「国民年金=老後にもらうもの」というイメージをお持ちの方は多いと思います。
しかし、国民年金の給付には老齢基礎年金以外にも複数の給付があります。
病気やケガで障害状態になった時の障害基礎年金、生計維持者が亡くなった時の遺族基礎年金、自営業者向けの付加年金など、ライフプランを考える上で重要な保障が含まれています。
これらの給付は、ご自身が保険料を納付している間に万が一があった時の備えとして機能します。
民間の生命保険を検討する前に、公的な保障の範囲を知っておくだけでも、無駄のない保険加入につながります。
この記事では、国民年金の老齢以外の給付について、要点を整理して解説します。
この記事で分かること
- 国民年金の給付6種類の概要
- 障害基礎年金・遺族基礎年金の仕組みと金額(令和8年度)
- 第1号被保険者だけが受けられる独自給付(付加年金・寡婦年金・死亡一時金)
- 民間保険を考える前に確認したい公的保障の範囲
目次[閉じる]
国民年金で支給される種類

国民年金法に規定されている主な給付は、以下の6種類です。
| 給付の種類 | 対象 | どんな時 |
| 老齢基礎年金 | 全被保険者 | 65歳以降の老齢時 |
| 障害基礎年金 | 全被保険者 | 障害状態になった時 |
| 遺族基礎年金 | 全被保険者 | 生計維持者が亡くなった時 |
| 付加年金 | 第1号被保険者のみ | 老齢時(老齢基礎年金に上乗せ) |
| 寡婦年金 | 第1号被保険者の妻 | 夫の死亡時(60〜65歳の有期) |
| 死亡一時金 | 第1号被保険者の遺族 | 遺族基礎年金が出ない場合 |
老齢・障害・遺族の3つは、被保険者区分にかかわらず受給対象となります。
一方、付加年金・寡婦年金・死亡一時金は第1号被保険者(自営業者等)に限定された独自の給付です。
国民年金の被保険者区分の詳細については、以下の記事をご覧ください。
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老齢基礎年金については別記事で詳しく解説していますので、本記事では老齢以外の5つの給付を中心に取り上げます。
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障害基礎年金|病気・ケガで障害状態になった時の保障

障害基礎年金は、病気やケガで障害等級1級または2級に該当する障害状態になった時に支給される年金です。
「年金=高齢者がもらうもの」というイメージがありますが、障害基礎年金は現役世代でも受給対象になります。
受給要件
- 障害認定日(原則、初診日から1年6か月経過した日)に障害等級1級または2級に該当
- 保険料納付要件を満たすこと
保険料納付要件は、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上
- (特例)初診日が令和8年4月1日前にある場合、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない
支給額(令和8年度)
| 等級 | 年金額(月額換算) |
|---|---|
| 1級 | 約88,300円 |
| 2級 | 約70,608円 |
(注)令和8年度の老齢基礎年金満額は月額70,608円。1級は満額の1.25倍。
子の加算
生計維持関係にある18歳到達年度末までの子(障害状態の場合は20歳まで)がいる場合、子の加算が付きます。
| 子の人数 | 加算額(令和8年度・月額換算) |
|---|---|
| 1人目・2人目 | それぞれ約20,300円 |
| 3人目以降 | それぞれ約6,800円 |
重要なポイント
- 若い世代でも受給対象となる(20歳前傷病による障害基礎年金もあり)
- 保険料の未納期間が長いと受給できない場合がある
- 申請が必要で、自動的には支給されない
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遺族基礎年金|生計維持者が亡くなった時の保障

