以前、住宅ローンでマンションを購入して転売してはどうか、という相談を受けたことがあります。
その際、住宅ローンは投資目的では利用できないとお答えしました。
しかし実際には、住宅ローンを使って不動産を購入し、賃貸に貸し出している人は少なくないと思われます。
過去には、この「住宅ローンの投資目的利用」が大規模に発覚し、社会問題となったことがあります。
今回は、その実態と、そこから学べる教訓を整理します。
この記事から分かること
- フラット35が個人の住宅取得専用のローンである理由
- 過去に発覚した投資目的での不正利用の実態と、その後の続報
- 不正利用が発覚した場合に求められる一括返済のリスク
- 転勤等でやむを得ず賃貸に出す場合の正しい対応
フラット35は個人の住宅取得のためにある
フラット35は、住宅金融支援機構が扱う長期固定金利の住宅ローンです。
フラット35に限らず、住宅ローンはそもそも個人の住宅取得を後押しするために低金利で提供される仕組みであり、本人または親族が居住するための利用に限定されています。
投資目的で不動産を取得する場合は、事業ローンやアパートローンなど別の融資を利用する必要があります。
住宅ローンの方が一般的に金利が低いため、住宅ローンで借りられれば借り手にとって有利になりますが、住宅ローンを使って物件を賃貸に貸し出すことは契約違反にあたります。
フラット35の公式サイトでも、次のように明記されています。
フラット35はお申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる新築住宅の建設資金・購入資金、中古住宅の購入資金等にご利用いただけます。
第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金に利用するなどの目的外利用が判明した場合には、お借入れの全額を一括で返済していただく場合がありますのでご注意ください。
過去に発覚した大規模な不正利用

2019年8月、フラット35が投資目的で不正に利用されていた事案が大きく報じられました。
住宅金融支援機構の発表によると、東京都のある不動産業者が関与した契約のうち、105件の不正と49件の不正の疑いが確認されました。
この不動産業者は113件の契約に関与しており、そのうち105件で不正が確認されたことになります。
調査によれば、借り手の多くは20代〜30代前半の単身会社員で、東京近郊の1,000万〜2,000万円台の中古マンションを購入していました。
不動産業者が借り手に「居住用として借りるように」指示し、購入価格を水増しして借入額を多く引き出すという手口が使われていたとされています(2019年8月31日 神奈川新聞)。
住宅金融支援機構は、この件を受けて2018年末時点で完済していない契約すべてを点検すると発表しました。
2020年以降も発覚が続いた不正利用
この問題は、2019年の一件だけでは終わりませんでした。
2020年には、会計検査院の調査により、別途56件・約19億円の不正利用が新たに発覚しています。
住宅金融支援機構は、該当する案件について融資要件に適合するよう是正を求め、応じない場合は一括返済を求めるとともに、融資後の状況調査を徹底する体制を整備すると発表しました。
その後の報道(2021年12月時点)によれば、不正利用に関与した金融機関や不動産業者が処分を受けたという事実は確認されておらず、借り手側だけが一括返済や自己破産に追い込まれるケースが目立ったとされています。
フラット35は2020年時点で約80万件・約18兆円の利用残高があり、今回発覚した不正はそのうちの一部を抽出調査した結果に過ぎないため、実際にはさらに多くの不正利用が埋もれている可能性も指摘されています。
なぜ「住宅ローンでの投資」が魅力的なのか

かぼちゃの馬車事件をきっかけに、金融機関による投資用ローンの審査は厳しくなっています。
マンションは一棟物件と比べて資産性が低いとされ、以前から審査が厳しく、頭金を多めに求められる傾向にありました。
一方、フラット35は勤続年数が短くても審査が通ることがあり、購入価格を水増しすれば自己資金がほとんどなくても購入できてしまう、という構造的な隙がありました。
加えて、住宅ローンは投資用ローンよりも低い金利で借りられるため、その金利差がそのまま利益につながりやすいという誘因もありました。
なお、フラット35の金利は市場環境によって変動します。
2019年当時は住宅ローンの金利が1%台前半と、投資用ローン(3%程度)との差が大きく、住宅ローンで借りることの金銭的メリットが際立っていました。
しかし2026年現在、フラット35の金利は3%台前半まで上昇しており、当時ほど極端な金利差は生じにくくなっています。
とはいえ、住宅ローンを投資目的で使うこと自体が契約違反である点は変わりません。
住宅ローンの返済中に転勤になったら
住宅ローンを利用している人の中には、当初は自分で住んでいたものの、転勤などをきっかけに賃貸として貸し出したいと考える人もいるでしょう。
しかし、こうしたケースでも、無断で賃貸に貸し出すのは契約違反となるおそれがあります。
やむを得ない事情であれば賃貸への転用を認めてくれる金融機関もありますが、その場合はアパートローンなど別のローンへの借り換えを提案されることもあります。
まずは金融機関に相談することが重要です。
不正利用が発覚するとどうなるか

不正利用が発覚すると、原則としてローン残高の一括返済が求められます。
売却額で完済できればよいですが、担保割れが生じると、借金だけが残る事態になりかねません。
一括返済ができない場合、長期延滞と同様に競売にかけられ、その代金でも返済しきれない差額は、その後何年もかけて返済していくことになります。
まとめ
- フラット35を含む住宅ローンは、本人・親族が居住するための資金に限定されている
- 2019年に発覚した不正利用は、2020年の会計検査院調査でも追加で56件・約19億円が判明しており、単発の事件ではなかった
- 不正利用が発覚すると、原則として一括返済が求められ、応じられない場合は競売にかけられる
- 転勤等で賃貸に出したい場合は、無断で行わず、まず金融機関に相談することが重要
- 住宅ローンを完済すれば抵当権が消滅するため、その後は賃貸として貸し出しても問題ない
住宅ローンを使った不動産投資は、どの金融機関であっても契約違反です。
金利差やハードルの低さに惹かれても、安易に手を出さないようにしましょう。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の融資契約の内容や取扱いは金融機関により異なります。実際の借り入れ・返済に関する判断は、金融機関や専門家にご相談ください。本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。
