不動産を売却するときに詐欺にあわないための最低限の知識

投稿日:2019年11月20日 更新日:

不動産の取引では、聞き慣れない専門用語と接したり、普段の生活では馴染みのないことも行われます。

普通の人は不動産を売却することに慣れておらず、不動産の購入はスーパーで大根を買うのとは訳が違います。

詐欺業者や悪徳業者は、消費者との知識に差があることを活かして、難しい聞きなれない言葉を用いて専門家を装い安心させます。

悪徳業者は、消費者との知識や経験の差を利用して、委託費用、広告費用、測量費用などといって金銭を請求してきます。

金銭を支払ってからでは遅いので、過去の例を知り、少しでも詐欺を見抜けるようにすることが大切です。

悪徳業者は消費者の不安に付け込む

田舎のお父さんが亡くなって不動産を相続したのはいいけど、固定資産税もかかるし、修繕も必要みたいだし、最近では空き家に勝手に住み着く人もいるって聞くし、安くてもいいから処分できないかしら」

悪徳業者は、こういった所有者の不安や悩みに付け込んで「間違いなく〇〇〇万円以上で売れますよ、ただし広告費用が〇〇万円必要です」と高額な請求をしてきます。

売却が難しい不動産を相続したと悩んでいた所有者は、数十万円の費用で不動産を処分でき、さらに何百万円も手に入るわけですから渡りに船です。

悪徳業者は数十万円が目的なので、所有者が金銭を支払った後にいくら連絡を取っても二度と通じることはありません。

 

昔は不動産は持ってるだけで値上がりしてましたが、地方の不動産だと今はただでも引き取り手がいないそうです。

不動産は所有してるだけで税金や修繕費がかかります。

区分所有マンションであれば、専有部の修繕費に加えて管理費と修繕積立金もかかります。

 

数十万円の費用で不動産を引き取る業者も実際にはいるので、判断が難しいこともあります。

温泉地のマンション、田舎の投資物件では、悪徳業者の詐欺行為による被害が起きていて、消費者庁などでも注意喚起をしています。

 

家賃の不安に付け込むサブリース業者もいる

昨年は、サブリース契約によるトラブルがニュースで連日取り上げられましたが、消費者庁はサブリースについても注意を促しています。

 

サブリース自体は詐欺ではありませんが、サブリース契約によるトラブルは後を絶ちません。

 

サブリース契約は、サブリース業者がアパートを一括して借り上げ、一定の賃料を保証するといった契約です。

所有者にとっては、一定の賃料を確保でき、管理も業者が行ってくれるので手間がかからないように見えます。

 

最近は老後不安が問題になってるので、不労所得に興味を持つ人が増加してます。

サブリース業者は、一定の家賃を約束し、管理の手間も請け負うといって、言葉巧みに投資物件の取得を勧めます。

 

賃料の確保と管理の手間をテーマに人気となりましたが、実際は肝心の賃料について賃料減額をめぐってトラブルになっています。

賃料減額に応じない場合は、サブリース契約を解約するといったトラブルも起きてます。

 

また、所有者が売却しようと思ってサブリース契約を解約しようと思っても、解約には何ヶ月もの解約料がかかるといったトラブルが起きています。

サブリース契約ではサブリース業者が有利になっている

サブリース契約をめぐって、2011年にレオパレスが訴えられ、今年の5月にはスマートデイズが破産して社会問題化しました。 サブリースについては、過去に何度もトラブルが起きていますが、トラブル解消に向けた …

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不動産売却で過去に起きたトラブル

売却をめぐって様々な方法で金銭を支払わせようとする悪徳な業者もいます。

 

「亡くなった父が不動産を保有していたことが発覚したと電話があった。その不動産を売却しないかと提案され、そのためには委託費用がかかると請求された。」

 

「間違いなく3000万円で売れるなどと言い、広告料数十万円を支払わされた。」

 

「この不動産の購入希望者がいるなどと言われ、測量費用を数十万円支払わされた。」

 

