図書館で調べものをしていた際に、たまたまマネー雑誌を手にしたのですが、そのマネー雑誌のアンケートによると老後に不安を抱えている人は9割に及ぶとありました。
内閣府や民間の調査会社が行った若者意識調査でも、将来に対して不安を感じている若者は多く、特に20代でその傾向が強く見られます。
厚生労働白書によるデータでは、老後の資金が年金だけという人は多く、年金を受け取っている人の半数以上が年金だけが頼りです。
男性65歳以上・女性60歳以上の高齢無職世帯では、毎月5万円のマイナスになるといわれ、マイナス分は資産を取り崩すことになります。
これはいかに老後までに資産形成ができるかが重要かを示しています。
老後を支える公的年金
老後の主な生活を支えるのが国民年金や厚生年金といった公的年金ですが、定年前になって公的年金の額を知って愕然とする人もいます。
今は誰でも年金額を自分で調べることができますが、国民が受け取れる年金を知ってしまうと年金制度に対する不満が出ることから、2000年代までは老後直前まで知ることができませんでした。
仮に20歳から40年間、平均収入が50万円の人が自営業として国民年金を納めてきたとして、その人の年金がいくらになるかというと、未納がなければ831,700円(令和7年)になります。
年間約83万円では、とても生活していくことは無理ですよね。
一方、会社員であれば厚生年金が上乗せされるので、20歳から40年間の平均収入が50万円ならかなり違います。
国民年金約83万円に加えて、約132万円が受け取れるので、年間約215万円になります。
これに配偶者の年金を加えた額が世帯収入になります。
- 専業主婦→年215万円
- 妻の年金100万円→夫婦で年315万円
平均よりも大きな年金額になったのは、40年間の平均収入が高かったからです。
いかがでしょう、意外と少なくありませんか?
さらに調整期間においては、被保険者数の減少と平均余命の伸びが反映されるので、年金の水準が低下することになります。
また、年金制度の維持のために給付や保険料の見直しが行われる可能性は高く、将来的には3割の目減りの可能性も指摘されています。
いずれにせよ年金だけでは老後資金は不足するということを認識したほうがよさそうです。
では、老後資金をどのようにして準備すればいいのでしょう。
預金や保険で老後を貯めるリスク
資金を貯める手段として最も一般的に利用されてるのが、預金や生命保険といった方法です。
銀行預金は最も手軽に実施することができ、生命保険は保険料を口座からの引き落としにしておけば、自然と資産形成できるからです。
しかし、銀行預金と生命保険による資産形成はあまり効率的とは言えません。
銀行預金は利率があまりに低く、生命保険は利率が低いうえに途中で解約すると元本割れが起きるからです。途中で解約しなかったとしても、そのためには20年、30年と積み立てなければいけません。
老後の資金を預金や生命保険で準備することは、メリットとデメリットの両方があります。重要なのは特徴を知り、他の方法も考えることです。分散とリスク許容度に合った方法を選ぶことも時には必要かもしれません。
預金のメリットとデメリット
●預金のメリット
預金の一番のメリットは、気軽に出し入れができることです。急な出費に対しても、近くに銀行やATMがあれば、お金をすぐ引き出せます。
また、預金は金融機関が破綻しても預金保険制度で1,000万円まで保護されます。
銀行預金のメリット
- 銀行預金→すぐ引き出せる(高い流動性)
- 元本保証
- 気軽に積み立てることができる
●預金のデメリット
銀行預金のデメリットは、インフレによる物価上昇に勝てず、実質的な資産価値が目減りすることです。
金利が低いので、長期間預けてもほとんど増えず、利息だけで生活費を賄うのも不可能です。
銀行預金のデメリット
- インフレに弱い→資産の目減り
- 預金金利0.2%・物価上昇2%→実質-1.8%
- 銀行預金→利率が低い→ほとんど増えない
保険(年金保険・終身保険)の注意点
●保険のメリット
生命保険を使えば、貯蓄と保障を兼ねた投資ができます。
解約すると元本割れのリスクがあることで、途中で引き出しにくく、結果として強制的な貯蓄効果が期待できます。
保険のメリット
