これからインフレ時代になれば、ますます資産運用が重要になってきます。
2021年頃から物価高が騒がれ始めましたが、資産運用は何もなくても取り組んでいて損はありません。
たとえば、2019年に1,500万円を銀行預金、日経平均、TOPIX、S&P500、NASDAQ100に置いていたら今いくらになったでしょうか。
常日頃から資産形成に取り組む方が有利な理由と、インフレ時代に資産が増える理由、途中で売らずに持ち続けることの難しさを、1級ファイナンシャル・プランニング技能士が実際の数字で検証します。
【この記事から分かること】
・2019年の1,500万円が、預け先によって今いくらになったか
・S&P500で資産が約4倍になった2つの理由
・この7年間に何度あった「売りたくなる局面」とその時の評価額
・結果だけを見て判断するときの落とし穴
・インデックス投資を土台にした、次の資産づくりの考え方
目次[閉じる]
2019年の1,500万円、預け先によって今いくらになったか
2019年1月末に手元に1,500万円があり、それをそのまま放置していたとします。
預け先による現在の評価額は次のとおりです。
| 預け先 | 2026年9月末の評価額 | 倍率 |
| 銀行預金(普通預金) | 約1,507万円 | 1.0倍 |
| TOPIX | 約3,940万円 | 2.6倍 |
| 日経平均 | 約4,760万円 | 3.2倍 |
| S&P500(円換算) | 約6,160万円 | 4.1倍 |
| NASDAQ100(円換算) | 約9,510万円 | 6.3倍 |
※2019年1月末の終値で投資し、2026年9月28日の終値で評価。指数の値動きのみで、配当・信託報酬・税金は含みません。
※米国株は、ドル円レート108.9円(2019年1月末)と157.5円(2026年9月末)で円換算しています。
配当を再投資していれば、評価額はさらに1割ほど高くなります。
例えばS&P500は約6,900万円、日経平均は約5,500万円(いずれも概算)です。
一方、銀行預金は約7年間で利息が7万円ほど(税引き前)付いただけでした。
しかもこの間に物価は1割以上上がっているため、実質的な価値(買えるモノの量)で見ると、1,300万円台まで目減りした計算になります。
年率に直すとどのくらいか

約7年8ヶ月でのS&P500(円換算)の上昇を年率に直すと、約20%になります。
米国株の長期的な平均リターンは年7〜10%程度といわれています。よって、この期間は歴史的に見てもかなり恵まれた期間でした。
なぜここまで資産が増えたのか:2つの追い風
S&P500を円で持っていた場合の4.1倍という結果は、次の2つの掛け算で説明できます。
4.1倍 = S&P500自体の上昇(2.8倍)× 円安(1.45倍)
追い風1:米国の大企業、特にハイテク企業の業績拡大
S&P500はドル建てでも約2.8倍になりました。
その原動力は、アップル、マイクロソフト、エヌビディアなど米国の巨大IT企業の業績の伸びです。
クラウドやスマートフォンの普及に続き、2023年以降は生成AIの需要が一気に拡大しました。
半導体メーカーやデータセンター関連企業の利益が大きく伸び、指数全体を押し上げています。
NASDAQ100が6倍を超えたのは、こうしたハイテク企業の比率がS&P500よりも高いためです。
ただし、上昇が大きい指数ほど、下落する局面での下げ幅も大きくなります。
追い風2:円安による為替の上乗せ
2019年1月末に108.9円だったドル円は、2026年9月末には157.5円前後まで円安が進みました。
ドルの価値が円に対して約1.45倍になったため、ドル建ての資産を円に換算すると、株価の上昇に加えて為替の分だけ評価額が膨らみます。
円安の主な背景は、日本と米国の金利差の拡大です。
米国がインフレ対策で大幅に利上げしたのに対し、日本は長く低金利政策を続けました。
日本も2024年以降は段階的に利上げを進めていますが、金利差はなお大きいままです。
日本株も3倍になっていた
「米国株が一番良かった」という話になりがちですが、日経平均も同じ期間に約3.2倍になっています。
株価指数そのものの上昇率では、日経平均(3.17倍)がS&P500(2.84倍)を上回っていました。
円で見たときにS&P500が勝ったのは、為替の上乗せがあったからです。
逆に言えば、今後円高に振れた場合は、米国株を円で見た評価額は為替の分だけ目減りします。
ドル円は2026年9月下旬時点で157円台と歴史的な円安水準にあり、米国政府からも円安是正を求める声が出ています。
為替の追い風が今後も続くとは限らない点は、頭に入れておく必要があります。
年間に何度もあった売りたくなる局面