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者または被保険者であった人が亡くなった時に、その人によって生計を維持されていた配偶者(子のある配偶者)または子に支給される年金です。
受給対象
- 子のある配偶者(再婚していない・収入要件等あり)
- 子(18歳到達年度末までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の子)
「子のある」が要件のため、子のいない配偶者には支給されません(寡婦年金・死亡一時金で一部補完される場合あり・後述)。
受給要件
被保険者が亡くなった場合、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 死亡日の前日において、死亡日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上
- (特例)死亡日が令和8年4月1日前にある場合、死亡日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない
支給額(令和8年度)
子のある配偶者が受給する場合
- 基本額(配偶者分):月額約70,608円
- 子の加算:1人目・2人目はそれぞれ約20,300円、3人目以降は約6,800円(月額換算)
子のみが受給する場合
- 基本額:月額約70,608円
- 2人目以降の子の加算が付く
重要なポイント
- 子の養育費的な性格を持つ
- 子が年齢要件を満たさなくなると、受給は打ち切られる
- 「子のいない配偶者」は受給対象外(老後の備えは別途必要ということ)
付加年金|自営業者の老齢年金の上乗せ

付加年金は、第1号被保険者(自営業者・フリーランス等)が任意で利用できる、老齢基礎年金への上乗せ給付です。
仕組み
- 国民年金保険料に上乗せして月額400円の付加保険料を納付
- 老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」が上乗せされる
例
10年(120月)付加保険料を納付した場合
- 総納付額:400円 × 120月 = 48,000円
- 年金への上乗せ額(年額):200円 × 120月 = 24,000円
老齢基礎年金とともに毎年支給されるため、名目計算上は2年で納付額に相当する給付を受け取る形になります。
注意点
- 物価上昇には弱い(支給額は固定で、物価スライドの対象外)
- 国民年金基金との併用はできない(どちらかを選択)
- 第2号被保険者・第3号被保険者は加入できない
第1号被保険者の選択肢
第1号被保険者(自営業者等)は、老齢年金の上乗せの選択肢として以下があります。
- 付加年金:少額・シンプル
- 国民年金基金:本格的な上乗せ年金
- iDeCo:税制優遇あり・自分で運用
それぞれに特徴があり、家計や所得状況によって合う選択肢は変わります。
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寡婦年金|第1号被保険者の妻に対する有期年金

寡婦年金は、第1号被保険者として一定期間保険料を納付した夫が亡くなった場合に、その妻に対して支給される有期の年金です。
受給要件
- 死亡した夫が、第1号被保険者として保険料納付済期間と免除期間の合計が10年以上
- 夫との婚姻関係が10年以上
- 妻が65歳未満
- 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給していなかった
支給期間
妻が60歳から65歳になるまでの間(最大5年間)
支給額
夫の第1号被保険者期間に基づいて計算した老齢基礎年金額の4分の3相当額
注意点
- 妻に対しての年金(夫が残された場合は対象外)
- 妻が65歳になると老齢基礎年金が始まるため、寡婦年金は終了
- 遺族基礎年金との両方は同時受給できない場合がある(選択)
- 死亡一時金との選択(後述)
寡婦年金の意義
第1号被保険者(自営業者等)は、厚生年金の遺族厚生年金が出ません。
そのため、夫が亡くなった場合の妻の保障が、会社員の家庭と比べて手薄になりがちです。
寡婦年金は、第1号被保険者の妻の保障を一定程度補う仕組みとして位置づけられています。
死亡一時金|遺族基礎年金を受給できない時の補完

