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資産はあるのに老後のお金がない|住宅ローンでカツカツな家計の将来のバランスシート

資産はあるのに老後のお金がない|住宅ローンでカツカツな家計の将来のバランスシート

住宅ローンと資産形成を両立させるには、この「購入した後のバランスシート」を見ておくことが欠かせません。

住宅ローンで家計がカツカツのまま老後を迎えると、資産の大半が自宅になり、「資産はあるのに使えるお金がない」状態になります。

65歳のバランスシートの試算、老後もかかる住居費、家を現金にする難しさ、偏りを防ぐ方法を、1級ファイナンシャル・プランニング技能士・宅建士・マンション管理士が解説します。

 

【この記事から分かること】
・「資産はあるのにお金がない」老後とは、どういう状態か
・住宅ローンでカツカツな家計の、65歳時点のバランスシート
・老後も自宅にかかり続ける費用と、金融資産が尽きるまでの年数
・自宅を現金にするのが簡単ではない理由
・資産が住宅に偏る原因と、それを防ぐ方法

 

「資産はあるのにお金がない」老後とは

65歳で定年を迎えたとき、次のような家計を想像してみてください。

資産 負債・純資産
自宅マンション(時価)2,860万円 住宅ローン残高 776万円
預貯金・投資 1,432万円  
資産の合計 4,292万円 純資産 3,516万円

純資産は3,500万円あります。数字だけを見れば、老後の心配はなさそうです。

 

しかし、資産の67%は自宅です。自宅は住むためのもので、生活費や医療費の支払いには使えません。

住宅ローンの残りを返すと、自由に使えるお金は約660万円しか残りません。

 

これが、日本人に多いと言われる資産はあるのにお金がない老後の状態です。

住宅ローンで家計がカツカツなまま、積み立てができずに定年を迎えた家庭で起こりやすい状態です。

 

家計にもバランスシートがある

会社の決算書には、1年間の収入と支出を表す損益計算書と、ある時点の資産と負債を表すバランスシート(貸借対照表)がありますが、これは家計も同じです。

 

家計簿は損益計算書にあたり、毎月の収入と支出を管理します。

家計のバランスシートは、「今、何をいくら持っていて、借金がいくらあるか」を表します。

 

住宅購入の相談では、「毎月のローンを返せるか」という家計簿の視点で考えるのが一般的です。

しかし、老後に困るかどうかを決めるのは、バランスシートの中身です。

特に資産のうちどれだけが自宅で、どれだけが自由に使えるお金なのか、という割合が重要になります。

 

将来のバランスシートを比べる

35歳で5,000万円の新築マンションを買ったある家庭の、65歳までのバランスシートを試算しました。

 

試算の前提

項目 前提
購入前の金融資産 1,500万円(負債なし)
物件 5,000万円の新築マンション。諸費用350万円は現金で支払い
住宅ローン 金利1%、35年返済
物件の時価 購入直後に1割下がり、その後は年1.5%ずつ下落
毎月のお金の使い方 ローン返済と積立の合計が月16万円。積立は年3%で運用

 

比べたのは次の3つの家庭です。

・頭金1,000万円で購入し、残りを毎月積み立てた家庭
・頭金300万円で購入し、残りを毎月積み立てた家庭
・頭金300万円で購入したが、家具や教育費で手元資金が350万円まで減り、積立が月1万円にとどまった家庭(住宅ローンでカツカツな家庭)

 

資産に占める自宅の割合

時点 頭金1,000万円 頭金300万円 カツカツな家庭
購入直後 97% 84% 93%
10年後 82% 72% 86%
20年後 65% 58% 78%
30年後(65歳) 48% 44% 67%

 

65歳のバランスシートはどうなるか

  頭金1,000万円 頭金300万円 カツカツな家庭
自宅(時価) 2,860万円 2,860万円 2,860万円
金融資産 3,108万円 3,656万円 1,432万円
住宅ローン残高 661万円 776万円 776万円
ローン完済後の金融資産 約2,450万円 約2,880万円 約660万円
純資産 約5,310万円 約5,740万円 約3,520万円

※35年返済のため、65歳の時点ではローンが残っています。

「ローン完済後の金融資産」は、残高を一括で返した場合の金額です。

積み立てを続けた家庭では、65歳の時点で自宅の割合は5割を下回り、ローンを返しても2,000万円以上の金融資産が残ります。

一方、カツカツな家庭では、自宅の割合が7割近くのままです。純資産は3,500万円ありますが、ローンを返すと手元に残るのは約660万円です。

 

家は、持っているだけでお金がかかる

ローンを払い終えても、自宅にかかる費用はなくなりません。

マンションの場合、老後も次の費用がかかり続けます。

費用 目安(月額)
管理費・修繕積立金 3万〜4万円
固定資産税 約1万円
部屋の中の修繕費(給湯器、水回りなど) 約1万円
合計 約5万〜6万円

※修繕積立金は、築年数が進むほど上がる傾向があります。

 

月5万円としても、年間60万円です。カツカツな家庭の約660万円は、自宅の維持費だけで約11年、76歳ごろに尽きる計算になります。

実際には、年金で足りない生活費や、医療費、介護費もここから払うことになるので、さらに早く底をつきます。

自宅は資産として残っていても、毎月お金が出ていく資産です。自由に使えるお金が少ないと、老後の家計を圧迫します。

 

