ファイナンシャルプランナー(FP)の勉強会でも不動産業界の講習会でも、最近は老後に関するテーマが増えています。
若いうちから老後のことを考えるのは政治に対する興味につながります。一人一人が年金や投資、法律や経済に興味を持つことで国の悪政を防止することにもなります。
ある雑誌社が大学生に対してどんな不安を抱えているかアンケートを取ったところ、ニュースで再三老後不安について取り上げられることもあってか「老後が不安」と回答する大学生がかなりの数いたそうです。
最近参加したFPの勉強会でも「企業年金の実情」「老後に向けた資産づくり」「確定拠出年金で築く老後資金」「空き家の現状」と、老後と関係するテーマばかりです。
ここ1年に行われた不動産協会の講習のテーマでも、「不動産と相続」「不動産会社がもらえる助成金」「広告の規制」「インスペクション」「老後の不動産活用」など、老後に関するテーマは増えています。
平均寿命が延び、退職後の人生が長くなったことで、 公的年金だけでは老後資金が不足するということが広まり、老後問題は多くの人の関心の的となっています。
この記事では、定年退職後の生活費を補う考え方・自営業者と会社員の年金差・税制優遇のある制度の活用・働き続ける選択肢までを解説します。
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老後に必要な資金は増加傾向にある

老後に必要といわれる資金は増加傾向にあります。
老後資金が増える主な要因
- 平均寿命の延び→退職後の生活期間が長くなった
- 物価の上昇→近年は世界的なインフレ傾向で、生活費が上がりやすい
- 趣味・生活スタイルの多様化→選択肢が増えた分、支出の想定も広がる
- 医療費・介護費の発生→高齢期は健康リスクが高まる
- 社会保険料・税負担の動向→今後も変化する可能性
平均寿命の延びは喜ばしいことですが、それは同時に「お金が必要な期間」も長くなることを意味します。20年前と比べて、退職後の人生は10年以上長くなったとも言われます。
先日、高齢者が万引きで捕まりましたが、万引きした理由が「おいしいものが食べたかった」からだそうです。今後も物価の上昇が続いて消費税増税や社会保険料増額が続けば、高齢者の生活はより苦しいものとなるのは間違いないでしょう。
今の政治
- 税金→増税は直ぐ・減税は何年も時間がかかる
- 社会保険料→増額・国民に分からないよう名称を変えて徴収(支援金など)
「なんとかなる」では難しい時代
ファイナンシャルプランニングでは、老後についての相談をされることもありますが、将来に対する不安を抱えてる人が多い一方で、何とかなると思ってる人も多いです。
日本が好景気のときは「なんとかなる」でうまくいくこともありましたが、今の日本では昔のような好景気の可能性は低いので、「なんとかなる」ことは難しいでしょう。
将来、何とかならない理由
- 少子高齢化
- 世界二位の税金国家(社会保険料を入れると世界一)
- 世界的なインフレ
- 平均余命の伸び
- 少ない公的年金
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定年して悠々自適に老後生活を……なんて思っているのであれば、最低限の年金の知識と不労所得がないと達成は厳しいでしょう。
皮肉なことに必要な老後資金を増加させているのは、日本人の平均寿命が延びたことです。
年金制度が出来た頃は、退職後の平均余命は今よりずっと短く、年金受給者を支える現役世代も多かったのですが、現在は退職後の平均余命は倍以上になり、年金受給者を支える現役世代はぐっと減ってしまいました。
年金をめぐる事件も多く、官僚・政治家が自分のために何兆円も財源をとかした事件があったり、天下り先のために毎年何兆円も財源が使われてるといった報告もあります。
今は人手不足の業界なら中高年でも再就職しやすくなりました。 現在は、定年退職しても65歳までは企業に継続雇用が義務付けられましたが、その後も働き続けている人はたくさんいます。
平均寿命が長い今の時代に60歳で定年退職するのはリスクになるので、転職したり独立することも視野に準備しておくといいかもしれません。
若い頃から資金作りを意識して仕組みづくりを行うことで、無理のない積み立てが可能となります。目標に向けた行動が早ければ早いほど選択肢は増えます。
ゆとりある老後生活ができるかどうかは、早いうちから準備しておくかどうかに大きくかかっています。
自営業者と会社員で年金額が違う理由

公的年金は2階建ての構造で、加入する制度によって受け取る金額が大きく異なります。
公的年金の構造
- 1階部分:国民年金(基礎年金)|全員が加入
- 2階部分:厚生年金|会社員・公務員のみ加入
受け取る年金額の違い
会社員(厚生年金加入者)
- 国民年金(老齢基礎年金)+厚生年金(老齢厚生年金)を受給
- 厚生年金は現役時代の報酬に応じた金額
- 国民年金満額(令和8年度・昭和31年4月2日以降生まれ)月額70,608円+厚生年金加算
自営業者(国民年金第1号被保険者)
- 国民年金(老齢基礎年金)のみ受給
- 満額(令和8年度)で月額70,608円(年額847,296円)
- 40年(480月)納付して満額。納付期間が短いと比例で減額
モデル年金で見る違い(厚生労働省・令和7年度ベース)
- 厚生年金加入期間20年以上の男性:月額173,457円(基礎年金+厚生年金合計)
- 国民年金加入期間20年以上の男性:月額62,344円(基礎年金中心)
このように、自営業者と会社員とでは年金額に大きな差があるのが現実です。
長く自営業をされている方ほど、老後資金を別途準備する必要があります。
「自分は将来いくら受け取れるか」は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。
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自営業者の老後対策|3つの税制優遇制度

