不動産業界で必須の資格「宅地建物取引士(宅建)」と試験について

投稿日:2018年3月21日 更新日:

「宅地建物取引士」は、不動産の取引で必須となる資格です。

宅地建物取引士は、以前は宅地建物取引主任者という名称でしたが、不動産取引において宅地建物取引士の果たす責任は大きいという理由で、2015年に士業の仲間入りとなりました。

宅地建物取引士は、宅建という名前で親しまれ、資格の登竜門という位置づけでもある資格です。

毎年20万人が受験するように大変人気の資格となっています。

 

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宅地建物取引士(宅建)が不動産取引で果たす役割

まず、宅地建物取引業(不動産会社)を営もうとする場合は、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)に基づき、国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受ける必要があります。

免許を受けるためには、宅地建物取引業者の事務所に5人に1人以上の割合で宅建士を置かなければならない(設置義務)とされています。

 

宅地建物取引士の業務としては、宅建業法第35条に定める重要事項の説明重要事項説明書への記名押印及び同第37条に定める書面(契約書等)への記名押印があります。

不動産取引では、契約前に対象不動産について重要事項の説明を行うのですが、この重要事項説明を行うには宅地建物取引士である必要があります。

不動産の取引は高額なので、公正な取引を行うためにも不動産の知識がない人に向けて説明しなければならないからです。

契約前に知識を備えた宅建士から説明をさせ、お客さんに考える時間を与えるのが重要事項説明の目的です。

 

宅地建物取引士の資格は、不動産の専門家であることを示す資格といえます。

宅地建物取引士の資格が必要な業務

・契約締結前に行う重要事項説明の業務

・重要事項説明書への記名押印

・契約書の記名押印

 

宅地建物取引士で広がる活躍の場

宅地建物取引士は、以前から宅建の略称で社会的に広く知られていた国家資格です。

広く知られた資格なので、不動産業界はもちろん、それ以外の業界でも就職や転職が有利になることがあります。

宅地建物取引士の試験に受かるには200~300時間以上の勉強が必要といわれ、宅地建物取引士の試験に合格したということは、計画性がある、目標に向かって努力できるといった評価を受けることにつながります。

 

不動産業界とは関係ないようにみえても、立地のいい物件を常に会社は探しているので、不動産業界以外の会社に不動産部があることは珍しくありません。法人の1割が業者といわれています。

また、銀行であれば担保価値について調べることがありますし、建築会社や投資会社では周辺知識として宅建士の知識が役に立つことがあるので、社員に取得を推奨している企業は多いです。

 

大手の不動産会社では、営業であれば資格の取得を義務付けていますし、街の不動産会社では宅建資格がある人が不足しやすいので常に求人募集があります。

ある不動産会社では、事務員に資格取得をさせて5人に1人の宅建士を確保してたりします。

簿記やFPと違い、宅建士には重要事項説明及び書類への記名押印という独占業務があるので、不動産業界では常に募集がありますから、宅建資格から事務職を目指すことも可能です。

 

また、営業として不動産会社に就職した場合は、資格手当がつくなど給与面で待遇が良くなることも多いです。

 

宅地建物取引士試験の概要

宅地建物取引士試験の出題範囲

宅地建物取引業に関する実用的な知識を有するかどうかを判定することに基準が置かれています。(宅建業法施行規則第7条)
試験の内容は、おおむね次のとおりです。(同第8条)

土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。

土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。

土地及び建物についての法令上の制限に関すること。

宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。

宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。

宅地及び建物の価格の評定に関すること。

宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。

 

宅地建物取引士試験の受験資格は特になく、誰でも受験できます。

試験は、毎年10月の第3日曜日に実施され、合格発表は12月です。

試験時間は、午後1時から午後3時までの2時間です。

試験は4つの選択肢から1つを選択する四肢択一方式で、マークシートで解答します。

 

試験案内の配布は例年7月に行われます。

また、ネットでの試験申し込みもできます。

 

受験料は7,000円です。

 

宅地建物取引士を名乗るには登録と取引士の交付が必要

宅地建物取引士になるには、試験に合格するだけでは不十分です。

宅地建物取引士になるには、さらに「登録」と「宅地建物取引士証の交付」を受ける必要があります。

 

宅地建物取引士として登録するには、「2年以上の実務経験」または「登録実務講習の修了」が必要です。

不動産業界未経験でも、登録実務講習を受講することで、2年以上の実務経験の代わりとすることができます。

 

宅地建物取引士の資格登録の欠格事由に該当すると登録ができないので、その点にも注意が必要です。

・心身の故障で宅建士の事務を適正に行うことができない者

・成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者

・宅建業法違反や傷害罪、暴行罪などで罰金刑以上の刑を受け、5年を経過していない者、その他禁固以上の刑を受け、刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなってから5年を経過していない者

 

 

講習の修了後、必要な書類を提出すれば登録できます。

神奈川県の宅地建物取引士証の交付申請について

 

