当者が代わってしてくれることもあります。
おわりに
ちなみに自営業者は傷病手当金の対象になりません。
また、傷病手当金の対象であっても、休職期間が終了したのにケガや病気が回復せず働けない人もいます。
そういう場合は退職や解雇ということが考えられます。
こういったリスクに備えて民間保険の就業不能保険を検討するのもいいかもしれません。