自宅を現金にするのは簡単ではない

「お金が足りなくなったら、家を売ればいい」と考える方もいるでしょう。

しかし、老後に自宅を現金にするのは、思っているほど簡単ではありません。

 

売るまでに時間と費用がかかる

自宅を売るには、買い手を探す必要があり、通常は3〜6か月ほどかかります。

2,860万円で売る場合、仲介手数料だけで約100万円です。急にお金が必要になっても、家の一部だけを売ることはできません。

 

売った後の住まいが見つかりにくい

自宅を売れば、次の住まいが必要です。

高齢になると、賃貸住宅の入居審査が厳しくなります。

65歳以上で部屋探しをした人のうち、約3人に1人が年齢を理由に断られた経験があるという調査もあります。

 

マンションの価値は、管理状態で変わる

マンションの売却価格は、建物の管理状態に大きく左右されます。

修繕積立金が不足していたり、管理組合が機能していなかったりすると、思った価格で売れないことがあります。

 

リースバックやリバースモーゲージにも限界がある

自宅を売ってそのまま住み続ける「リースバック」や、自宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」という方法もあります。

ただし、リースバックは売却価格が相場より低くなりやすく、その後は家賃がかかります。

リバースモーゲージは、利用できる物件や地域が限られます。

どちらも、最後の手段と考えておくのが安全です。

 

なぜ老後のバランスシートは住宅に偏るのか

購入した瞬間に、資産の大半が自宅になる

5,000万円の物件を頭金1,000万円で買った場合、購入直後のバランスシートは次のようになります。

  購入前 購入直後
金融資産 1,500万円 150万円
自宅(時価) 0円 4,500万円
住宅ローン 0円 4,000万円
純資産 1,500万円 650万円

購入した瞬間に、資産の97%が自宅になります。

しかも、諸費用の350万円と、新築の価格が中古相場に下がる分の500万円で、純資産は850万円減っています。

 

頭金は資産を増やさない。現金を自宅に置き換えるだけ

頭金を300万円にした場合も、購入直後の純資産は同じ650万円です。頭金を多く入れても資産は増えず、手元の現金が自宅に置き換わるだけです。

頭金を入れるほど、バランスシートは自宅に偏ります。

 

購入後に積み立てが止まる

購入直後に自宅の割合が高いのは、どの家庭も同じです。老後の差を生むのは、その後の30年間に積み立てを続けられたかどうかです。

ローンの返済に加えて、教育費、管理費や修繕積立金の値上げ、部屋の中の修繕費が重なると、積み立てに回すお金がなくなります。

その結果、自宅の割合が下がらないまま、老後を迎えることになります。

 

老後のバランスシートを偏らせない4つの方法

1. 借入額を「積み立てを続けられる返済額」で決める

住宅ローンの借入額は、返せる金額ではなく、返しながら積み立ても続けられる金額で決めるのがポイントです。

購入前の資金計画で、毎月いくら積み立てに回せるかまで確認しておくことが大切です。

 

2. 頭金を入れすぎない

手元の現金を使い切ると、購入直後から積み立ての元手がなくなります。

最低でも、生活費の半年〜1年分と、数年以内に使う予定のお金は、手元に残しておくと安心です。

 

3. 年に1回、家計のバランスシートを作る

年に1回、資産と負債を書き出して、自宅の割合を確認しましょう。

項目 金額
預貯金  
投資信託・株式  
その他の金融資産  
自宅(時価)  
資産の合計  
住宅ローン残高  
その他の借入  
純資産(資産の合計 − 負債の合計)  
自宅の割合(自宅 ÷ 資産の合計)  

自宅の時価は、国土交通省が指定する不動産流通機構のレインズ・マーケット・インフォメーションで、近くの物件の成約価格を調べると目安が分かります。

投資信託や現金の積み上げで自宅の割合が年々下がっていれば、順調です。下がらない場合は、積み立ての額や支出を見直すきっかけになります。

 

4. 定年までに「自由に使えるお金」の目標を決める

定年の時点で、ローンを返した後にいくらの金融資産を残したいかを決めておきましょう。目安として、老後の生活費の不足分に加えて、自宅の維持費(マンションなら月5万円程度)を払い続けられる金額が必要です。

今回の試算では、積み立てを続けた家庭は、65歳の時点で自宅と金融資産がほぼ同じ割合になりました。

「定年までに、金融資産を自宅の時価と同じくらいにする」というのも、分かりやすい目標の一つです。

 

まとめ

・住宅ローンでカツカツなまま老後を迎えると、資産の大半が自宅になり、「資産はあるのにお金がない」状態になる
・試算では、カツカツな家庭は65歳でも資産の約7割が自宅。ローンを返すと、手元に残るのは約660万円
・自宅は、老後も管理費や修繕積立金、固定資産税などで月5万円程度かかる。手元の約660万円は、それだけで約11年で尽きる
・自宅を売って現金にするには、時間と費用がかかり、高齢になると次の住まいも見つかりにくい
・老後の差を生むのは、購入後30年間の積み立て。借入額は「返しながら積み立ても続けられる金額」で決める

 

家を買うときは、毎月返せるかだけでなく、引退時のバランスシートがどうなっているかまで考えておくことです。

 

 

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※本記事の試算は、一定の前提条件に基づくモデルケースです。物件の時価、金利、運用成果、維持費は将来変動し、結果を保証するものではありません。

 

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