ここ最近ニュースで就職氷河期世代が取り上げられるようになりました。
就職氷河期世代というのは今の50代から30代をいい、バブル崩壊後に社会に放り出されたこの人たちは大学を出ても就職がなかなかできなかった世代です。
就職活動で300社に応募しても、返事すら1社もなかった人も珍しくない時代です。
先日、読んだニュースによると、日本には30歳以上のニートが160万人以上いるそうです。
就職氷河期という時代は、ブラック企業でも、人材募集をかければ次から次へと人が集まってくる時代でした。
努力してもなかなか報われない、こんな社会状況ではニートが大量に生まれるのはある意味仕方ないことです。
ニートが160万人以上いるいわれる就職氷河期の世代は、就職できたとしても中小企業の非正規や、自営業という名のニートが大半です。
だとすれば、この世代が社会保障制度に与える影響が大きくなるのは避けられません。
これから3人に1人が65歳以上というのに、就職氷河期世代の老後も控えている……それが今の日本です。
自営業であれば、国民年金保険料を40年間支払い続けたとしても、受け取れるのは満額で年間80万円です。
未納期間が多ければもっと少ない年金額です。
親の資産を相続したとしても、あっという間になくなるのが関の山です。
就職氷河期世代の年金が少なかったり、生活保護だとしたら、現役世代の負担はますます重くなることになります。
50代の人の中にも、日本の公的年金は破綻するといった極端な意見をいう人がいます。
実際は「持続可能だが、給付水準の低下や保険料の負担増は避けられない」というのが本当のところです。
公的年金は、財政検証を経て見直されるからです。
なぜ公的年金がだめと言われるのか
日本人の生活を苦しくしている最大の原因は税金と社会保険料です。
税金・社会保険料上がる → 可処分所得減る → 国民の貧困化 → 少子化 → ますます生活が苦しくなる →最初に戻る
少子高齢化の加速
現在の日本では、1人の高齢者を1.8人で支えてます。
日本の社会保険制度は賦課方式を修正したものなので、現役世代が高齢者の生活を支えています。
- 日本の社会保険 → 現役世代が高齢者世代の生活を負担
- 現役世代の保険料 → 高齢者の年金
今後は現役世代が減少していくにもかかわらず、年金受給者はこのままだと3,600万人から2040年には3,800万人に増加します。
2060年には1.2人で1人の高齢者を支えていかなければいけなくなると予想されています。
したがって、今より現役世代の保険料を上げる、高齢者の年金給付を下げる、年金支給の開始年齢を引き上げるといった議論が必要になるわけです。
給付水準の低下
政府は、少なくとも5年ごとに財政の現況及び見通しを作成し、遅滞なく公表しなければなりません。
財政の現況及び見通し
- ①保険料及び国庫負担の額並びに国民年金法(厚生年金保険法)による給付に要する費用の額その他の国民年金(厚生年金保険)事業の財政に係る収支の現況
- ②当該「財政の現況及び見通し」が作成される年以降おおむね100年間(財政均衡期間)における①の収支の見通し
これから先100年間にわたって年金と保険料のバランスが取れない時は、年金(給付)の額を調整するとされています。
つまり、年金制度はなくならないけど、年金額を減らすことはありますよと言ってます。
また、年金は運用すること、経済成長も考慮する必要があります(実質経済成長率)。
政府は、現役世代の手取り収入に対して年金がどのくらいになるかを公表してます(所得代替率)。
所得代替率→50%を維持
- 2024年度→61.2%
- 高成長実現コース→56.9%(2039年・実質経済成長率1.6%)
- 成長型経済移行・継続コース→57.6%(2037年・実質経済成長率1.1%)
- 過去30年投影コース→50.4%(2057年・ー0.1%)
厚生年金の平均受給額:月額約14.6万円→実質では減少傾向
保険料負担の増加
厚生年金保険料は、現在18.3%で固定されています。
厚生年金保険料は、事業主との折半で負担します。
物価高の影響で年金が増えた一方で、保険料も値上がりしました。
実は以前の社会保険料は今よりも低い率でした。
日本の高齢化率が騒がれだした頃、このままでは社会保障制度の維持が難しいことから、年金と保険料の見直しが行われ、社会保険料率が毎年上がり続けていきました。
一時期は増税がなければ社会保険料率がアップし、社会保険料率がアップしなければ増税というスタイルでした。
2017年までの10年で一人当たりの社会保険料率が5%くらい上昇しました。
厚生年金の保険料率は、2017年の9月で予定していた上限に達しましたが、今後どうなるかは不明です。
年金は老後を保障していない
少し前の話ですが、年金額が想定よりも低かったため、これでは生活できないとワンルームに二人で暮らす老夫婦が話題になりました。
また、老後2,000万円問題が話題になる前は、中高齢者の中にも年金で一生生活していけると勘違いしてる人が多数いました。
実際は年金だけではやっていけず、消費者金融からお金を借りようとする人までいました。
割とよくあるのが、ご主人が亡くなって年金が減額になって生活が困窮する人です。
こういったことにならないためには、年金だけで老後を生き抜くのは困難ということを理解し、普段からねんきん定便などで年金額を確認しておき、老後に向けた対策を立てて実践することが必要です。
公的年金がだめとは言い切れない
