今の平均的な家庭の老後では、夫婦二人で毎月5万円~7万円不足するといわれています。
これはあくまでも平均的な老夫婦なので、無職期間の長い人や自営業の人はさらに不足する可能性があります。
社会保険には、年金制度、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険がありますが、年金制度は特に長年の積み重ねが将来に返ってきます。
先のことだからと何もしなければ、長生きすることがリスクになってしまいます。
この記事では、公的年金の仕組みとiDeCo(個人型確定拠出年金)を組み合わせた老後対策について解説します。
この記事で分かること
- 老後の生活を支える収支の構造
- 公的年金(国民年金・厚生年金)の仕組みと加入するメリット
- iDeCoの3つの節税効果と具体的な計算例
- iDeCoのデメリットと注意点
老後に生活基盤となる収支

生きている限り老後はいずれ訪れます。 生活の収支を改善するには、収入を上げるか、支出を抑えるかしかありません。しかし、老後は収入を上げる手段が限られます。
もし、老後に働かないのであれば、年金と資産の取り崩しが生活の基盤となります。
老後の生活を決める4つの要素
①基礎年金
②厚生年金
③老後までに作った資産
④老後の支出
危険な社会保険財政
現在の国の社会保険負担は毎年増加しているため、医療保険の利用者の窓口負担を増やすことや、年金の開始年齢の引き上げなどが検討されています。
今までは現役世帯の保険料を毎年引き上げたり、増税を行ったりしてカバーしてましたが、社会保険財政を見ると今後も国民生活に負担をかけてくるでしょう。
そもそもどうして社会保険がこんなに国民生活の負担となっているでしょうか。
年金制度発足時は、15人程度で1人の年金受給者を支えるといったものでした。ところが今では3人で1人を支える状況です。また、合計特殊出生率が2を割っている以上、今後も人口減少は進んでいきます。
2070年には1.3人で1人を支えていく恐ろしい時代が来るといわれています。現役世代からは評判がいまいちの社会保険制度ですが、現役世代もやがては老後を迎えますから、持ちつ持たれつといえます。
年金については不祥事が多いことも、若者を懐疑的にしています。過去には、保険料が官僚によって使い込まれた事件があり、無駄な施設が作られたり、杜撰な管理によって年金記録が5000万件も消えたりもしました。また、国民年金基金、厚生年金基金等の年金関係の施設の役員は実質的な天下り先になっています。こういった不祥事は国民の負担が増える原因と指摘されています。
国民年金と厚生年金は強制加入

公的年金には、国民年金と厚生年金があります。
公的年金は法律で定められた要件に該当すれば、本人の意思に関係なく加入することになっています。
本人の意思では加入するしないを決められませんから、老後対策は基礎年金と厚生年金を活用したうえで、不足分をどのように確保していくかがポイントとなります。
会社員は厚生年金なので未納ということが原則ありません。しかし、自営業や無職などの国民年金だけの人は保険料を納めなければ未納になります。
公的年金は老後だけではない
国民年金といっても、支給理由は老齢だけではありません。 国民年金には、老齢基礎年金以外にも遺族基礎年金や障害基礎年金といった死亡と障害を支給事由とする年金もあります。
国民年金を受けるには、2/3の期間が保険料納付済期間・免除期間でなければいけませんが、直近1年間に未納がなければ支給される特例があります。
また、公的年金は、保険原理を原則としながらも、政府が給付を負担するといった民間の保険とは異なる部分も多く、民間の保険ではできない補助もされます。例えば、民間の保険では保険料を支払わなければ給付を受けられませんが、公的年金では生活保護や免除制度のように保険料を納めなくても年金に反映されることがあります。
政府の年金財政は赤字といわれ、これが民間の保険だと破綻しますが、政府には他の収入から赤字に対して補てんすることができます。
国民年金の保険料と老齢基礎年金
老齢基礎年金は、保険料を納めると年金額が1,626円程度増える(物価等で変動)ので、名目値では10年で元が取れる計算になります。
- 令和8年度(2026年度)の保険料は月額17,920円
いろいろと問題のある年金制度ですが、保険料の未納は年金受給額の減少につながるため、未納にしないことが重要です。
- 公的年金は老後だけではなく、遺族、障害も保障しているため、生命保険の役割もしている。
- 要件に該当している限り年金が支払われる。
- 保険料は所得から控除される。
- 差し押さえられるリスクを回避できる(未納の人)。
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一般的に資産形成で利用されているものには、生命保険、投資信託等の金融商品、不動産投資といったものがあります。
しかし、老後資産を増やすという目的であれば、iDeCoや国民年金基金といった税制優遇がある制度も人気です。
iDeCo(イデコ)の対象が拡大された

2017年1月から確定拠出年金個人型の対象者が変更されて以降、何かと話題のiDeCoですが、制度自体は確定拠出年金の個人型として以前からありました。
確定拠出年金個人型の対象が拡大したのを機に、名称も確定拠出年金個人型からiDeCoに変わりました。話題になった理由は、以前は加入者が限定されていたのが、20歳以上60歳未満であれば加入できることになった点です。
さらに2022年5月の法改正により、iDeCoの加入可能年齢が60歳から65歳に引き上げられました。
2027年1月引き落とし分からは70未満まで拡大される予定です。
ただし、iDeCoの掛金には月の上限が設定されています。
掛金の上限額(月額)
| 加入区分 | 月額上限 |
| 自営業者(国民年金第1号被保険者) | 68,000円 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 20,000円 |
| 会社員(確定給付型あり) | 12,000円 |
| 公務員 | 12,000円 |
| 専業主婦・主夫(第3号被保険者) | 23,000円 |
※所得がない人(専業主婦・主夫等)は節税効果が薄い点にも注意が必要です。
iDeCo(イデコ)の3つの節税効果とは?

