先日、道路が渋滞してたので何事かと思ったら、成人式が理由でした。それを見て自分が成人した時に「連帯保証人にはならないように」と言われたことを思い出しました。
一時の情に流されて連帯保証人になったばかりに、何百万円もの借金を背負うことになった人の話をテレビなどで見たことがあるかもしれません。テレビは嘘が多いと言われてますが、あれに関しては事実です。
私の周りにも連帯保証人になって家を売却しなければならなくなった人がいます。
部屋を借りるときに連帯保証人が求められるのが、よくある例です。
ただの借金だとその人が悪いというのが一般的ですが、部屋を借りる場合の連帯保証人に落ち度はありません。部屋を借りる本人が真面目な人でも、部屋を借りる際は連帯保証人が必要なので、不動産の賃貸がきっかけで他人の借金を負担することになるケースが多いといわれています。
連帯保証人とは
連帯保証に似たものに保証というものがあります。
保証では、債務(借金等)を弁済すべき本人が債務を履行しない場合に、保証人がその債務を代わって履行する義務を負います。
一方、連帯保証は、他の債務者と連帯して債務を保証する仕組みをいいます。
保証と違うのは以下の点です。
- 連帯保証人には催告の抗弁権、検索の抗弁権がない
- 分別の利益がない
催告の抗弁権とは、保証人はまずは主たる債務者に催告するよう主張することです。
検索の抗弁権とは、主たる債務者に弁済の資力があること、強制執行が容易であることを証明すれば、先に主たる債務者の財産を検索するよう主張することです。
分別の利益は、保証人が複数いる場合に人数分で割った分で済むことです。
連帯保証人には、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益がないので、債権者(借金取り等)がいきなり連帯保証人に返済の履行を請求することができ、複数の連帯保証人がいてもそれぞれが全額について保証債務を負うということです。
連帯保証人になるよくある例は、甥や姪が上京した時におじさんが連帯保証人になるといった親族がなるケースです。意外と身近に起こりえることがお分かり頂けることでしょう。
過去にあった裁判例
これは不動産業界で結構有名な判例ですが、兄弟が部屋を借りる際に連帯保証人になったばかりに853万円の負担を負うことになった例があります。
貸主Xは、借主Y1との間で昭和60年5月31日に、昭和60年6月1日から2年間、賃料月額26万円の契約を締結しました。
その際に借主Y1の兄であるY2が連帯保証人となりました。
- 貸主:X
- 借主:Y1
- 連帯保証人:Y2
その後、契約の更新が3度ありましたが、2度目の更新時に31万円、3度目の更新時に33万円と賃料が増額されていきました。
Y1は2度目の更新から滞納が見られ、3度目の更新後は賃料がほとんど支払われない状況でした。
そこで貸主Xは、次の更新を拒絶し、Y2に対して滞納賃料853万円を支払うよう訴訟を起こしました。
結末から言うと、賃貸借契約の連帯保証人の責任は、更新後の借主の賃料不払いにもおよぶとして、853万円の請求を認めました。
(最判平成9.11.13)
更新ごとに賃料が増額してることや、賃料を滞納してるのに貸主が連帯保証人に連絡してない等が争われましたが、気軽に連帯保証人にならない方がよいということはお分かり頂けると思います。
最近は親族がいない人が増え、いたとしても必ずしも連帯保証人になってくれるとは限らないので、少し前から連帯保証人を使わず、保証会社を使うケースが増えました。部屋を借りるハードルは下がりましたが、連帯保証会社を使うことはその分費用が発生することも意味します。それでも多くの人が部屋を借りやすくなったのは良いことだと思います。
民法改正で極度額が定められるようになった
親族だから連帯保証人になったというように、連帯保証人になる人は見返りなく善意でなる人が多いのに、本来自分と関係ない多額の債務を負うのは酷です。
令和2年4月1日の民法改正からは、個人が保証人の連帯保証契約(個人根保証契約)について、保証の上限(極度額)を定めることが必要になりました。
法人が保証する連帯保証では関係ありませんが、個人根保証契約では極度額の定めがないと無効となり、契約は書面または電磁的記録で行う必要があるとされました。
極度額の定めは必要になりましたが、連帯保証人のリスクは変わらないので、気軽に連帯保証人にならないことです。
特に社会人になったばかりだと、よく分からずに連帯保証人に署名してしまうこともあるので注意が必要です。
まとめ
・連帯保証人は気軽にならないようにする
・連帯保証人になるときは全額自分が返済すると覚悟する
・部屋の賃貸契約では連帯保証人がいなくても保証会社を使えば借りられる
・令和2年4月1日から個人の連帯保証に上限が定められるようになった
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