「遠方の業者から突然連絡があり、生前に父が保有していた土地があるから売却しないかと持ちかけ、広告費・委託費といった名目で数十万円を支払わされた」

 

最近は高齢率も上昇し、相続で実家の不動産を取得する人も多くなりました。

相続で建物を取得しても、建物を保有しているだけでは維持費がかかり、そのままだと資産が流出していきます。

こういった不動産ならぬ負動産を所有している人に対して、間違いなく売る方法がある、買い手がいる、買い取るなどと言葉巧みに近づくのが悪徳業者というわけです。

 

最近では売却しようにも難しい物件も出てきました。

安くしても売れないリゾート地のマンションや、寂れた街に建つ別荘、売却が難しい土地などです……所有者の中には安くてもいいから早く処分したいという人は多いです。

また、地方ではタダでも引き取り手がいない不動産も増えています。

 

囲い込みはなくなってない

大手不動産で行われていたのが囲い込みといわれる行為です。

 

不動産の売却では、レインズ(指定流通機構)に登録することで、不動産業者間に情報が行き渡り、買主を早く見つけることが可能になります。

売主から依頼を受けた不動産業者が、レインズに物件を登録するまでは同じですが、囲い込みの場合は、ほかの不動産業者に物件を紹介しません。

 

仲介業者は、売主と買主の双方を自分で見つければ、手数料を双方から得ることができます。

他社の不動産業者が買主を見つけてしまえば、売主からしか手数料を得ることができません。

そのため、購入希望者がいないにもかかわらず、ほかの不動産業者の問い合わせに対し、「契約予定」「申し込みが入った」「商談中」などといって紹介を拒みます。

これが囲い込みといわれる行為です。

 

売主は、不動産業者に依頼すれば、当然誠実に売却活動を行うものと思うでしょう。

囲い込みは大手不動産で行われていた行為なのですから、大手不動産だからといって安心はできないことになります。

囲い込みの結果、物件がなかなか売れず、価格を引き下げざるを得ないということもあります。

 

専門家でもだまされる

2017年には、大手不動産業者(ハウスメーカー)が組織的な地面師に騙されて、約60億円の被害を出すといった事件が起こりました。

テレビでも連日取り上げたので、ご存知の方も多いと思います。

 

この事件は、東京都五反田の約600坪の一等地を組織的な地面師が、印鑑証明者やパスポートを偽造して本人になりすまし、不動産代金63億円をだまし取ったというものです。

この事件では、不動産業者だけでなく司法書士や弁護士もだまされたと訴えており、法律や不動産のプロがそろってだまされたことになります。

 

取引対象となった五反田の物件は、数年前まで旅館として経営されてましたが、事件当時は廃業していました。

土地を遊ばせておくのはもったいないと不動産業者が買い取りの話を持ちかけましたが、所有者の女性は自分の代で土地を手放す気はないと、業者の話をことごとく断っていました。

 

登記簿を調べても抵当権の設定がないことに目を付けた地面師(抵当権があると金融機関が絡むので地面師は避けたがる)は、偽造書類を使って成りすまし女を使い、見事に63億円をせしめました。

 

売却するときに知っておきたい専門用語

不動産取引では、専門用語もよく出てきます。

不動産の売却をトラブルなく行うためにも、最低限知っておいた方がよい専門用語もあります。

 

宅地建物取引業法

不動産会社が、土地建物の取引を行うときは、宅地建物取引業法の規定を守らなければなりません。

不動産会社と一般消費者との間には、知識や経験に差があるので、法律によって消費者を保護しています。

 

宅地建物取引業の健全な発達を促進し、購入者の利益保護と宅地および建物の流通の円滑化を図ることを目的とした法律です。

 

宅地建物取引業者

宅地建物取引業法により、不動産業を営むには宅地建物取引業者でなければなりません。

宅地建物取引業者になるには、1000万円の供託金を収めるか、不動産協会の会員となる必要があります。

 

不動産取引業者は、会社に宅地建物取引業者票をすぐ見える場所に分かりやすい形で表示しなければならないとされており、宅地建物取引業者票を確認できない場合は悪徳業者だったり、不動産業者ではない可能性があります。

