世の中には様々な金融商品がありますが、金融リテラシーの高い人ほど手を出さない金融商品があります。
仕組み債、ファンドラップ、外貨建て保険・変額保険の3つを、仕組みとコストの問題点、金融庁の行政処分や国民生活センターへの相談件数をもとにランキング形式で解説します。
代わりの選択肢も、ファイナンシャルプランナーが紹介します。
この記事から分かること
- 金融リテラシーが高い人は、商品を「仕組み」と「合計コスト」で判断する
- 第3位は仕組み債:利益に上限がある一方、損失は大きくなり得る
- 第2位は外貨建て保険・変額保険:保障と運用を一緒にしてコストが見えにくい。相談件数は5年で3倍以上
- 第1位はファンドラップ:同じ運用が低コストの投資信託でできるのに、手数料は合計で年1.4〜1.7%台の例がある
- コストが年1.5%違うと、月3万円の積立30年で500万円以上の差になる
金融リテラシーが高い人は「仕組み」と「合計コスト」で判断する
お金に詳しい人が商品を選ぶとき、最初に見るのはいくら増えそうかということばかりではありません。
金融リテラシーのが高い人がまず見るのは次の2点です。
- どんなときに損をするのか: 仕組みを自分の言葉で説明できない商品は買わない
- 合計でいくら払うのか: 手数料がいくつ重なっているかを確認する
「利回り◯%」「元本が守られる」といった良い面は、誰でも説明してくれます。
一方で、損をする条件や、毎年差し引かれる手数料は、自分から確認しないと分かりにくいものです。
この2点で見ると、銀行や証券会社、保険の窓口でよく勧められる商品の中に、詳しい人ほど選ばないものがあります。
今回は、次の3つの基準で順位を付けました。
| 基準 | 見るポイント |
| 仕組みの分かりにくさ | どんなときに損をするか、すぐ説明できるか |
| コストの重さ | 毎年、合計で何%払うか |
| トラブルの多さ | 行政処分や相談件数など、問題が表に出ているか |
なお、どの商品も法律に沿って販売されているもので、商品そのものが違法というわけではありません。
問題は、仕組みとコストを理解しないまま買ってしまうことです。
第3位:仕組み債|利益は小さく、損失は大きくなり得る

詳しい人が買わない理由: 受け取れる利益には上限があるのに、損失には上限がないから
どんな商品か
仕組み債は、デリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ債券です。
代表的なのは、特定の会社の株価に連動する「EB債(他社株転換可能債)」です。
- 株価が一定水準を下回らなければ、高めの利息を受け取って満期を迎える
- 株価が一定水準(ノックイン価格)を下回ると、お金ではなく、値下がりした株で返ってくることがある
具体例で見る「利益は小さく、損失は大きい」
次のようなEB債を、100万円分買ったとします。
- 期間1年、利率年5%
- 当初の株価を下回る水準(例:70%)にノックイン価格を設定
| 1年後の株価 | 受け取るもの | 結果 |
| 当初の1.5倍に上昇 | 100万円+利息5万円 | +5万円 |
| 当初の0.9倍(ノックインせず) | 100万円+利息5万円 | +5万円 |
| 当初の0.6倍(ノックインした) | 株60万円分+利息5万円 | −35万円 |
※仕組みを分かりやすくした例です。実際の条件は商品ごとに異なります。
株価がどれだけ上がっても、受け取れるのは利息の5万円までです。
一方で株価が大きく下がると、損失は数十万円になります。
株を直接持っていれば上昇分も受け取れますが、仕組み債ではその上昇分を手放す代わりに、利息をもらっている形です。
金融庁が初めて行政処分を出した商品
2023年6月、金融庁は仕組み債の販売をめぐり、千葉銀行・ちばぎん証券・武蔵野銀行に業務改善命令を出しました。
仕組み債の販売で行政処分が出たのは、これが初めてです。
投資経験の少ない顧客や、リスクを取りたくない顧客にも、十分な説明をせずに「定期預金より有利」などと勧めていたことが問題視されました。
証券取引等監視委員会によると、千葉銀行グループで仕組み債を持っていた8,424人のうち、2,424人は値上がり益を積極的に狙う顧客ではありませんでした。
この問題を受けて、個人向けの販売を見直す金融機関が相次いでいます。
第2位:外貨建て保険・変額保険|保障と運用を一緒にしている

