一戸建ては決まった管理費や修繕積立金がかからないので、自分でタイミングを見てリフォームをしていかなければなりません。
その点、管理やリフォーム(共用部分の)を自分でしなくてもよい(専有部分は別)ことから、分譲マンションを選ぶ人も多いようです。
一戸建ての場合はありませんが、分譲マンションには管理規約や使用細則といった管理や運営のルールがあります。
確かに分譲マンションでは管理や運営は他の所有者と一緒に行うので、仲間がいる感じがして何となく心強いかもしれません。中には逆に煩わしく感じる人もいるようですが。
一戸建てであれば、基本的な法律の範囲内なら自分で納得するかどうかだけですが、分譲マンションはみんなで決めた(分譲業者が設定した)ルールがあるので、自分が納得しなくてもそれに従う必要があります。
建物の修繕だけでなく、管理費や修繕積立金、建替えといった決議も他の所有者と決めるので、一つのマンションを購入した所有者は運命共同体にあるといえます。
マンションのルールを定めたのが管理規約
マンションには、建物全部を一人が所有するものと、1室ごと所有者が異なるものとがありますが、分譲マンションといわれるのは後者です。いわゆる区分所有マンションといわれるものです。
区分所有マンション(分譲マンション)では、区分所有法という法律に基づき、その範囲でみんなで決めた規約があります。
区分所有マンションの1室部分は専有部分となり、それ以外の階段や建物エントランス、エレベーターは共用部分としてみんなで使用します。
規約で定めるのは多くは共用部分になりますが、区分所有者全体に影響があるものについては専有部分についても定めることができます(ペットの飼育や楽器の使用等)。
規約は、個々のマンションの実情に合わせて設定されるので、変更や廃止、新規に設定する時は集会の決議が必要です。
集会の決議には、普通決議(区分所有者及び議決権の過半数)と特別決議(区分所有者及び議決権の各3/4以上等)があります。
マンションのルールである規約は重要なので、変更や廃止について厳しい要件となっており、特別決議を経て変更、廃止ができます。
規約と似たものに使用細則がありますが、使用細則は規約ではないので普通決議事項とされています。
ついでに老朽化したマンション等の建替えは、区分所有者及び議決権の4/5以上が必要です。しかも多くの場合、費用が必要となることが多く、これが原因でマンションの建替えがなかなかうまく進まないことにもなっています。
一部の区分所有者に特別な影響を及ぼす場合はさらに承諾も必要
規約についての変更や廃止、新規の設定をする場合は特別決議が必要ですが、この変更や廃止をすると一部の区分所有者が不利益を被ることがあります。
例えば、現在、駐車場を使っているのに廃止したり、ペットを飼っているのに禁止されたりといったケースです。
これらのような一部の区分所有者の権利に特別な影響を及ぼす場合は、さらに特別の影響をうける区分所有者の承諾が必要になります。
いくら区分所有マンションが多数決に基づいて運営されているといっても、少数の人に無利益を押し付けることがあってはならないからです。
ちなみに特別の影響というのは裁判例等に出てくる専門的な言葉?で、規約の変更や廃止によって一部の区分所有者が受ける不利益についてをいいます。
特別の影響を及ぼすかどうかは、以下を比較して不利益ががまんの限界を超えるかで判断されます。
・規約の設定・変更の必要性やその合理性
・規約の設定・変更により、一部の区分所有者が受ける不利益
ちなみに過去の判例を紹介すると
駐車場の値上げやペット飼育禁止に変更したケースでは、特別の影響を及ぼさないとされました。
つまり駐車場利用者の承諾を得ずに料金を値上げしても、ペットを飼っている人の承諾を得ずにペット禁止にしても、その変更が妥当であれば集会の決議によって規約の変更が可能ということです。
特別の影響にあたる
・専用使用権を消滅させる規約の設定
特別の影響にあたらない
・ペットの飼育を禁止する規約に変更
・一部の非居住組合員に対する住民活動協力金の徴収
・駐車場の増額
・無償の専用使用権を有料化
ペットの場合は、現に飼っているペットがいますから、そのペットのみ飼育を認めるといったケースが多いようです。
分譲マンションは他の所有者と運命共同体
分譲マンションを購入する人の中には、他の所有者との付き合いを嫌う人も多いですが、そういう人は一戸建てや賃貸を選択するのが無難かもしれません。
ここまで書いてきたように分譲マンションは規約によってルールが定められ、運営・管理は規約の定めや集会の決議によって進められます。
建替えや管理費・修繕積立金の値上げもそうです。
分譲マンションは他の所有者と運命共同体であるので、他の人と付き合いたくない人には分譲マンションは面倒くさいことも多いです。
分譲マンションを購入すれば必然的に管理組合の一員になりますが、管理組合が積極的だとマンションの運営もスムーズに進みます。
他の人や管理会社に任せっきりで集会に参加しない人ばかりの区分所有マンションは、集会の決議がほとんど決められなくなり、そういうマンションは結果として資産価値が下がることになります。
マンションの価値を維持したいのであれば、入居者が積極的に集会に出席することが大切で、自治会等にも参加した方が防災意識の向上にもなるといわれています。
規約の保管と閲覧
法律で規約は管理者が保管することが義務付けられています。
規約は組合員や利害関係人が請求した時は、正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないとされ、利害関係人には媒介依頼を受けた宅地建物取引業者が含まれます。
利害関係人が請求できる書類
・総会議事録
・理事会の議事録
・規約
・使用細則
管理組合の理事長には、長期修繕計画や修繕等の履歴情報、会計帳簿や組合員名簿といった書類等も作成保管する決まりがあり、組合員や理由を付した書面による請求をした利害関係人にこれらの書類を閲覧させなければならないとされています。
理由を付した書面が必要な書類
・会計帳簿
・組合員名簿
・長期修繕計画
・修繕の履歴
・領収書・請求書等
・設計図書
等
閲覧の請求はいいのですが、問題はコピーを請求してももらえないことがあります。
標準管理委託契約書では管理規約の写しを提供することになってますが、もらえない場合は売主様に協力を仰ぐことになります。
おわりに
現在はタワマンが人気ですが、マンションの価格が目立って高騰してます。
中には年収の10倍の住宅ローンを組んで購入する人もいますが、今回紹介した規約の変更のようにマンションにはお金の面以外の難しい面もあることを知っておくとよいでしょう。
区分所有者の高齢化等により、管理費や修繕積立金、建替えといった金銭に係るもので、集会の決議や規約の変更がうまく進まず問題化してるマンションも出ています。
住宅ローンを組んでようやく完済し終わったと思ったら、今度はマンションの建替えの話が出る……、自分も周りも年金生活者ではなかなか建て替えが決議されないのは当然といえば当然の話です。
少しでも資産価値を維持するためには日頃からの管理が重要なので、所有者一人一人が面倒くさがらずに管理・運営に関わる意識が必要です。