死亡一時金は、第1号被保険者として一定期間保険料を納付した人が亡くなった場合で、遺族基礎年金を受給できる遺族がいない時に、遺族に対して一時金として支給されるものです。
受給要件
- 死亡した人が、第1号被保険者として保険料納付済期間が3年(36月)以上
- 遺族基礎年金を受給できる遺族がいない
- 死亡した人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受給したことがない
受給対象者の範囲
死亡した人と生計を同じくしていた以下の人(優先順位あり)
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
支給額
保険料を納付した月数に応じて、120,000円〜320,000円(令和8年度ベース)の範囲で決定します。
寡婦年金との選択
死亡一時金と寡婦年金の両方の受給要件を満たす場合、どちらか一方を選択することになります。
一般的に、寡婦年金は5年間支給されるため総額が大きくなる傾向ですが、ケースバイケースの判断が必要です。
死亡一時金の意義
「保険料を払ったのに何も給付がないのでは」という掛け捨てを防止する側面があります。
保険料納付の動機づけにもなる仕組みです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 障害基礎年金は、20歳前に障害になった場合も対象ですか?
「20歳前傷病による障害基礎年金」という制度があり、20歳前に初診日がある障害も対象となります。
本人の所得制限はありますが、保険料納付要件は問われません(20歳前は被保険者ではないため)。
Q2. 遺族基礎年金は、子のいない配偶者でも受給できますか?
子のいない配偶者は受給できません。
「子のある配偶者または子」が支給対象のため、子がいない場合は対象外です。
第1号被保険者の妻の場合は、寡婦年金や死亡一時金で一部補完される可能性があります。
Q3. 付加年金は、本当に2年で元が取れますか?
計算上は、月額400円×12月=年4,800円の納付に対して、年金額200円×12月=年2,400円の上乗せのため、2年で納付額相当の給付を受け取る形です。
ただし、これは名目上の話で、物価上昇による実質購買力の変動は考慮されません。
一方、生涯にわたって受け取れる仕組みのため、長期で見れば有利と評価されることが多いです。
Q4. 障害基礎年金を受けながら働くことはできますか?
可能です。障害基礎年金は所得による支給停止が原則ありません(20歳前傷病による障害基礎年金には所得制限あり)。
一方、障害厚生年金は所得制限がない代わりに、別の制限があります。
Q5. 死亡一時金と寡婦年金、どちらを選ぶべきですか?
ケースバイケースのため、一律の正解はありません。一般的には、5年間の有期年金である寡婦年金の方が総額が大きくなる傾向ですが、妻の年齢・他の所得状況・生活設計によって変わります。
事前に最寄りの年金事務所でご相談されることをおすすめします。
Q6. 公的年金の給付を受けるにはどうすればいいですか?
公的年金の給付は申請主義です。
要件を満たしても、自動的には支給されません。ご自身またはご家族が申請することで初めて給付されます。
「ねんきん定期便」「ねんきんネット」で見込み額を確認し、給付事由が発生した時には早めに最寄りの年金事務所にご相談ください。
まとめ
国民年金の老齢以外の給付について、まとめました。
老齢以外の主な給付
| 給付 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金 | 全被保険者 | 障害状態になった時。現役世代も対象 |
| 遺族基礎年金 | 全被保険者 | 子のある配偶者・子。子の養育費的性格 |
| 付加年金 | 第1号被保険者 | 老齢年金の上乗せ。月400円で200円増 |
| 寡婦年金 | 第1号被保険者の妻 | 60〜65歳の5年間有期 |
| 死亡一時金 | 第1号被保険者の遺族 | 遺族基礎年金が出ない時の補完 |
民間保険を考える前に確認したいこと
- ご自身・ご家族が加入している国民年金の被保険者区分
- 万が一の時に受けられる公的保障の範囲
- 公的保障で不足する分を、民間保険で補う設計
公的年金は「老後にもらうもの」だけでなく、現役世代の家計のリスク管理の柱でもあります。
障害・死亡といったリスクに対する公的保障の範囲を把握した上で、民間保険・自助努力との組み合わせを検討されることが、無駄のない備え方につながります。
「我が家の場合、公的保障でどこまでカバーされているのか分からない」という方は、ねんきんネットを参考にしながら、必要に応じて専門家にご相談されるのも一つの方法です。
ご相談のご案内
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- 公的年金の給付範囲の確認
- 民間保険との重複チェック
- ご家族の働き方に応じた備え方
- ライフプラン全体での組み合わせ
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品・金融商品の利用を推奨・勧誘するものではありません。
年金額・制度は本記事執筆時点(2026年4月)のものです。最新情報は日本年金機構・厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
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