現在の住宅ローンは低金利といわれてますが、そうであっても借入額が多く、返済期間が長いと負担する利息の額は大きくなります。
住宅ローンを変動金利で借りていた場合、金額が大きければたとえ0.1%の上昇でも毎月4,5千円の負担増となることもあります。
前回、金利上昇リスクを減らす方法として、住宅ローンの借り換えについて紹介しましたが、繰り上げ返済という方法でも金利上昇の不安を減らすことができます。
今回は繰り上げ返済について解説します。
繰り上げ返済とは
住宅ローンの毎月の返済とは別に、一定金額を返済することで、残りの返済期間を短くしたり、返済金額を軽くすることができます。これは一部繰り上げ返済といわれる方法です。
残りのローンを全額繰り上げて返済したら全部繰り上げ返済になります。
全部繰り上げ返済は残りのローンを前倒しで返済することで、将来発生するはずであった利息を負担しなくて済みます。
一部繰り上げ返済は、残りのローンの一部を前倒しで返済することですが、こちらも返済した部分(一部)の将来発生するはずであった利息を負担しなくて済みます。
そして、一部繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型の二つの方法があります。
どちらの一部繰り上げ返済でも、早く行うほど利息の軽減効果は大きくなります。
期間短縮型
期間短縮型の一部繰り上げ返済は、毎月の返済額に変化ありませんが、残りの返済期間が短縮されます。
繰り上げて返済することで、その部分に本来発生するはずだった息を払わなくて済みます。
たとえば、5000万円を金利1%で35年の返済期間で借りた人が、5年後に約100万円を期間短縮型で一部繰り上げ返済すると、負担する利息が約33万円減ります。また、返済期間も7カ月短縮されます。
このように一部繰り上げ返済を行うことで、返済期間を短縮させることができ、それにともなって金利負担が減るので、金利上昇の不安を緩和できます。
返済額軽減型の一部繰り上げ返済よりも利息の軽減効果は大きいことから、ほとんどの人は期間短縮型を選んでいます。
35年の住宅ローンを組んで、余裕があるときに繰り上げ返済して20年以内に返済を終わらせる人もいます。
最初から短期間の住宅ローンを組むと月々の返済額が高くなるので、35年で組んであとは繰り上げ返済するというのは良い選択とされています。
返済額軽減型
返済額軽減型は、残りの返済期間は変わりませんが、毎月の返済額が少なくなります。
こちらも利息の負担を減らせますが、利息を削減する効果は期間短縮型に負けます。
こちらも5000万円を金利1%で35年の返済で借りた人が、5年後に100万円を返済額軽減型で一部繰り上げ返済した例を取り上げます。
期間短縮型では約33万円の利息を削減する効果がありましたが、返済額軽減型だと約15.7万円の利息しか削減できません。
ただし、毎月の返済額を3216円減らすことができます。
期間短縮型と返済額軽減型の一部繰り上げ返済とでは効果が異なるので、それぞれの特徴を踏まえて選択することが大切です。
低金利時代の繰り上げ返済は効果がいまいち?
利息の負担を減らす効果のある一部繰り上げ返済ですが、この効果は適用されている金利によるので、今のような低金利では効果が限定的といえます。
家計が苦しくならないよう、あえて繰り上げ返済をしないのも賢い選択かもしれません。
今のように低金利だと、繰り上げ返済をせずに投資信託等で運用したほうがいいというファイナンシャルプランナーもいます。
実際私も試してみましたが、100万円を繰り上げ返済したら24万円の軽減効果が見込まれたのに対して、投資信託で運用したら10年で50万円以上殖えました。
しかも、繰り上げ返済の方は15年なので、投資信託も同じように運用を15年続けたら同じような利回りなら100万円殖える計算です。今ならもっと有利な商品もあります
ただ、投資信託の方は利益に20.315%課税される(100万円なら203,150円)ので、その点は注意が必要です。
繰り上げ返済のポイント
●繰り上げ返済を行うことで、返済期間を短縮したり、月の返済額を少なくすることができます。
●繰り上げ返済した部分は利息が発生しないので、金利上昇リスクの減少になります。
●繰り上げの効果は適用される金利によるので、今のような低金利時代は効果が限定的かもしれません。
●繰り上げ返済は元金を減らすので、住宅ローン控除(減税)の効果が減ります(住宅ローン控除は年末の残債が対象)。
●繰り上げ返済によって借入期間から完済までの期間が10年未満になると、住宅ローン控除が受けれなくなります。
まとめ
・繰り上げ返済には、全部繰り上げ返済と一部繰り上げ返済がある。
・一部繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型がある。
・期間短縮型は、毎月の返済額は同じ、返済期間が短縮される。
・返済額軽減型は、毎月の返済額が少なくなり、返済期間は同じ。
・期間短縮型の方が返済額軽減型より利息の軽減効果は大きい。
・繰り上げ返済でローン残高が減るとローン控除の減税も減る。
・ネットと窓口で繰り上げ返済の扱いが異なる金融機関がある。