少し前になりますが、大阪で中国系の企業がビルを買い取り、家賃の増額を決めたことが話題となりました。
この三十年日本は景気が良くないので、家賃増額の話を聞かないかもしれませんが、賃貸では家賃が増額されることはあります。
現在は、賃貸住宅の空室率が高く、需要よりも供給のほうが上回っているため、更新時に家賃の値下げ交渉があっても増額交渉はあまり聞きません。
しかし、今後大幅なインフレがあれば、当然家賃が増額することは考えられます。
賃貸借契約の更新時に家賃を増額することはある
部屋や土地を借りた場合、対価として毎月賃料を支払っているはずです(無料→使用貸借)。
この家賃や地代について、更新時などに値上がりすることがあることはご存じでしょうか?
家賃や地代は、住んでいる途中で変わることがあります。
賃借人が家賃増額に納得しなければ、家賃の増額をめぐって賃貸人との関係が悪化することもあります。
不動産はインフレや増税といった経済的な事象に連動します。
例えば、税金といった公課の増加があったり、インフレで貨幣価値が下がれば家賃を上昇せざるをえません。
そのエリアの周辺の土地や建物と比較して大幅に家賃や地代が低かった場合は、適正価格に直すため家賃が上昇することは当然あります。
といっても家賃を増額するにはそれなりの理由が必要です。
- 地価や物価の上昇(インフレ)
- 税金や管理費の増額
- 周りの家賃と比べて不相当
- 契約書に家賃を増額しないことの定めがないこと
- 建物の修繕に係るコストの増加
- など、妥当な値上げ額
家賃見直しのタイミングは契約の更新時が多い
家賃増額をしない旨の特約がなければ、賃貸人及び賃借人は、将来に向かって家賃や地代の増額又は減額を請求できます。
賃貸借契約については、借地借家法という不動産の貸し借りに関する法律で決められています。
法律上、特約で増額しないとすることは可能ですが、減額することは賃借人に不利となるので無効とされています。
- 家賃増額しない特約→有効
- 家賃減額しない特約→無効(定借除)
ほとんどの契約書では、賃貸人・賃借人の双方から増減額請求できるようにし、できるだけ当事者の協議によって解決する方法がとられます。
賃貸契約期間中の家賃値上げは反発が多いので、家賃増額の見直しは契約更新時に行われるのが一般的です。
過去の判例から見るおおよその目安
過去の事例が必ずしもあてはまるわけではありませんが、判例は一つの目安になります。
判例というのは、過去にあった裁判例のことをいいます。
過去の判例を見ると、15%~20%が不相当の目安とされることが多いようです。もちろん値上げ額が妥当であるかは重要です。
とはいえ、物価や諸費用の上昇と比較して妥当であるかの判断は難しく、専門家であっても何を基準とするかで答えに差が出ます。
これはあくまでも判例の話なので、必ずしもこうなるとは限りません。
賃貸人と賃借人の交渉がまとまらない場合
賃料や土地代が不相当の場合について、賃貸人と賃借人の意見がまとまらないときもあると思います。
法律では、賃借人は裁判確定までは相当と認める賃料を支払えばよいことになっています。
そのかわり、裁判が確定して支払った賃料が不足していた場合は、不足額に加えて利息をつけることとされています。
ただ、多くの人は、裁判を面倒と感じるでしょうから、まとまらない場合は引っ越していく人が多いようです。
賃借人が家賃の受け取りを拒否されたときは
交渉がまとまらないときは、お互いに感情的になっている可能性があります。
家賃の受け取りが拒否されているとはいえ、家賃を支払わないわけにはいきません。
法律では家賃の受取を拒否された場合についても定めがあります。
賃借人が家賃や地代の受け取りを拒否されているような場合は、お金を支払うことを通知して、受け取るように催告するというのが民法上の扱いです。
そして、賃借人は、供託所に賃料や地代を供託することで支払義務を免れることとされています。
ただ、これもほとんどの人にすれば面倒なので、多くの人はとっとと引っ越して行くでしょう。
まとめ
・家賃や地代は、増額されることがある。
・賃借人にも家賃減額請求が認められている。
・増税・物価の上昇は家賃増額の原因になる。
・家賃が増額されるのは更新時が多い。
・無制限な家賃の値上げが認められているわけではなく、値上げが妥当かどうかが判断される。
・家賃の交渉がまとまらない場合の決まりが法律で定められている。