長く賃貸派と持家派が争ってますが、これらを比較してもほとんど意味がありません。
費用面で生涯コストは同じくらいというFPもいますが、そもそも比較する前提が間違ってることが多く、同じということはあり得ません。
過去に私が見た例では、月12万円のアパートと住宅ローン12万円とを比較したものがありましたが、ボロアパートの2LDKと新築の4LDKとを比較した時点で、誰が見ても無理があります。
持家は住宅ローンの他にも修繕費や税金がかかるので、せめてコストを合わせる必要がありますが、それでも建物のグレードに差が出てしまいます(持家の方がグレードが上)。
また、持家であっても、一戸建てと分譲マンションを比較した場合は総コストに大きく差が出ます。
賃貸のメリットとデメリット
一般的に賃貸のメリットとして以下のようなものがあると言われます。
・気軽に引越ができる(通知だけ、審査が緩い、持家より低コスト)
・維持コストが分かりやすい(家賃、更新料、更新時保険料、更新時保証費、管理費)
・初期費用が安い(頭金・諸費用がない)
・設備の修理費を負担しなくてよい
・資産価値を気にしなくてよい
特に引っ越しが気軽にできる点は大きなメリットです。ライフイベントに応じて引越しも可能です。
気軽に引越できれば住む場所の選択肢も多くなり、駅前のマンションにも住めます(持家は難しい)。
また、近隣トラブルで引っ越しを考える人は多く、持家でトラブルが起きると大変です。
たいして賃貸のデメリットには以下のものがあります。
・資産が残らない
・一生賃貸料が発生する
・持家と比べて建物が貧相
・家賃の値上がりリスクがある
・楽器やペットに制限がある
一生賃貸料が発生するのはデメリットですが、賃料が安いエリアに引越しが可能です。年金は都会も田舎も同じなので、田舎に家を買ってしまうというのも手です。
ただ、田舎に引っ越したものの馴染めず戻る人もいます。
持家のメリットとデメリット
持家のメリットには以下のようなものがあります。
・資産として残る
・子供に相続させることができる
・住宅ローンを完済すれば年金生活でもやっていける
・税金で優遇されている(住宅ローン控除、買い替え特例、3000万円特別控除)
・一戸建ては楽器とペットの飼育が自由(マンションは規約次第)
・一戸建ては駐車場の費用がかからない
資産として残せるのはメリットですが、田舎の場合は資産にならないこともあります。また、持家であっても一戸建てとマンションとでは随分と違うので、自身のライフスタイルに合っているかも重要です。
一方で持家にもデメリットはあります。
・頭金や諸費用が必要
・引越しに手間がかかる
・設備の修理やリフォーム代がかかる
・管理費、修繕積立金がかかり、インフレリスクがある
・マンションのほとんどは修繕積立金が値上がりする前提
・災害のリスクがある
・場所が悪いとコストだけがかかる負債のような存在になる
分譲マンションは強制的に修繕積立金が徴収されますが、一戸建てであっても修繕は必要なので、毎月定額を積み立てると安心です。
売れないような田舎の場合は、早く手放すことがリスク回避になることがあります。
賃貸と持家
以前、不動産会社で現地販売会をしていた時のことですが、そこでは8棟の建物が売りに出ていました。
そこの建物は土地付きで3,580万円から4,280万円で売りに出ましたが、3,580万円の2棟だけが売れ残りました。
そのうちの1棟が売れたと思ったら、数日して賃貸物件として貸し出し募集がされました。
この場合の賃貸と一戸建てはどちらも同じグレードの物件になるので、比較ができると思い例として取り上げました。
持家の場合
35年ローン 金利0.625% 月々95,000円
固定資産税 月10,000円
修繕費の積立投資 月13,000円
合計 118,000円
賃貸の場合
家賃 165,000円(駐車場付き)
更新料など 1月あたり12,500円
合計 177,500円
募集していた家賃は180,000円でしたが、その後の経年劣化や空室リスクを考慮して165,000円にしました。
投資として物件を購入したら金利が高くなることを踏まえると、コスト面に限れば持家が有利なのは間違いありません(自身が損する契約をする投資家はいない)。
持家の場合は変動金利なので金利が上がるリスクがあります。それでも賃貸に住み続けるよりは安く済みます。
最近、住宅ローンの金利が上がったことが話題になりましたが、その一方で賃貸の家賃が1.5倍になったことも話題になりました。値上がりした家賃の額が適正かは議論の余地がありますが、インフレ時代はこのように家賃が上がるリスクがあります。
利便性を優先するなら戸建てよりもマンションですが、マンションであっても自分が損して賃貸に出す人はいないので、賃貸だとコストが高くなります。
賃貸派が持家派をコスト面で上回るには建物のグレードをどこまで下げるかがポイントです。
一戸建てと分譲マンション
同じ持家でも一戸建てと分譲マンションとではコストに大きな開きが出ます。
分譲マンションは利便性や防犯性にメリットがありますが、コストという面ではむしろ賃貸に近い(コスト高い)かもしれません。
一戸建てと分譲マンションは全然違うので単純に比較できませんが、分譲マンションは固定資産税が少し高く、何より管理費と修繕積立金が高いです。
インフレは管理費と修繕積立金の値上がり要因となりますし、そもそも修繕積立金は5年ごとの見直しで値上がりするのが普通です。
修繕積立金の積立方法には、均等積立方式と段階増額積立方式の2つがありますが、多くのマンションでは段階増額積立方式を採用しています。
均等積立方式が長期修繕計画で計画される工事費用を計画期間内に均等に積み立てる方式なのに対して、段階増額積立方式は最初の修繕費を抑えて段階的に積立て額を増額する方式だからです。
均等積立方式が本来は望ましいのですが、最初から修繕積立金が高いとマンションが売れないので、多くのマンションでは段階増額積立方式になっています。中には最初に一時金を徴収したり、金融機関から借入をすることを前提として積立計画を立てることもあります。
また、修繕積立金を徴収していても、建替えでは資金が不足するのが普通なので、建替え費用が徴収されるリスクも考えられます(資金不足で建替えができないことが多い)。
このような理由から分譲マンションは賃貸より安く、一戸建てよりコストがかかるといわれています。
一方でマンションは戸建てよりも防犯性が高く、修繕は自分で考える必要がない等メリットも多いです。
まとめ
・賃貸と持家論争は意味がない
・賃貸と持家にはそれぞれのメリットとデメリットがある
・賃貸は気軽に引越しできる
・家を購入すればよかったと後悔している賃貸派も多い
・持家は資産になる一方、田舎だと負債になりかねない
・持家は住宅ローンのリスクがあるが、賃貸は家賃値上げのリスクがある
・持家の一戸建てはコストを抑えられ、分譲マンションは防犯、管理が楽
・生涯コストの面では、一戸建て、分譲マンション、賃貸の順に優れる
引越す前提だったら賃貸で十分ですが、住み続けるとなったらもう結果は出ています。
コメント