家賃滞納分を「敷金から差し引いて」はNG?知っておきたい賃貸ルール

投稿日:2019年5月16日 更新日:

最近は、滞納のリスクに備えて必ず保証会社を付けてもらうという管理会社が増えてます。

保証会社に保証してもらえば、賃借人が家賃を滞納しても肩代わりしてくれるので、連帯保証人との面倒な手続きがありません。

また、賃借人にとっても連帯保証人を探さずに済むメリットがあります。デメリットとしては、保証料の費用がかかることです。

 

日本は不景気続きなので家賃を滞納する人は少なくありません。

賃借人の中には「今月は何かと出費が多くて家賃が払えそうにないので、契約時に預けた敷金から引いといてもらえないか?」と請求する人もいます。

しかし、滞納家賃を敷金から差し引くことについて、賃借人から請求することは認められていません。

そもそも敷金の性質とは?

敷金は、家賃の滞納があった時や部屋を壊した場合などに備えて賃借人が賃貸人に預ける金銭です。

敷金の相場は、神奈川であれば1ヶ月2ヶ月のものが多いですが、最近の単身者向けは敷金・礼金がゼロのゼロゼロ物件も増えています。

  • 敷金→家賃の滞納・部屋の破損に充当
  • 敷金の目安→家賃の1ヶ月~3ヶ月(神奈川)

関東では家賃の1ヶ月~3ヶ月が目安とされますが、関西では保証金(敷金)と称して何%かを償却する敷引きという慣習があります。

 

賃借人にとっては、敷金は家賃の滞納や部屋の破損に備えて預けるものなので、何事もなく契約が終了した場合は返還されるのが原則です。

このように家賃の滞納に備えて敷金はあるので、もしも、賃借人が家賃を滞納した時は賃貸人は敷金から充当させることができます。

つまり滞納した家賃を敷金から差し引くことは、賃貸人からはOKということになります。

 

賃借人から「滞納家賃を敷金から引いといて」は認められない

都市部でも空室率の上昇が見られ、半分以上が空室というアパートもあります。

神奈川県でも郊外にいくと、新築でも入居者が見つからないという話を聞くようになり、賃借人側の立場も強くなってます。

最近は何かと物価高のため、いつもより消費がかさむ月もあるでしょう。

以前、賃借人から「今月は何かと物入りだったので敷金から引いといてくれないか」というお願いをされたこともありました。

しかし、敷金は賃借人が賃貸人に預ける担保を意味するので、これを認めると後々トラブルに発展するリスクがあります。

 

敷金は賃貸人にとって賃借人に事故(家賃の滞納・部屋の破損・無断転貸など)があった時のためにあり、敷金があるから賃貸人は安心できるわけです。

つまり、賃借人が金銭を工面できないからといってその都度、敷金から取り崩していたのでは敷金本来の目的が達成されなくなってしまいます。

したがって、賃貸人の方から敷金を滞納家賃に充てることができても、賃借人側から敷金を家賃に充てることはできません。

 

過去の裁判でも、賃借人から滞納した家賃を敷金からあてるよう依頼することは認められてません。

滞納家賃を敷金から引くこと

  • 賃貸人から→OK
  • 賃借人から→NG

 

もしも、家賃が支払えそうにないのであれば、早めに管理会社に相談して、どうするか交渉するしかありません。

賃貸人の中には、1か月程度の遅れなら、払える範囲で毎月の家賃に上乗せしてくれればいいという人もいます。

 

1ヶ月の滞納では契約は解除できない

家賃の滞納が何か月にもなれば、賃貸契約を解除されても賃借人は文句を言えないのは分かると思います。

カバチタレなどのドラマを見てると、1日遅れただけで部屋から追い出されるシーンがありますが、1か月程度では普通は認められません。というより賃貸人であっても、賃借人に無断で勝手に部屋に入るのは違法行為になります。

うっかり家賃の支払いを忘れることもありますし、1ヶ月では信頼が破壊されたとは言えないというのが裁判所の立場です。

もっとも滞納が続いて、催促されても支払わないのであれば、契約の解除理由になります。

滞納家賃が3ヶ月であっても交渉次第で住み続けることができる場合もあります。

 

家賃が支払えない場合の正しい対処法

  • 管理会社や賃貸人に早めに連絡する
  • 分割支払いや翌月の家賃に上乗せなど、交渉の余地が認められるケースもある
  • 一番だめなのは放置・居留守(契約解除、強制退去のリスク)

 

家賃の支払いが苦しいのであれば、早めに家賃の低い物件に引越すといったことも必要です。

 

敷金・家賃をめぐるトラブルは多い

最近は物価高で政府も対策はしてくれないし……家賃が払えない、という人は多いです。

そこで不動産会社や賃貸人は「家賃を一度でも滞納したら退去する」といった特約を付けて契約することがあります。

しかし、このような特約はあまりに賃借人に不利なので、特約が無効となることが多いです。

 

また、物価高で家賃が値上がりすることがあります。

このような場合に契約書に敷金2ヶ月分とあれば、家賃の値上げとともに敷金も不足分を支払う必要があります。

ちなみに家賃の値上げに納得できない時は、賃借人は供託といった方法で賃貸人に対抗することができます。

 

退去した時に敷金の返還をめぐってトラブルになることも多いです。

家賃の滞納もなく、部屋もきれいに使ったのに敷金が返還されなければ、裁判という手段もあります。

 

まとめ

・敷金は、家賃滞納・部屋の破損・無断転貸などに備えて賃貸人が預かる金銭

・滞納家賃を敷金から引くのは、賃貸人はOK、賃借人はNG

・家賃の支払いが1ヶ月遅れたくらいでは、賃貸人は契約を解除できない

・家賃が支払えない時は、管理会社や賃貸人に早めに相談する

 

大学を卒業する前から不動産業界で働いてきましたが、初めての業務は賃貸業務でした。

当時の賃貸業界では敷金を返還しない賃貸人もいたので、よく敷金返還請求で賃貸人が訴えられてました。

 

今は原状回復についてのガイドラインもあり、敷金は返すものと認識されるようになりました。

もっともガイドラインがあっても、特約が設けられてたり、部屋を破損すれば敷金が十分返ってこないこともあります。

原状回復義務については、ガイドラインを一読しておくと安心です。

 

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