 

宅地建物取引士(宅地建物取引主任者)

宅地建物取引士は、不動産取引を円滑するための国家資格の専門家です。

以前の名称は、宅地建物取引主任者でしたが、名称変更によって宅地建物取引士となりました。どちらの名称であっても意味は同じです。

 

宅地建物取引士になるには、合格率15%~18%の試験に合格して、実務経験を満たしたうえで登録が必要です。

契約の前に行う重要事項説明は、宅地建物取引士にしか行うことができません。

 

不動産媒介業者

売主から希望を聞いて不動産の売却や媒介を行う不動産業者です。

媒介は仲介ともいい、売主から売却の依頼を受けたり、購入希望者から依頼を受けて不動産を探して紹介します。

 

売主から依頼を受けて売却活動を行う媒介業者、購入希望者から依頼を受けて不動産を探す媒介業者といったように、一つの取引に売主側の媒介業者と買主側の媒介業者が存在します。

 

不動産の媒介契約

売却や購入の媒介依頼を受けた不動産業者は、トラブル防止に備えて宅地建物取引業法に定める媒介契約書を交付しなければなりません。

 

媒介契約書には、売買であれば一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があります。

 

一般媒介契約は、複数の不動産業者に売却の依頼をすることができる媒介契約です。

 

専任媒介契約は、一社にのみと媒介契約を締結することができます。

ただし、この場合であっても売主が自分で買主を見つけてくることはできます。

また、専任媒介契約を締結した不動産業者には、2週間に1回の報告義務があります。

 

専属専任媒介契約は、一社のみとの媒介契約です。

また、専属専任媒介契約の場合は、売主が自分で買主を見つけることができません。

専属専任媒介契約を締結した不動産業者は、1週間に1回報告が必要です。

 

レインズ(指定流通機構)

指定流通機構とは、通称レインズといわれる不動産業者のみ利用できるサイトです。

専任媒介と専属専任媒介の媒介契約を締結した場合は、このレインズに登録が必要です。

 

一社だけより複数の業者に依頼した方がいいのではないかと思うかもしれませんが、このレインズがあれば不動産業者は情報を共有することができます。

依頼は一社ですが、購入者を探すのは不動産業者全体で行うことになります。

どこの不動産業者も扱っている物件が同じになるのは、このレインズがあるためです。

 

公募売買と実測売買

売却する場合に、登記簿に記載された面積で売買することを公募売買、測量をして実測で売買することを実測売買といいます。

 

登記簿と実測が違うことはよくあります。

 

公募売買は、追加費用がかかりませんが、実測との間に差がある可能性があります。

 

実測面積は、決済までに実測による売買代金の過不足の調整を行いますが、測量費用がかかり、どちらが負担するかといった問題があります。

また、隣地所有者との打ち合わせや確定測量図作成の官民査定などによって時間がかかります。

 

瑕疵担保責任(契約不適合責任)

売却した土地・建物に瑕疵(欠陥・不具合)があった場合の責任を瑕疵担保責任といいます。

2020年4月1日からは契約不適合責任となり、以前は責任の追及のために隠れた瑕疵が必要でしたが、改正により隠れたものでなくても構わなくなりました。

ただし、特約で売主の責任を一定の範囲に限定するのは可能とされていますから、今までと実務的には違わないことになります。

 

今回のまとめ

不動産業者には宅地建物取引業者票を見やすい場所に掲示しなければなりません。これも悪徳業者かどうかを見極める目安になります。

売却が難しい不動産を「間違いなく売れる」「買い取る」などといって費用を請求するのは怪しいです。

また、不動産業者の中には、根拠なく高値で売れるといったり(媒介依頼のため)、囲い込みをしている業者もあります。

 

疑問を持ったり、怪しいと感じたら、別の不動産業者や無料相談などに聞いてみるのも一つの手です。

 

全日本不動産協会や宅地建物取引業協会、消費生活センターや国民生活センターなどでは、業者への指導や無料相談を行っています。

不安に思ったり被害にあった場合は、問い合わせてみるといいでしょう。

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