修繕積立金は段階的でもいきなり2倍に|少しずつ上がるという誤解と、値上げの年を見抜く方法

不動産

「段階増額積立方式だから、修繕積立金は少しずつ上がる」と思っていませんか。

マンションを買う時に「今の修繕積立金は月6,000円で安いです。将来上がるとしてもマイルドに上がるので安心ですよ」と言われたかもしれません。

実は、こういったことを信じて買った人の中には、毎月の住居費が突然2万、3万跳ね上がって生活に苦しんでいます。

思ったより安いと思って買ったものの、実際には、据え置かれた後、ある年に一気に2倍になることも珍しくありません。

誤解が生まれる理由、値上げが来やすい時期、長期修繕計画書で値上げの年を見抜く手順を、マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士が解説します。

 

【この記事から分かること】

  • 「段階増額=少しずつ上がる」が誤解である理由
  • 修繕積立金が、何年も据え置かれた後にいきなり2倍になる仕組み
  • 2倍の値上げが来やすい4つの時期
  • 長期修繕計画書から、値上げの年と上げ幅を見抜く手順
  • 12〜14年目に家計の変化が重なることと備え方

 

「段階増額だから、少しずつ上がる」は誤解

マンションの購入時、修繕積立金について「段階増額積立方式なので、今後段階的に見直す予定です」と説明されることがあります。

この「段階的」という言葉を聞いて、多くの人は、毎年少しずつ上がっていく様子を思い浮かべます。物価と同じように、気づかないくらいのペースで、なだらかに上がっていく……そんなイメージです。

しかし、実際の上がり方は違います。

年目 多くの人のイメージ(毎年少しずつ) 実際によくある計画
1年目 1.20万円 1.2万円
5年目 1.42万円 1.2万円(据え置き)
10年目 1.70万円 1.2万円(据え置き)
11年目 1.75万円 1.2万円(据え置き)
12年目 1.81万円 2.4万円(いきなり2倍)
20年目 2.25万円 2.4万円
30年目 2.80万円 2.8万円

※70㎡の住戸の例。どちらも当初1.2万円、30年目に2.8万円になる計画です。

 

修繕積立金の積立方式は、スタートとゴールは同じでも、途中の上がり方が違います。

イメージどおりなら、12年目の値上げは月約550円です。ところが実際の計画では、11年間まったく上がらなかった積立金が、12年目のある月から一気に月1.2万円上がります。

年間では14.4万円の負担増です。

一時金として徴収されることもあります。

 

段階は坂道ではなく、階段

段階増額積立方式の段階は、値上げを何回かに分けるという意味です。

坂道のように少しずつ上がるのではなく、階段のように、ある年にまとめて上がります。

しかも、階段の1段の高さは決まっていません。5年や10年ごとに改定する計画が一般的で、改定の間隔が長いほど、新築時の金額が低いほど、1段の高さは大きくなります。

 

国土交通省の調査では、段階増額積立方式の計画は、当初から最終額までに平均で約3.6倍に上がる計画になっていました。

この上昇が、数回の値上げに集中して起こります。1回で2倍前後になる段があるのは、珍しいことではありません。

 

なぜ誤解が生まれるのか

「少しずつ上がる」という誤解が生まれる理由は、主に3つあります。

  • 段階的という言葉そのものが、なだらかな上昇を連想させる
  • 販売時や重要事項説明では、現在の金額と「改定の予定あり」程度しか説明されないことが多い
  • 値上げの時期と金額が書かれた長期修繕計画書まで、目を通す買主がいない

 

値上げの予定は、多くの場合、長期修繕計画書にすでに書かれています。知らされていないのではなく、確認されていないのがほとんどです。

 

いきなり増える4つの時期

修繕積立金の大きな値上げは、いつ起きてもおかしくないわけではありません。

修繕計画の見直しに伴って増えやすい時期があるからです。

時期 起きやすい理由
5年目・10年目 新築時に低く抑えた積立金を、初めて本来の水準に近づける
12〜15年目 1回目の大規模修繕の前後。工事費の見積もりが出て、不足が分かる
値上げ否決の数年後 先送りした分を、まとめて取り戻す
25〜35年目 2回目の大規模修繕。給排水管やエレベーターなど、高額な設備の更新が重なる

長期修繕計画は、5年ごとに見直すことが推奨されています。

見直しの年は、工事費を最新の水準に合わせるため、大きな値上げが決まりやすいタイミングです。

 

なぜ少しずつではなく、いきなり上がるのか

新築時の金額が、そもそも低すぎる

いきなり2倍になるかどうかは、新築時の金額でほぼ決まります。

目安になるのが、専有面積1㎡あたりの月額です。

国土交通省のガイドラインでは、計画期間全体の平均額の目安を、建物の規模に応じて1㎡あたり月252〜338円としています(20階未満の建物で、延床面積5,000㎡未満なら335円)。

横浜市が公表している、管理状態の評価が高いマンションの平均は、おおむね月340〜410円程度です。

 

先ほどの例の1.2万円は、70㎡の住戸なら1㎡あたり約171円です。これは目安の半分程度しかありません。

今の積立金が目安の半分なら、いずれ2倍近くに上がります。この見方は、購入前の簡単な目安として使えます。

 

値上げの決議は、何度もやりたくない

修繕積立金の値上げは、管理組合の総会で決めます。値上げ案を出すたびに、説明会を開き、反対意見に対応し、議決を取る必要があります。

そのため、管理組合は毎年少しずつ上げるより、何年かに1回、まとめて上げる方法を選びがちです。

合意を取る手間とストレスを、1回で済ませたいからです。これが、階段の1段を高くする原因になっています。

 

先送りした分は次の値上げに上乗せされる

値上げ案が総会で否決されても、必要な修繕費は減りません。

時期 計画 実際
1〜5年目 月1万円 月1万円
6〜10年目 月1.5万円 月1万円(値上げが否決)
11年目以降 月2万円 月2.25万円

6〜10年目の値上げが否決されると、5年間で1戸あたり30万円が不足する計算です。

11年目からの10年間でこれを取り戻すには、計画の2万円に月2,500円を上乗せしなければなりません。

積立金は、月1万円から2.25万円へ、一度に2.25倍に上がります。階段を1段飛ばした分、次の1段が高くなるのです。

 

見直しで、初めて不足が分かる

工事費の高騰や、計画に入っていなかった工事(給排水管の更新、機械式駐車場の入れ替えなど)は、計画を見直したときに初めて表に出ます。

不足が大きいほど、値上げ幅も大きくなります。

 

まとめ

  • 「段階増額」の「段階」は、坂道ではなく階段。少しずつではなく、何年も据え置かれた後、ある年にいきなり上がる
  • いきなり2倍になりやすいのは、5年目・10年目、12〜15年目、値上げ否決の数年後、25〜35年目
  • 新築時の積立金が1㎡あたりの目安の半分程度なら、いずれ2倍近くに上がる可能性が高い
  • 値上げの年は、長期修繕計画書の収入欄で、前年比が1.5倍以上の年を探せば分かる
  • 12〜14年目は、修繕積立金の値上げ、住宅ローン控除の終了、固定金利期間の終了、教育費が重なりやすい
  • 資金計画を計画全体の平均額で組み、差額を貯めておけば、2倍になっても家計は変わらない

 

「段階的だから大丈夫」と思い込まず、値上げを想定したシミュレーションが大切です。

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