少し前になりますが、大阪で中国系の企業がビルを買い取り、家賃の増額を決めたことが話題となりました。
この三十年日本は景気が良くなかったので、家賃増額の話を聞かないかもしれませんが、賃貸では家賃が増額されることはあります。
現在は、賃貸住宅の空室率が高く、需要よりも供給のほうが上回っているため、更新時に家賃の値下げ交渉があっても増額交渉はあまり聞かないかもしれません。
しかし、インフレ次第で、当然家賃が増額することは考えられます。
現にコロナが収まって以降、家賃は増額傾向にあります。
この記事から分かること
- 家賃・地代が契約期間中に増額されることがある理由
- 家賃増額が認められるための主な要件
- 借地借家法における「増額しない特約」と「減額しない特約」の扱いの違い
- 家賃見直しがなぜ契約更新時に行われやすいのか
- 増額の妥当性はどう判断されるか(一律の基準はない)
- 交渉がまとまらない場合の法律上の対応(相当賃料の支払い、供託制度)
賃貸借契約の更新時に家賃を増額することはある

部屋や土地を借りた場合、対価として毎月賃料を支払います(無償の場合は使用貸借となり、賃貸借とは扱いが異なります)。
この家賃や地代は、契約期間の途中で見直されることがあります。
賃借人が増額に納得しない場合、賃貸人との関係が悪化することもあるため、増額にはそれなりの理由が必要です。
不動産はインフレや税制といった経済的な事象の影響を受けます。
公租公課の増加や、インフレによる貨幣価値の低下があれば、家賃を見直さざるを得ない場合があります。
また、周辺の家賃相場と比べて大幅に低い場合、適正価格に近づけるための増額が行われることもあります。
家賃の増額理由
家賃の増額が認められうる主な理由には、次のようなものがあります。
- 地価や物価の上昇(インフレ)
- 税金や管理費の増額
- 周辺の家賃相場との乖離
- 契約書に増額しない旨の定めがないこと
- 建物の修繕コストの増加
家賃見直しのタイミングは契約の更新時が多い
借地借家法では、増額しない旨の特約がない限り、賃貸人・賃借人どちらからも将来に向けて家賃や地代の増額・減額を請求できると定められています。
なお、「家賃を増額しない」特約は有効ですが、「家賃を減額しない」特約は、賃借人に不利になるため原則無効です(定期借家契約を除く)。
実務上は、賃貸人・賃借人双方から増減額請求ができるようにしたうえで、当事者間の協議によって解決することが一般的です。
契約期間中の家賃見直しは反発を招きやすいため、実務上は契約更新のタイミングで行われることが多いです。
増額が妥当かどうかの判断基準

家賃の増額が認められるかどうかは、経済事情の変動、近傍同種の物件の賃料相場、築年数や設備といった個別の要因などを総合的に考慮して判断されます。
一律に「何%までなら妥当」という明確な基準があるわけではなく、専門家の間でも判断が分かれることがあります。
過去の裁判例には、鑑定結果をもとに増額が認められたケースもありますが、これはあくまで個別の事案における結果であり、そのまま他のケースに当てはまるとは限りません。
賃貸人と賃借人の交渉がまとまらない場合
家賃や地代が不相当かどうかについて、当事者間の意見がまとまらないこともあります。
この場合、法律上、賃借人は裁判が確定するまでは、自身が相当と考える賃料を支払えばよいとされています。
ただし、裁判が確定し、支払っていた賃料が不足していたと判断された場合は、不足額に加えて年1割の利息を付けて支払う必要があります。
賃借人が家賃の受け取りを拒否されたときは
交渉がまとまらないときは、お互いに感情的になっている可能性があります。
家賃の受け取りが拒否されているとはいえ、家賃を支払わないわけにはいきません。
法律では家賃の受取を拒否された場合についても定めがあります。
民法上、賃借人はまず支払いの意思を通知して受け取りを催告することになります。
それでも受け取りを拒否される場合は、供託所に賃料や地代を供託することで支払義務を果たしたことになります。
ただ、これもほとんどの人にすれば面倒なので、多くの人はとっとと引っ越して行くでしょう。
まとめ
- 家賃や地代は、契約期間の途中で増額されることがある
- 賃借人にも家賃の減額請求が認められている
- 増税や物価上昇は、家賃増額の理由になりうる
- 家賃の見直しは、契約更新時に行われることが多い
- 無制限な値上げが認められているわけではなく、増額が妥当かどうかは個別に判断される
- 交渉がまとまらない場合の対応(供託など)は法律で定められている