詳しい人が買わない理由: 保障と運用は分けた方が、それぞれ安く、コストも見えるから
どんな商品か
- 外貨建て保険: 保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する保険。円より高い利率がうたわれることが多い
- 変額保険: 保険料を投資信託のような特別勘定で運用し、その成果によって保険金や解約返戻金が変わる保険
どちらも「万一のときの保障」と「お金を増やす運用」を、1つの商品にまとめています。
何が問題なのか
1. 為替で元本割れすることがある
外貨建て保険は、受け取るときの為替レートで円の金額が決まります。
| 時点 | 為替レート | 1万ドルの円換算 |
| 契約時 | 1ドル=150円 | 150万円 |
| 受け取り時 | 1ドル=120円 | 120万円 |
※為替手数料は含みません。
外貨での利率が高くても、円高になれば円で受け取る額は減ります。
さらに、円を外貨に替えるとき、外貨を円に戻すときにも、為替手数料がかかります。
2. コストが何重にも重なり、見えにくい
保障のためのコスト、運用のコスト、契約時や解約時のコスト、為替の手数料などが重なります。
それぞれが別々の書類に書かれていることも多く、合計で毎年何%払っているのかを把握しにくい商品といえます。
3. 早く解約すると元本割れしやすい
契約から一定期間内に解約すると、解約控除が差し引かれ、払った保険料を大きく下回ることが多い仕組みです。
「途中で使うかもしれないお金」を入れるには向いていません。
国民生活センターへの相談は5年で3倍以上
国民生活センターによると、外貨建て生命保険の相談は、2014年度の144件から2018年度の538件へと3倍以上に増えました。
毎年、約半数が70歳以上です。
主なトラブルは次のとおりです。
- 為替リスクや手数料を理解しないまま契約した
- 生命保険だと認識せずに契約した
- 「元本保証」と説明されたが、実際には元本保証ではなかった
- 「老後資金」の相談のつもりが、保険を契約していた
保障と運用は分けて考える
- 保障が必要なら、保険料の安い掛け捨ての保険で備える
- 運用はNISAなどの低コストの投資信託で行う
こう分けると、それぞれのコストが見えやすくなり、必要がなくなった方だけをやめることもできます。
月3万円を30年積み立てた場合の、コストの違いによる差です。
| 年間コスト | 30年後 | 年0.1%との差 |
| 0.1% | 約2,451万円 | − |
| 1.5% | 約1,906万円 | 約545万円 |
| 2.0% | 約1,748万円 | 約703万円 |
※運用利回りはコスト控除前で年5%と仮定。税金は考慮していません。保険商品の実際のコストは、商品ごとの契約概要などで確認してください。
第1位:ファンドラップ|高い手数料を払う理由が見当たらない