財政検証の実施と公表がされている
財政検証は5年に1度行われてるため、国民の関心を集めます。
5年に1度なので修正もしやすく反映されます(数十年に一度だと隠ぺいされるおそれ)。
積立金やマクロ経済スライドといった仕組みが作られており、最低限の支給は維持できるとされています。
もし、年金制度がなく、すべての老後費用が自己負担だったとしたら、老後を生き抜ける人は今よりずっと少なくなるでしょう。
- 年金制度がない →生活保護に頼る人が増える →財政の悪化
世代間扶養の機能
年金制度は賦課方式なので世代間扶養の機能があり、高齢者・障害者は働けなくても年金収入を得られます。
年金給付や保険料は、賃金や物価に連動するようになっています(物価に連動)。
また、現在はマクロ経済スライドで給付額を調整するので、年金制度が長く続く仕組みになっています。
- 物価上昇2%・賃金上昇1% → 給付は1%に抑制
年金積立金は運用されている
年金の財源となる積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用しています。
GPIFは、世界最大の年金基金です。
分散投資でリスクを軽減しながら運用してるので、運用初心者にも間接的に恩恵があると考えることができます。
公的年金は老齢年金だけではない
国民年金・厚生年金は、老齢年金だけではありません。
他にも障害年金と遺族年金が、国民年金・厚生年金ともにあります。
公的年金
- 老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)
- 障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)
- 遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
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公的年金だけに頼らないための具体策
ここまで見てきたように、年金の給付額が減ったり、保険料が増額することはありますが、公的年金制度がなくなる可能性は極めて低いといえます。
それよりも、公的年金だけでは老後の生活費が不足するということを知り、対策を立てるべきかもしれません。
以下、今からできる老後対策を見ていきます。
受給開始年齢の繰り下げ
老齢年金の支給開始年齢は現在65歳となっています。
これを65歳で受け取らず、受け取る年齢を繰り下げることで年金額を増やすことが可能です。
月額10万円の受給者が、65歳から70歳に繰り下げた場合
- 月額10万円→14.2万円
- ただし、65歳から70歳までの年金はゼロ
- 健康で働ける場合に有効
iDeCo・NISAの活用
iDeCoとNISAは税金が優遇される制度です。
iDeCoは、自営業者・会社員といった立場(働き方)によって月の掛金最大額が異なります。
iDeCo
- 税制優遇最大で年間81.6万円(自営業者)
- 掛金拠出時・運用時・受取時の3つで税制優遇
- デメリット→60歳以降にならないと受け取れない
NISA
- 運用時の税制優遇
- つみたてNISAは年間120万円まで非課税(成長投資枠は240万円)
- iDeCoと違って年齢の制限がない
企業によっては企業年金(確定拠出年金・確定給付年金)があるところもあります。
企業年金は厚生年金に上乗せされます。iDeCoの拠出額にも関係するので有無を確認することをおすすめします(転職時は注意)。
また、自営業者なら付加年金という選択もあります。
副業・スキルアップ
年金の支給開始年齢が65歳なので、それより前に退職すると収入がありません。
年金だけでは生活費が不足するのが普通なので、年金受給後も他に収入を得る手段を作っておくといいかもしれません。
老後に向けてスキルアップするのもおすすめです。資格の取得もおすすめですが、簡単な資格だと稼げないことも多いです。
また、老後資金は取り崩すだけよりも、運用しながら取り崩せば、老後資金の枯渇の先延ばしができます。
老後の副業・スキルアップ
- フリーランス(多い)
- 継続雇用
- パート(スキル不要)
- 資産運用(資金必要)
- 資格取得
世代別の自助努力のポイント
公的年金は、少子高齢社会では若い世代ほど不利な制度のため、自助努力が必要です。
老後に向けたポイント
- 公的年金→繰り下げで受給額アップ
- 私的年金→iDeCo・企業年金を活用
- 自己投資→継続して働く・資産形成に取り組む
30代~40代
・積立投資を始める(少額でも効果ある世代)
・複利の効果は長期ほど大きい(年利3%でも毎月3万円を30年積立てれば、約1,500万円になる)
・老後資金作りが目的なら、預金・保険より投資信託を優先したほうが有利
50代~60代
・年金の繰り下げのシミュレーション
・リタイアメント後の生活をシミュレーション
・医療保険の見直し(高齢期の自己負担増に備える)
・社会保険制度の確認(知らないと使えない)
まとめ
・公的年金は継続する
・保険料増額・支給開始年齢引き上げの可能性あり
・保険料の特例あり
・公的年金は少子高齢社会では若い世代が損する
・早く積立投資を始める
・老後の準備は早い方が良い(今が一番早い)
・40代までに備えるとベスト
・投資は数百円から始められる
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