「頭金なしOK!」「フルローン可能!」
こういった広告をよく見かける一方で、ファイナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザー・モーゲージプランナーといった住宅ローンの専門家は「頭金は2割以上」と言います。
ファイナンシャルプランナーとして相談を受けていると、「頭金はいくら必要か?」といった質問を受けることが多いです。
なぜ頭金が必要で、2割以上が推奨されるのか?
今回はその理由について解説します。
そもそも頭金とは?
不動産は高額なので、普通はローンを利用して購入します。
頭金とは購入した物件のうちの自己資金で用意した金額です。
例えば、4,000万円の物件に対して頭金を400万円用意したのであれば、1割の頭金を用意したということになります。残りは住宅ローン(借入金)で用意することになります。
- 物件価格4,000万円 → 頭金400万円+住宅ローン3,600万円
頭金と混同しやすいものに自己資金というものがあります。
自己資金は物件を購入するために自分で用意したお金です。
不動産の購入は、本体価格以外にもお金がかかるので、例えば、自己資金として500万円を用意したとしても、全てを頭金に充てられるわけではありません。
500万円の自己資金のうち、諸費用が300万円かかったとしたら、残るのは200万円だからです。
- 自己資金500万円 - 諸費用300万円 = 残り200万円 → 頭金200万円
- 自己資金 ー諸費用 = 頭金
- 自己資金 = 頭金 + 諸費用
購入にかかる費用には、仲介手数料・登録免許税・司法書士報酬・印紙税などがあります。
諸費用の目安としてよく言われるのは、物件価格の5%~10%というものです。
新築マンションだと諸費用を抑えることができ、それ以外だと金融機関・保険料・手数料などによって違います。
頭金が多いとローンの審査が通りやすくなる
住宅ローンの借入れる際は、金融機関(保証会社)の審査があります。
頭金をしっかりと準備している人は、計画性がある・信用できるといった評価につながります。
頭金が多ければ、借入額が減るため返済比率も下がり、審査通過の可能性も高まります。
返済比率の目安とは?
住宅ローンの借入れでは、返済比率が重視されます。
返済比率とは、年収に対してどれだけの割合が住宅ローンの返済に充てられるかを示す数値です。
- 返済比率(%)=年間の住宅ローン返済額 ÷ 年収 ×100
例:年収500万円、毎月の住宅ローン返済額10万円(年間120万円)
120万円÷500万円×100=24% → 返済比率24%
金融機関の審査基準
- 年収300万円未満 →30%以下
- 年収350万円以上 →35%以下
フラット35
- 年収400万円未満 →30%以下
- 年収400万円以上 →35%以下
無理のない住宅ローンの目安
- ~20%→安全圏内
- 20~25%→妥当範囲
- 25~30%→負担に感じることも
- 30~35%→マンションは高リスク
頭金が多いと借入額を抑えられるから
頭金が多いということは、それだけ住宅ローンの借入れ額が減るので、月々のローン返済額も軽くなります。
- 物件価格5000万円ー頭金100万円 →住宅ローン4,900万円
- 物件価格5000万円ー頭金1000万円 →住宅ローン4,000万円
借入額が少なければ、利息の総額も大幅に減少するため、トータルでの支払い負担も少なくなります。
金利0.7%、返済期間35年
- 4,900万円 → 月131,575円
- 4,000万円 → 月107,408円
- 差額24,167円 → 総額1,015万円
担保割れのリスクの回避
不動産の価値が、住宅ローンの残高を下回ることをオーバーローンと言います。
オーバーローンになると不動産を売却しても借金が残る状態なので、残る分は自己資金から返済しなければいけないということです。
たとえば、不動産が4,000万円で売れるとします。
しかし、住宅ローンの残高が4,500万円だとしたら、不足する500万円分を貯金なり余剰資金で返すことになります。
これが担保割れとか、オーバーローンとか言われるものです。
頭金として2割充てていれば、オーバーローンの状態にもなりにくくなります。
特に転勤・離婚・売却など、やむを得ず自宅を手放すリスクに備えるには、資産の安全性を高める必要があり、頭金を多めに入れることに意味があります。
新築マンションは値下がりが激しい?
住宅ローンの専門家の中には、新築マンションは登記した時点(中古になった時点)で資産価値が8割になるという人がいます。
こういった理由が真実であれば、確かにマイナスになった2割を補うために頭金が2割必要というのは分かります。
ただ、エリアによっても異なりますが、過去の成約事例を確認すると築5年以内なら1割も下げずに成約してる例が多いようです(神奈川)。
新築物件の値下がり
- 神奈川→築5年→90%以上維持
- 田舎→下落率高い(15~20%)←これ
- ただし、市場にも影響する
購入したばかりでは担保割れが起こりやすいかもしれませんが、ローン残高の減少に伴って担保割れが解消していきます。
また、戸建ては期間が長いほどライフプランで有利になります。
- 重要 → 担保割れを乗り切る →返済できる金額で借りる
- 人生100年時代 → 戸建てが有利
まとめ
「頭金2割以上」のメリット
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住宅ローンの審査に通りやすくなる
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借入額が減るので利息も減り、結果として総支払額を抑えられる
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担保割れのリスクを回避できる
頭金2割というのは、あくまでリスクを低く、安定した家計が続けられる目安という位置づけです。
以下のような場合はこだわる必要はないかもしれません
- 低金利を活かして投資を優先したい(頭金→投資に回すなど)
- 十分な収入・貯蓄があり、万が一にも対応できる
- 教育費や老後資金の計画を明確に立てている
私だったら頭金が2割貯まるまで待ちません。
家賃を支払いながら頭金を準備するのは大変ですし、何より今が低金利ということもあります。
まずは、担保割れのリスクを抑えるためにライフプランを立て、無理のない範囲で借ります。