ライフイベントには様々ありますが、中でも大きなライフイベントの一つといえるのが出産です。
社会保障審議会が公表している「出産育児一時金について」によれば、令和元年の出生数は86万5,234人と過去最少でしたので、この数値を改善させる対策が必要かもしれません。
出産した人の経済的負担を軽減するために、社会保険制度には様々な制度があります。
「なんとなく聞いたことはあるけど、どれが自分に関係あるのか分からない…」という人も多いので、
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出産で実際にかかるお金
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もらえる(減らせる)お金
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会社員と自営業で違うポイント
を整理していきます。
出産費用はいくらかかる?ざっくり「50万〜60万円」が目安
出産は病気ではないので健康保険の対象外となっており、基本的に全額が自己負担となります。反対に異常分娩の場合は、健康保険が使えるものもあります。
出産にかかる費用にどのようなものがあるのかというと、入院料、室料差額、分娩料、検査・薬剤料、処置・手当料、その他(材料費、医療外費等)があります。
肝心の費用についてですが、全国平均では524,182円、神奈川だと全国平均より高めになるので、約56万円が出産費用としてかかるようです。
出産費用は、10年前の平成24年と比べると全体的に増加傾向にあり、10年で1割程度上昇しています。
神奈川の約56万円という費用はあくまでも平均なので、病院が公的か私的か、病室の種類、分娩方法等によっても変わってきます。
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公的病院:50万円前後
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私立病院・診療所:50〜55万円台が中心
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都市部・個室・無痛分娩など:60万円超になるケースも
神奈川県など都市部は全国平均よりやや高くなりやすいので、「50〜60万円は見ておく」のが現実的なラインです。
参考 出産育児一時金について 社会保障審議会
まず押さえたい「出産育児一時金」は1人あたり50万円

出産育児一時金の基本
約56万円の出費は高額なので、国民健康保険や健康保険から子供一人について一時金が支給されます。
令和5年4月1日から「50万円(産科医療補償制度の対象外は40.8万円)」が一時金として支給されます。
双子が生まれた場合は2人分(3人なら3人分)が一時金として支給されます。
妊娠85日以上の出産であれば、早産、死産、流産、人工中絶も支給対象となります。
実際の自己負担は?
全国平均 52.4万円 − 50万円(一時金)= 自己負担 約2〜10万円程度(病院・部屋・分娩方法によって増減)
出産費用が50万円を超えるケースは多いですが、全額自己負担ではなく、かなりの部分を一時金でカバーできるイメージです。
便利な「直接支払制度」「受取代理制度」
一時金は、次のような仕組みを使うと手出しが少なく済みます。
直接支払制度
お金に余裕がない人であれば、直接支払制度という制度があります。
この制度を利用すると協会けんぽや健保組合が直接出産育児一時金を支払うので、窓口での支払いが差額分だけになります。
受取代理制度
医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る受取代理制度という制度もあります。
出産育児貸付制度
また、直接支払制度や受取代理制度を利用せず、出産育児一時金の8割までを無利子で貸付けてもらえる出産育児貸付制度もあります。
貸付金はその後に支給される一時金が返済に充てられます。
会社員ママ向け|健康保険の「出産手当金」
会社員等の女性が産休を取った場合、多くの企業ではノーワークノーペイの原則により、休んでいる期間給与が出ません。
給与が出ない時は、健康保険の出産手当金という制度があります。
支給される期間
出産手当金は、出産の日以前42日から出産の翌日以後56日までの範囲で会社を休んだ期間を対象に支給されます。
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出産の日の42日前(多胎妊娠は98日)~出産日の翌日以後56日目まで
- 最大で98日分支給
この期間で、会社を休んで給与が出ていない日が対象です。
金額の目安
出産手当金の額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均を30日で割った額の2/3です。
例
標準報酬月額が30万円(29万~31万円の人)であれば、30万円÷30日=1万円 1万円 ÷ 2/3 ≒ 6,667円 6,667円 × 98日 = 653,366円
標準報酬月額が30万円の人なら、98日休めば約65万円を出産手当金として受けられます。
ちなみに、この制度は国民健康保険法では任意給付なので原則としてありません。
仕事を続ける人向け|雇用保険の「育児休業給付金」