- 死亡保障がつく(保障が得られる)
- 貯蓄性がある
- 強制的貯蓄効果
●保険のデメリット
保険の最大のデメリットは途中で解約すると元本割れのリスクがあることです。特に初期の解約は元本割れの損失も大きくなります。
貯蓄には長期間加入する必要があるので、将来の受取額が実質目減りする可能性があります。
倒産時は生命保険契約者保護機構で保護されますが、90%までと全額ではないことも気をつけたいです。
保険のデメリット
- インフレに対応できない(資産の目減り)
- 途中解約すると元本割れのリスク
- 利率が低い→ほとんど増えない
- 保険会社の破綻リスク
預金・保険だけではなぜリスクの理由
日本人の平均寿命は毎年増加傾向にありますが、平均寿命が延びるほど貯金・保険だけでは不足します。
また、日本の健康保険は保険料が増加してるのに、給付内容は縮小しています。
・長寿リスクに対応できない
・公的保険の給付縮小リスクに備えられない
・低金利の長期化
インフレで起こる資産の目減り
老後の資金を預金や生命保険だけで準備した場合に最もリスクになるのが資産の目減りです。
運用期間にわたって元となるお金が減らないことを元本保証と言います。
5年間、元本が保証される商品であれば、5年後に預けたお金が戻ってきます。
一見すると損してないように見えますが、この間に2%の物価高があれば実質的には資産が減っています。
銀行の金利が0.2%であれば、100万円預けても2,000円しか増えません。
物価が2%上昇したら、今まで100万円だったのが約19,600円の価値が減るのでカバーできてません。
- インフレ → 資産が目減りしていく
- 預金・保険 → インフレに対応できない
物価の上昇は気づかないところで起きています。
例えば、うまい棒というお菓子は昔は10円でした。
私が子供の頃よりも中身が小さくなり、だんだん値上げもされ、今は15円になりました。
また、ここ数年で上昇したものに税金と社会保険料があります。
仮に消費税を例にとると、導入された年の1989年に3%、1997年には5%に上昇し、2014年には8%、今では10%にまで上昇しました。また、社会保険料も2004年の13%台から18.3%にまで増えており、さらに介護保険料まで導入されました。一方で給料は増えてないどころか、横ばいまたは減少です。
今から始められる老後資金の準備法
●iDeCoやつみたてNISA
iDeCoやNISAといった非課税制度を活用すれば、投資利益が非課税になり、インフレに強い投資が可能です。
- iDeCo→投資時・運用時・受取時が非課税
- NISA→運用利益が非課税
- 長期分散投資でインフレに対応可
- 60歳以降に年金として受け取れる(iDeCo)
●投資信託で国内外の株式・債券へ分散投資
投資信託を活用すれば、全世界に投資したリスク分散が可能になります。
株式・債券・預金と組み合わせて比率を調整すれば、リスクを抑えることができます。
- 全世界株式インデックスファンドで世界の成長を取り込む
- いくつかの資産に投資してリスクをコントロール
- 株式5:債券3:預金2と比率を調整して分散投資
●不動産・REIT
- 不動産にも投資してさらにリスクを分散
- 家賃収入と値上がり益に期待できる
- 空室リスク・管理コストに注意
●年金の繰り下げ受給・付加年金など
自営業者の人は付加年金や国民年金基金に加入することができます。
公的年金を70歳まで繰り下げると、受給額が42%増加(1.42倍)します。75歳まで繰り下げれば84%(1.84倍)です。
- 自営業者→付加年金・国民年金基金を検討
- 自営業者→iDeCoの上限額が大きい
- 年金の繰り下げ受給を活用
- ただし、年金繰下げ中は年金が受け取れない
まとめ
・預金のメリット→いつでも引き出せる
・保険のメリット→保障が得られる
・預金・保険のデメリット→インフレに対応できない
・老後資金→増やすには成長性(投資)が必要
・インフレや長寿リスク→長期投資を取り入れる
具体的な見直し
- 現状把握
- リスク許容度の確認
- ポートフォリオ作成
- 定期的な見直し
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