敷金・保証金が返金されるのはいつ頃?

投稿日:2022年3月20日 更新日:

 

2020年4月からの民法改正で敷金について明文化されました。

今まで当たり前のように敷金や保証金といってましたが、それも実は慣習的なもので民法に規定がありませんでした。

民法の明文化されたことで敷金の定義や扱いが分かりやすくなりました。

民法上の敷金の定義

敷金は、借主による賃料の未払い等があったときに備えて、借主から貸主に預ける金銭をいいます。

借主が賃料を滞納したときに、貸主は預かっていた敷金を家賃に充当することができるといった具合です。

 

2020年の民法改正で多くの判例が明文化されました。

敷金や保証金と名称は様々ありますが、債務を担保する目的で借主から貸主に渡される金銭は、法律上は敷金です。

敷金

いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人(借主)の賃貸人(貸主)に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、 賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。

敷金、保証金、建設協力金……どのような名前であっても、債務(家賃の支払い等)を担保する目的で授受される金銭は敷金です。

 

家賃の未払いがある時に、貸主が敷金から充当することは出来ますが、借主の側からは敷金から家賃分引くよう請求することはできません。

民法622条の2

2.賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充ることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

 

いずれも実務的には変わってませんが、明文化されたことで法律になじみがない人にも分かりやすくなったのではないでしょうか。

 

敷金は賃貸借が終了し、部屋を返還した後に返還される

賃貸借契約が終了し、借主から部屋の返還を受けたときは、貸主は債務の額を敷金から差し引いて返還します。

賃料・共益費の滞納、原状回復費用の未払い等の賃貸借に基づく借主の債務がある場合は、貸主はこれらを敷金から差し引くことができます。

 

民法622条の2

賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

  1. 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
  2. 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

 

このように法律では、賃貸借が終了して部屋の返還を受けてから敷金を返せばよい(同時履行でない)とされています。

実際は貸主や不動産会社が部屋の中を見て、1か月~3か月後に返還されることが多いです。

某不動産協会で使っている契約書ひな形では、遅滞なく返還するとなっています。

法律的には早い方から順に、直ちに、速やかに、遅滞なくの順番です。しかし、具体的な日数の決まりはありません。

業者の中には、しらばっくれて返金しないところもあるようです。

債権には知った時から5年という時効があるので、あまりに遅いようなら催促していいと思います。

 

契約の途中で貸主が変わったら

賃貸借契約の途中で貸主が別の人にアパートやマンションを売却することはありえます。

つまり、大家さんが別の人に変るということですが、この場合に最初に支払った敷金は誰に請求すればいいのでしょうか。

 

過去の裁判例(判例)では、敷金返還債務は、旧貸主に対する未払い賃料等を控除した残額について、借主の同意がなくても新貸主に承継されるとされています。

分かりやすくいうと、未払い賃料がなければ、部屋を退去した後の敷金は、新しい貸主に返還を請求できます。

 

借主の原状回復の義務

敷金を返してもらう際、原状回復費用の未払いが差し引かれますが、借主が負担しなければいけない原状回復費用は、特約で定めてない限り、故意または過失によって建物に生じた損傷だけです。

民法では、通常損耗と故意・過失による損耗とに分けて区別しています。

 

例えば、使わなくても歳月によって発生する経年劣化や、普通に使用していれば発生する損耗は通常損耗とされています。

・畳、フローリングの変色や色落ち

・テーブルやイスを置いてついたカーペットやフローリングの跡

・テレビや冷蔵庫の裏側の黒ずみ

・壁の変色やビスの穴

・天災事変によるガラスのヒビ

 

借主の故意・過失による損耗

・カーペットに飲み物をこぼして放置してできたシミ

・台所の油汚れ

・結露を放置してできたカビ等

・タバコのヤニ

・壁のクギ穴

など

特約がなければ、借主は、故意・過失による損耗だけ負担すればいいということです。

 

おわりに

2020年4月の民法改正で敷金の定義や扱いが明文化されました。

参考にされていた判例が明文化されただけなので、不動産業者にとっては実務上は変わりませんが、法律になじみがない人には分かりやすくなったのではないかと思います。

 

・名称にかかわらず、一切の債務を担保する目的で授受される金銭は敷金

・敷金は、賃貸借が終了し、部屋を返還した後に返ってくる

・敷金が返金されるのは、遅滞なく、1か月~3か月後くらい

・途中で貸主が変わっても、新しい貸主に敷金の返還を請求すればよい

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