宅地建物取引士の登録を行った後、宅地建物取引士証の交付を申請すれば、2週間後に交付されます。

ただ、試験合格日より1年以上経過している人は、取引士証の交付を受ける前に、都道府県知事指定の法定講習の受講が必要です。

 

実務経験がない人の宅地建物取引士証の交付までの流れ

宅地建物取引士試験の受験 → 合格 → 登録実務講習 → 宅地建物取引士の登録 → 法定講習(試験合格から1年以上経過している人) → 宅地建物取引士証の交付申請 → 取引士証の交付

 

宅建試験に合格するために

宅地建物取引士の試験に合格するためには、どのような方法で勉強を進めるのがいいのでしょうか。

 

宅地建物取引士の試験は、合格率が15%~18%となるように調整されます。

受験者の6人に1人しか合格できないことから、しっかり計画して勉強を進めていかなければいつまで経っても合格は難しいです。

 

勉強のやり方としては、「独学」と「資格講座の利用」があります。

 

私は独学だったので、独学でおすすめのテキストを紹介します。

 

宅建の勉強では、らくらく宅建塾のテキストを使用しましたが、TACのテキストも見やすいです。

ちなみにTACは大手資格予備校なので安心です。

 

宅建は独学でも合格は可能ですが、初学者や時間がない人は資格講座の利用がおすすめです。

「なぜなら楽しいから」

私も宅建の勉強にあたって資格予備校を検討しましたが、当時は20万円はしました。

大学生だった私には厳しい金額だったので、仕方なく独学で勉強しましたが、今は5万円以下の講座もたくさんあります。

 

あわせて受験生から評判が良い通信講座も紹介しておきます。

資格試験の通信教育・通信講座ならフォーサイト

法律学習のノウハウがスマホに!オンライン予備校の画期的システムとは?【資格スクエア】

【スタディング】累計合格者の声16,000人超!オンライン資格講座

 

通信講座や資格の学校で勉強を進めるメリットは、合格するための教材が全て揃えられている点です。スタディングはテキスト別売りです。

通信講座や資格学校の場合は、講義を耳で聴けるので、本を読むだけの独学よりも知識が定着しやすくなります。

追記:最近、スマホで講義を聴いているのですが、スマホがあればどこにいても勉強時間になるので、講義をスマホで聴けるものがおすすめです。

社会人になってからも語学や資格の学習をしてますが、昔と違って今は講座が安くなりました。

昔なら50万円以上していたような講座も、スマホのおかげで20万円以下で受けられるようになり、習い事感覚で今もいろいろな講座を受けています。

 

宅地建物取引士からのステップアップ

宅地建物取引士に合格したら、さらに上の難関資格を目指したり、別の資格を取得して仕事の幅を広げることもできます。

 

ファイナンシャルプランナー

宅建士で学習したことは、FPでも活かせます。

FPの相談業務で多いのが、住宅ローン相談やライフプラン相談です。

FPを勉強することで不動産のアドバイスに加えて、資金計画についてもアドバイスできるようになります。

ただ単に不動産を紹介するだけでなく、不動産投資や老後のアドバイスなどができることはお客さんの信頼にもつながります。

FPでは、税金の勉強もするので、お客さんが利用できる制度の紹介もできるなど、業務の幅が広がります。

 

管理業務主任者・マンション管理士

管理業務主任者とマンション管理士は、マンション管理の専門家です。

マンションの流通数は年々増加しており、管理業務主任者やマンション管理士で学んだ知識は、不動産仲介や管理、再販でも役立ちます。

不動産会社の中には、どちらかの資格を取ると資格手当がつく会社もあります。

試験内容も民法、宅建業法、借地借家法など、宅建士と重複しています。

不動産会社の営業なら、マンションの知識は必須ですので、ダブルライセンスによるメリットはあります。

 

賃貸不動産経営管理士

賃貸住宅の管理についての専門家が「賃貸不動産経営管理士」です。

不動産会社だけでなく、アパートやマンションで不動産投資を行っている人にも人気の資格です。

 

行政書士

行政書士は官公署など行政に関する資格ですが、法律を広く勉強するので、法律を読む力がつきます。

行政書士の業務に許認可申請がありますが、これから開業する人に物件の紹介をするなんてこともできます。

 

司法書士

司法書士は法律に関する書類の専門家で、不動産の登記も専門です。

司法書士の合格率は3~5%なので、宅地建物取引士よりも難易度は高いですが、努力して取得するだけの価値はあります。

不動産会社と司法書士事務所で開業する人もいます。

 

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の鑑定を独占業務とする国家資格です。

不動産鑑定士も宅地建物取引士も同じ不動産業務なので、両方の資格を持っていれば業務の幅が広がります。

ただし、不動産鑑定士は、かつては弁護士、公認会計士と並ぶ三大資格といわれたほど難易度が高いので、計画的な勉強が必要です。

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