被保険者が1歳未満の子のために育児休業を取得した場合、育児休業給付金を受け取れることがあります。
支給額のイメージ
育児休業給付金は、休業開始時賃金日額を基礎として算定し、180日までは休業開始時賃金日額の67%、180日経過後は50%が支給されます(1歳誕生日前日まで)。
休業開始時賃金日額というのは、育児休業開始前の6か月間の賃金(臨時の賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金除きます)を180日で割った金額です。
また、支給額には上限があるため、対象期間に賃金の支払いがある時は調整されることがあります。
例
休業開始時賃金日額が10,000円の人が育児休業で10か月休んだら 1万円×67%×180日 + 1万円×50%× 120日=約181万円
受け取るための主な条件
育児休業給付金では、育児休業を開始した日から起算した1か月ごとの期間を「支給単位期間」といい、就業している日が10日以下であることが必要です。
支給対象期間に賃金の支払いがある時は、その賃金の額が休業開始時賃金日額に支給日数をかけた額に対し、13%を超えると支給額が減額されます。80%以上だと給付金が支給されません。
手続きは原則として事業主を経由して行いますが、やむを得ない理由があって、事業主を経由するのが困難な場合や希望する場合は本人が提出することも可能です。
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雇用保険の被保険者であること
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子どもが1歳到達前日(一定条件で1歳6か月、2歳まで延長)まで育休を取得すること
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育休中の就業日数・賃金が一定基準以下であること
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など
妊婦健診の補助と保険料の免除も見逃せない

妊婦健診費用助成(自治体の補助)
自治体によって異なりますが、横浜市だと妊婦検診費用助成として母子健康手帳と共に14枚の補助券が渡されます。
これにより妊婦検診と検診に伴う自費の検査費用が補助されます。ただし、検査のみ、保険適用の検査は対象外とされています。
国民年金第1号の産前産後免除
給付というより社会保険料の免除ですが、国民年金第1号被保険者を対象に出産日の前月から4か月間の国民年金保険料が免除される制度もあります。
会社員等は、産休・育休中の厚生年金保険料や健康保険料が免除されます。
この制度を利用すれば、子供の1歳(最長2歳)の誕生日まで保険料が免除されるうえ、将来受け取る年金も減額されません。
産後パパ育休など制度のアップデートもチェック
令和4年の育児・介護休業法改正で、次のような制度が整備されています。厚生労働省+2厚生労働省+2
産後パパ育休
- 子の出生後8週間以内に、最大4週間まで取得可能(2回に分割可)
- 育児休業の分割取得
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企業に対する、育休制度の周知・個別説明の義務化
加えて、2024年以降は「産後パパ育休中の給付水準引き上げ」などのニュースも出ており、給付率や上限額は定期的に見直されます。
具体的には、厚生労働省・日本年金機構・自治体が情報を発信しています。
まとめ|出産の自己負担を減らすには、制度を知っておくこと
出産に関する公的な支援制度をざっと整理すると、次のようになります。
出産費用そのものを軽くする
- 出産育児一時金(1児につき原則50万円)
- 自治体の妊婦健診助成・独自の出産助成
収入減をカバーする
- 出産手当金(会社員ママの産休中の所得補填)
- 育児休業給付金(育休中の収入の一部をカバー)
将来の年金・保険料負担を軽くする
- 国民年金第1号の産前産後免除
- 会社員・公務員の産前産後休業・育児休業中の社会保険料免除
どの制度も申請しなければ受け取れない(申請主義)ものが基本なので、「知らなかった」で数十万円単位の損になるケースもあります。
将来出産を考えている家庭ほど、以下の3つを、早めに一度チェックしておくと安心です。
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自分(と配偶者)が加入している公的保険の種類
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勤務先の育休制度
- 住んでる自治体の支援

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