結果だけを見ると「放置しておけばよかった」と思えます。
しかし、この7年間は決して平坦な道のりではありませんでした。
S&P500(円換算)に1,500万円を投資していた場合の、主な下落局面の評価額は次のとおりです。
| 時期 | 出来事 | 直前の高値 | 底値 | 下落率 |
| 2020年2〜3月 | コロナショック | 約1,920万円 | 約1,260万円 | 約−34% |
| 2024年7〜8月 | 急激な円高と米国株の調整 | 約4,570万円 | 約3,810万円 | 約−17% |
| 2025年2〜4月 | 米国の関税政策による急落 | 約4,750万円 | 約3,730万円 | 約−21% |
※月末ではなく、各局面の高値と安値付近の指数と為替レートを使った概算です。
コロナショックの底では、評価額が元本の1,500万円を約240万円下回っていました。
わずか1ヶ月ほどで、660万円近くが消えた計算です。
2025年の急落では、ピークから約1,000万円が減っています。
なお、2022年は米国の急激な利上げで、S&P500がドル建てで約25%下落しました。
ただ、同時に大幅な円安が進んだため、円換算の評価額はそれほど下がっていません。
為替は、上昇時だけでなく下落時の値動きにも影響します。
なぜ途中で売ってしまう人が多いのか
行動経済学では、人は同じ金額でも「得をした喜び」より「損をした痛み」を2倍以上強く感じるとされています。
これを「損失回避」といいます。評価額が短期間で数百万円単位で減ると、「これ以上減る前に売っておこう」という気持ちが働きやすくなります。
特に危ないのは、次の2つの行動です。
狼狽売り:暴落時に怖くなって売却し、損失を確定させてしまう。コロナショックの底で売っていれば、手元に残ったのは約1,260万円でした。
高値掴み:株価が上がり続けているのを見て焦って買い、直後の調整で損失を抱える。売った後に株価が戻っているのを見て、高い値段で買い直すと、狼狽売りと高値掴みの両方を経験することになります。
もう一つ見落とせないのが「利益確定の誘惑」です。評価額が2倍、3倍になると、売って利益を確定したくなります。
売却すれば約20%の税金がかかり、再投資する金額もその分減ってしまいます。
例えば現時点でS&P500をすべて売却すると、税金は約950万円です(特定口座の場合)。
持ち続けられた人に共通すること
長期で持ち続けられた人には、次のような共通点があります。
- 生活費や近いうちに使う予定のお金は、株式とは別に確保していた
- 評価額を毎日確認せず、値動きに一喜一憂しなかった
- 下落しても耐えられる金額しか投資していなかった
- 投資を始めた理由と目的(老後資金など)がはっきりしていた
裏を返せば、全財産を株式に入れていた人や、数年以内に使う予定のお金まで投資していた人は、下落局面で売らざるを得なかった可能性があります。
この結果をどう受け止めるべきか

「後から振り返ると正解に見える」ことに注意
この記事の数字は、2019年から今日までという特定の期間を切り取ったものです。
この期間は、米国株の上昇と円安が同時に進んだ、投資家にとって非常に恵まれた時期でした。
過去の暴落を振り返ると、元の高値に戻るまで5年以上かかった例も珍しくありません。
例えば2000年や2007年に投資していた場合、7年後の結果はまったく違うものになっていました(詳しくは「「暴落しても半年で戻る」は本当?過去の株価暴落の回復年数と備えるべきこと」の記事で解説しています)。
「これからの7年も同じように増える」と考えるのは危険です。
一括投資と積立投資
今回は1,500万円を一括で投資した場合を検証しました。
ただし、実際に1,500万円を一度に投資するのは、心理的にも大きな決断です。
投資のタイミングを分散したい場合は、毎月一定額を積み立てる方法もあります。
2024年に始まった新NISAでは、年間360万円、生涯で1,800万円まで非課税で投資できます。
1,500万円であれば、最短5年で非課税枠に移していくことも可能です。
まとめ
今回の検証から分かることは、次のとおりです。
- 預金のままでは、物価上昇によって実質的な価値が目減りする
- 株式、特に米国株は、企業の成長と円安の追い風を受けて大きく増えた
- ただし、途中には資産が数百万円から1,000万円単位で減る局面が何度もあった
- 結果を左右したのは、銘柄選びよりも「持ち続けられたかどうか」だった
資産形成で結果を出しやすいのは、低コストのインデックスファンドを長期で持ち続けることです。
個別の銘柄を選ぶ手間がかからず、特別な知識がなくても市場全体の成長を受け取れます。1本で全世界に分散できる全世界株式のファンドを選べば、米国一国への集中や為替の偏りも和らげられます。
土台となるインデックス投資が育ってきたら、次の選択肢として、次のようなものを検討する方法もあります。
・成長企業への個別株投資:業績の伸びが期待できる企業を、自分で分析して選ぶ
・不動産投資:築年数が経った物件を買い取り、リフォームなどで価値を高めて貸し出したり売却したりする
株式とは異なる値動きをする資産を組み合わせることで、資産全体の値動きを分散する効果も期待できます。
ただし、どちらもインデックス投資と比べて手間とリスクは段違いに大きくなります。特に不動産は、物件の目利き、資金計画、修繕や入居者の管理など、専門的な判断が欠かせません。
「インデックス投資で増えたから次も増えるはず」と焦るのではなく、自分の資産全体とライフプランの中で、何をどのくらいの割合で持つかを考えることが大切です。
※本記事は過去のデータに基づく検証であり、将来の運用成果を保証するものではありません。また、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資の最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。

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