詳しい人が買わない理由: 中身は投資信託の組み合わせで、同じことが低コストの投資信託でできるから
どんな商品か
ファンドラップは、金融機関に運用を任せる投資一任のサービスです。
リスクの取り方などを答えると資産配分が決まり、金融機関が投資信託を組み合わせて運用してくれます。
数百万円から始めるものが多く、金融機関に相談すると、退職金の運用先として勧められることがよくあります。
手数料が二重にかかる
かかる手数料は、主に次の2つです。
| 手数料 | 内容 |
| 投資一任報酬 | 運用を任せることへの報酬 |
| 組み入れる投資信託の信託報酬 | 中身の投資信託の運用コスト |
金融庁が手数料開示の好事例として紹介した例でも、合計コストはコースによって年1.41〜1.74%でした。
1,000万円を預けると、運用成績に関係なく、毎年14万〜17万円ほどが差し引かれる計算です。
「任せられる」「リバランスしてくれる」は手数料に見合うか
ファンドラップの利点として、次の点がよく挙げられます。
| よく挙げられる利点 | 低コストの代わりの方法 |
| 資産配分を決めて運用を任せられる | バランス型の投資信託を1本買えば、配分は自動で決まる |
| 定期的にリバランスしてくれる | バランス型の投資信託は、ファンドの中で自動的にリバランスされる |
| プロが中身を選んでくれる | 全世界株式などのインデックス型なら、銘柄選びはそもそも不要 |
どれも、年0.1〜0.3%程度のコストの投資信託でほぼ実現できます。
その差に年1%以上を払い続ける理由は、見当たりにくいと言えます。
20年で約600万円の差
1,000万円を20年運用した場合の試算です。
| 年間コスト | 20年後 |
| 0.2% | 約2,554万円 |
| 1.6% | 約1,952万円 |
※運用利回りはコスト控除前で年5%と仮定。税金は考慮していません。
コストが年1.4%違うだけで、20年後には約600万円の差になります。
第1位の理由: 仕組み債や外貨建て保険と違い、ファンドラップの仕組み自体にリスクの偏りがあるわけではありません。それでも、同じ中身をはるかに安く手に入れられるのに、高いコストだけが毎年かかります。退職金のようなまとまったお金で始める人が多く、金額が大きい分、コストの差がそのまま大きな差になります。
なぜこれらの商品は勧められるのか

販売する金融機関にとって、手数料は収益の柱です。
仕組みが複雑な商品や、運用を任せる商品ほど、販売手数料や管理報酬が高めに設定されている傾向があります。
これは担当者個人が悪いということではなく、手数料で成り立つ販売の仕組みからくる構造です。
だからこそ、買う側が「この商品で、自分は合計いくら払うのか」を確認することが大切です。
勧められやすいタイミングも決まっています。
- 退職金を受け取ったとき
- 定期預金が満期になったとき
- 相続でまとまったお金が入ったとき
- 保険の見直しや、住宅購入の相談をしたとき
まとまったお金が口座に入ると、金融機関から案内が届くことが多いです。
代わりにおすすめ:シンプルな3つの組み合わせ
金融リテラシーがある人の多くは、次のようなシンプルな形を選んでいます。
| 目的 | 方法 |
| 万一への備え | 必要な期間だけ、掛け捨ての保険で備える |
| 老後資金づくり | NISAやiDeCoで、低コストのインデックス型投資信託を積み立てる |
| すぐ使うお金 | 生活費の3〜6か月分は預金で持っておく |
どれも難しい知識は要りません。
保障と運用を分け、コストの低いものを選び、長く続ける、これだけで、複雑な商品を買うより手元に残るお金が多くなります。
買う前に確認したい5つのこと
- ☐ 手数料は、買うとき・持っている間・解約するときに、それぞれ年何%(いくら)かかるか
- ☐ どんなときに元本割れするか
- ☐ 途中で解約すると、いくら戻ってくるか
- ☐ 同じような運用を、もっと低いコストでできる方法はないか
- ☐ その場で決めず、家族や第三者に相談したか
親が金融機関から商品を勧められているときは、このリストが参考になります。
すでに持っている場合は、慌てて解約しない
この記事の金融商品をすでに持っている方も、すぐに解約するのはおすすめしません。
- 外貨建て保険・変額保険は、解約控除や為替の状況によって、今解約すると損失が確定することがある
- 仕組み債は、満期前に売ると、時価が大きく下がっていることがある
- ファンドラップは、解約すると利益に税金がかかる
まずは、今いくらの価値があるか、続けた場合と解約した場合で何が違うかを確認してから判断することが大事です。
まとめ
金融リテラシーが高い人がファンドラップ・外貨建て保険・仕組み債を選ばないのは、特別な知識があるからではありません。
どんなときに損をするか、合計でいくら払うかを確認しているだけです。
コストが年1.5%違うだけで、20〜30年後には数百万円の差になります。
勧められたら、その場で決めずに、手数料と元本割れの条件を確認してみることです。

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