公的年金の不足分を補うやり方として、税制優遇のある制度を活用する方法があります。
① iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 特徴→自分で掛金を出し、自分で運用する年金制度
- 税制優遇→掛金が全額所得控除・運用益非課税・受取時にも税優遇
- 注意点→原則60歳まで引き出せない・運用結果は自己責任
② 国民年金基金
- 特徴→自営業者(国民年金第1号被保険者)向けの公的な上乗せ年金
- 税制優遇→掛金が全額所得控除
- 特徴→終身年金タイプを選択可能(生涯にわたって受給できる)
- 注意点→途中での任意脱退ができない
③ 小規模企業共済
- 特徴→小規模な事業主・役員のための退職金制度
- 税制優遇→掛金が全額所得控除
- 特徴→廃業・退職時に共済金として受け取り
- 注意点→加入要件あり・短期間の解約は元本割れの可能性
3制度の特徴比較
| 制度 | 主な対象 | 特徴 |
| iDeCo | 全員(20歳以上65歳未満等) | 自分で運用・元本変動あり |
| 国民年金基金 | 自営業者等(第1号) | 終身年金タイプあり |
| 小規模企業共済 | 小規模な事業主・役員 | 退職金として受け取り |
共通する税制優遇のポイント
3つの制度に共通する大きなメリットは、掛け金が全額所得控除になることです。特に所得の高い自営業者にとっては、所得税・住民税の節税効果が大きくなります。
ただし、それぞれに加入要件・引き出し制限・元本変動リスクなどの注意点があります。
ご自身の事業状況・収入・他の備えとのバランスで選択することが大切です。
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長く働き続けるという選択肢

老後資金を貯めることだけが対策ではありません。長く働き続けることで、老後の収入を確保する選択肢もあります。
高年齢者雇用の継続
現在は、65歳までの雇用確保が法律で義務付けられています。
さらに70歳までの就業機会の確保は努力義務が課せられています。
在職老齢年金の改正(2026年4月)
働きながら厚生年金を受給する場合、賃金と年金の合計が一定額を超えると年金が減額される仕組み(在職老齢年金)があります。
2026年4月からは、減額の基準となる金額が月50万円から月65万円に引き上げられ、より多くの人が減額を受けずに働くことができるようになりました。
長く働く選択肢の活かし方
- 継続雇用:慣れた職場で安定して働き続ける
- 再就職:人手不足の業界で経験を活かす
- 独立・起業:自分のペースで働く
- スキル習得:外国語・資格取得など、新しい仕事につなげる準備
「定年まで働いて引退」ではなく、何歳まで・どのような働き方をするかを、現役のうちから具体的に考えておくことで、選択肢が広がります。
健康な状態で長く働けるよう、運動習慣・健康管理も老後の備えの一部と捉えると、視野が広がります。
NISAで時間を味方につける積立投資
2024年からNISAが始まりましたが、NISAは運用中の利益が非課税となるので、長期積立に向いています。
投資信託の積立投資であれば、投資の知識やスキルがなくても実行できるので、若い人にもおすすめです。
NISAの基本
- 特徴→運用益が非課税
- 2つの枠→つみたて投資枠・成長投資枠
- 長期積み立てに向いている
積立投資の考え方
毎月一定額を積み立てる方法には、以下のような特徴があります。
- 価格が高い時には少なく、安い時には多く購入する効果
- 価格変動の影響を平準化しやすい
- 短期の市況に一喜一憂しなくて済む
ただし、市場の状況によっては、購入時より評価額が下回ることもあります。
積立投資が合うかは家庭による
積立投資が向くかどうかは、収入の安定性・他の貯蓄状況・年齢・リスク許容度によって異なります。
「やるべき」か「やらないべき」と一律には言えません。
ご自身のライフプラン全体の中で、預貯金・iDeCo・NISA・公的年金の上乗せ制度などをバランスよく組み合わせるのが、現実的な備え方とされています。
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積立投資のポイント
毎月一定額を積み立てることで、高い時に少し買い、安い時に多く買えるので、結果としてリスクを抑えられます。
これは景気が悪くても続けられるといったメリットがあります。景気が悪くなると投資を抑える人がいますが、これは結果としてパフォーマンスを下げることになります。
◎積立投資のポイント
- 投資のスキル不要
- 好景気・不景気でも続けられる
- 高い時に少し買い・安い時にたくさん買える
- 途中で止めるとパフォーマンスが大きく下がる可能性がある
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まとめ
定年退職後の老後資金の備えについて、要点を整理します。
現状の認識
- 平均寿命の延びにより、老後の生活期間が長くなっている
- 公的年金だけで現役時代と同水準の生活を維持するのは難しい家庭が多い
- 自営業者は会社員より公的年金額が少ない傾向
対策の選択肢
| 方法 | 特徴 |
| iDeCo | 自分で運用・税制優遇あり |
| 国民年金基金 | 自営業者向け・終身年金あり |
| 小規模企業共済 | 小規模事業主向け・退職金として |
| 長く働き続ける | 健康管理・スキル習得が鍵 |
| NISA等での資産形成 | 長期積立・元本変動リスクあり |
早めに準備するメリット
- 選択肢が広がる
- 月々の積立額を抑えられる
- 健康・スキル面での準備期間も確保できる
年齢・収入・家族構成・リスク許容度を踏まえて、ご自身に合った備え方を検討されることをおすすめします。
「ライフプランをまだ立てていない」「ねんきんネットを見たことがない」という方は、まずはご自身の年金見込み額を確認するところから始めるのが、現実的な第一歩です。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品・制度の利用を推奨・勧誘するものではありません。年金額・制度は本記事執筆時点(2026年4月)のものです。
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