宅地建物取引士を取って不動産業を始めるための流れ

老後やセカンドライフに向けて宅地建物取引士(以下宅建士)の資格を取る人が増えているそうです。

不動産の取引では契約の前に重要事項説明を行いますが、その際に必要となる資格が宅建士です。

ネットなどに宅建士は簡単といった声がありますが、宅建士の試験は合格率が毎年15~18%に調整される、5人に4人が不合格になる難しい試験です。

 

宅建士の資格は知名度が高く、法律の基礎が身につくことから自己啓発資格としても人気です。

宅建士の資格があるだけで不動産業を開業できると思われたり、資格がないと不動産取引ができないと思われるなど、知名度の割に誤解も多いです。

 

宅建士を取って将来、独立したいと思ってる人は多いですが、独立することはそう簡単ではないかもしれません。

不動産業を始めるための要件

不動産業者として独立するには、宅地建物取引士(以下宅建士)の資格を取るだけではできません。

試験に合格した後、登録して宅建士証の交付を受けることも必要です。

 

以下、宅建士試験合格から独立するまでの流れです。

1.宅建士試験に合格して登録し、宅建士証の交付を受ける

2.法人にするか個人にするかを選ぶ

3.事務所を契約する

4.宅地建物取引業の免許を取得する

宅地建物取引業者の免許を取得すれば営業を開始できます。アットホームやホームズといった不動産ポータルサイトも免許があれば契約(出稿)できます。要は免許があるかないかということです。

宅地建物取引士について

宅建士は、宅建士(たっけんし)の通称でも知られる有名な資格です。

知名度が高く、合格に必要な勉強時間も300時間と半年~頑張れば合格を狙えることから、キャリアアップ目的で目指す人も多いです。

宅建士の資格を通して、不動産に関することだけでなく、民法の基礎も学びます。

 

宅建士の資格がないと行えない業務を独占業務といい、宅建士の独占業務には以下のものがあります。

  • 重要事項説明
  • 重要事項説明書の記名
  • 契約書の記名

 

また、不動産業者の事務所には5人に1人以上の宅地建物取引士の資格者を置かなければいけません(必置義務)。

 

宅建士の資格がなくても不動産業は営めますが、その場合は独占業務を行えないので有資格者を雇わなければいけません。それならば自分で宅建士の資格を取るのが確実です。

また、宅建士として活動する場合は、試験に合格しただけでは不足で、宅建士証の交付を受けてる必要があります。

宅地建物取引士証の交付を受ける

宅地建物取引士証(宅建士証)の交付を受けるには、試験に合格した後に登録も必要です。

宅建士の登録には、不動産取引の実務経験が2年以上あるか実務講習を受けることが必要です。

2年以上の実務経験がある人は登録できますし、実務経験がない人でも実務講習を修了することで、それが実務経験としてみなされます。

 

宅建士の登録に必要(どちらか)

  • 2年以上の実務経験
  • 登録実務講習の修了

 

登録した後に宅建士証の交付を受けられます。

不動産取引をする事務所を用意する

自宅開業でも可能な場合がありますが、多くの人は部屋を借りて開業しています。

 

また、事務所を借りる前に不動産業を個人でやるか法人でやるか考える必要があります。

法人であれば、定款および登記並びに資本金の手続きなどが必要です。

不動産協会の職員さんは9割以上が法人と言ってましたが、個人であっても要件を満たせば免許を取得できます。

 

不動産の取引を行うためには、宅地建物取引業の免許が必要ですが、免許取得の要件に事務所要件というものがあります。

事務所には独立した入口が必要とされ、独立したスペースにテーブルとイスも必要です。また、固定電話の番号も必要とされ、スマホでは不可とされています。

都道府県によって一戸建てでも許可されることがありますが、シェアハウスや共同で使用する部屋は不可とされています。

 

ポイント

個人か法人か決める→事務所を借りるか自宅かを選ぶ

宅地建物取引業の免許を申請する

宅地建物取引業の免許をを申請するには、本店で1,000万円の供託金が必要とされています。

ほとんどの不動産業者は、宅建協会や不動産協会に加盟することで供託金を抑えています。

宅建協会や不動産協会に加盟した場合は、毎年会費(8万円くらい)がかかりますが、供託金を本店で60万円にすることができます。

また、協会に加盟する場合は、協会への加盟料が80万円必要で、保証協会にも20万円かかります。

事務所の初期費用やポータルサイトの費用を考えると、初期費用として400万円は最低でも必要かもしれません。

 

宅地建物取引業の免許の申請先は、都道府県の建設課です。

免許を申請する際に、協会について申請するよう資料をもらうこともあります。

申請しても許可が下りるのに2カ月くらいかかるので、それまでにできることをしておきます(ホームページ作成、備品の確保など)。

 

免許の申請では事務所が要件を満たしてるか分かる写真の提出も必要です。

  • 独立した入口があること
  • 固定電話が設置されていること
  • テーブルとイスがあること(接客できる)
  • 専用スペースがあること

など

宅地建物取引業の免許があれば取引ができる

申請後、無事に審査が通れば宅地建物取引業の業者票をもらえます。

この宅地建物取引業者票には、免許証番号というものが記載されており、この番号はこの後も使います。

 

免許証番号が必要なとき

研修、ポータルサイトの契約時、不動産取引の書類、免許の更新など

 

宅建協会や不動産協会に加盟するとレインズが使えるようになります。

レインズは不動産業者間で情報を共有したサイトをいいます。

レインズがあれば流通している物件の9割以上を扱えることができるので、開業したばかりであっても何千、何万の物件を紹介できます。

大手不動産仲介会社で紹介できる物件は、駅前で一人でやってる小さな不動産会社でも紹介できるのはこのような理由です。

まとめ

・宅建士に合格してから不動産業として独立するまでは3、4カ月かかる

 

・以下、宅建士合格から独立までにかかる費用の目安です。

宅地建物取引士証でかかる費用

  • 登録料 37,000円
  • 交付手数料 4,500円
  • 法定講習 12,000円

 

事務所費用

  • 不動産業の事務所費用は、1階(高い)とそれ以外でかなり差があります。
  • 小規模で始める場合は100万円からでも可能です。2階以上なら月10万円以下の家賃もあります。
  • パソコンや固定電話、テーブルやイスなどだけでも数万円かかります。
  • 最初に費用をかけると後で苦しくなる可能性があります。

 

宅建・不動産協会の加盟料

  • 供託金60万円(本店)
  • 加盟料80万円
  • 保証協会20万円

他にも費用がかかることがあります。

 

法人を設立した場合、株式会社や合同会社といった形態によっても違いますが、株式会社なら定款や登録免許税といったものも含めて25万円くらいかかります。

開業後は、ポータルサイトへの広告費もかかるので、最低でも500万円は用意したほうがいいかもしれません。