iDeCo(イデコ)には、3つの節税ポイントがあります。
- ①所得控除
- ②運用益の非課税
- ③公的年金等雑所得
として扱われる
節税効果の具体例
課税所得500万円の人が毎月23,000円のiDeCoを拠出した場合
- 年間掛金:276,000円
- 所得税の節税効果:約56,400円(税率20%)
- 住民税の節税効果¥:約27,600円(税率10%)
- 合計節税効果:約84,000円/年
普通に運用していれば、運用益に約20%が課税されますが、iDeCoでは運用益が非課税です。増えた分を再投資するので効率の良い投資が行えます。
複利効果の観点から考えても有利な選択肢の一つです。公的年金と同じ扱いなので、ほかの雑所得より有利になります。一時金で受け取る場合は、退職所得の計算によります。
iDeCoは個人の年金口座で運用するため、転職時にも持ち運びができます。転職が一般的な現在では、ポータビリティのある制度は重要です。
iDeCoのデメリット

原則として途中解約できない
iDeCoの一番のデメリットが、原則として途中で任意に脱退できないことです。
掛金はストップできますが、引き出すことは原則としてできません。
運用リスクを自分で負う
運用している際のリスクは自分が負うことになります。
節税効果が大きくても、運用リスクを自分で負わなければいけないことが、なかなか普及しないことの理由の一つに挙げられます。
元本確保型の商品(定期預金等)を選べばリスクを抑えることも可能です。元本確保型であっても、掛金の所得控除のメリットは受けられます。
金融と投資の知識が必要
ある投資に関するアンケートで「70%の確率で100万円もらえるのと、100%の確率で30万円もらえるのとではどちらが良いか」という質問をしたところ、100%の確率で30万円をもらえる方がいいという人が多数でした。
反対に投資経験があったり、金融知識がある人は、70%の確率で100万円もらえる方を選択する割合が多かったそうです。
やはり制度の普及には正しい金融知識と投資知識が必要ということなのでしょう。
NISAやiDeCoをきっかけに投資に興味を持つ人が増える
投資の知識がない人は預金や保険といった元本確保型のみのポートフォリオとなることが多く、投資の知識がある人は期待リターン5%以上のもので運用するなど、これが数十年後になると大きな格差になります。
25年間でみた場合、一方がほとんど殖えないのに対して、投資の知識があってリスクをとっている側(7%)が倍以上になってます。こういった知識の差が老後の格差を生む原因になる可能性があります。
- 知識がない→900万円
- 知識がある→2,400万円(7%)
日本株式だと通常は単元以上からでないと始められないため、中には最低でも100万円以上かかるものもあります。
初心者にとって大きな額の投資はハードルが高いので、安く買える金融商品で初めてみるのがおすすめです。
証券会社によっては、単元未満でも始められるものがありますし、投資信託なら100円から始められるものもあります。
特に投資信託なら無理のない範囲で勉強を兼ねて始められます。また、ネット証券であれば手数料も安く済みます。
証券会社のホームページを見るだけでもいろいろな金融商品があるのが分かります。証券会社によってはセミナーに無料で参加できるものもあります。 何より経済や金融市場に興味を持てば自分のためにもなります。
投資をする富裕層との差は広がる

お金持ちといわれる人々は、例外なく投資活動をしています。
富裕層はお金に稼いでもらうという事を実践している人たちです。お金に稼いでもらえば、利息や分配金といったお金を得ることができます。
重要なのは目減り対策
お金をうまく運用しなければ、インフレに対応することはできません。手元にある300万円を金庫に預ければ20年経っても300万円のままです。それどころか、インフレが3%だとしたら20年で実質165万円の価値になってしまいます。
- (名目)→20年後→300万円
- (実質)→20年後→165万円
- 同じ300万円だが、現在の165万円の価値しかない
逆に3%で運用し続けていれば300万円は541万円になります。それでもインフレが3%では価値を維持しただけです。
定年後の人に対して日経新聞が行ったアンケートによれば、学んでおけばよかった1位は「投資について」だそうです。
若いうちから投資について学んでおいて損はありません。初めの一歩としては投資信託やETF(上場投資信託)がいいかもしれません。
今回のまとめ
老後対策の基本
- 公的年金(国民年金・厚生年金)を未納にしない
- iDeCoをうまく活用できれば、老後資金の準備に有効
- インフレは資産を目減りさせる
- 若い頃から取り組んでおけばよかったことのランキング1位は「投資について」だった
iDeCoのポイント
- 掛金が全額所得控除・運用益非課税・受取時も優遇の3つの節税効果
- 2022年の改正で65歳未満まで加入可能に拡大
- 途中解約原則不可・運用リスクは自己負担
特に自営業者の方へ
会社員は厚生年金があるため公的年金の受取額が多くなりますが、自営業者の期間が長い方は老齢基礎年金が中心となり、公的年金の受取額が少なくなります。iDeCoの加入は老後資金の準備として有力な選択肢の一つです。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨・勧誘するものではありません。iDeCoの掛金上限額・制度内容は変更される場合があります。投資には元本割れのリスクがあります。本記事執筆時点(2026年)の情報です。

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