遺族厚生年金を受給するための要件とは?

社会保険

公的年金には国民年金と厚生年金があり、主な支給事由として老齢、障害、死亡があります。

前回は死亡した場合の国民年金の種類である遺族基礎年金についてまとめましたが、死亡を支給事由にする遺族年金は厚生年金(遺族厚生年金)にもあります。

遺族基礎年金を受け取るには?遺族基礎年金の受給要件とは
国が支給する公的年金には国民年金と厚生年金保険があります。それぞれの年金には、老齢、死亡、障害を対象にしたものがあり、死亡を対象としたものは遺族に支払われるので遺族年金といわれます。遺族年金は、国民年金と厚生年金保険のそれぞれにあり、国民年...

 

遺族厚生年金も被保険者等に万一があった場合に遺族の生活を保障する年金ですが、遺族基礎年金とは異なる部分も多いです。

また、遺族厚生年金も遺族基礎年金と同じで年金を受給するには要件を満たす必要があります。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い

一般的に遺族年金といった場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金のことを指します。

遺族基礎年金は国民年金、遺族厚生年金は厚生年金法の年金です。

国民年金は20~60歳までの国民が被保険者となり、厚生年金は会社員や公務員が加入します。厚生年金は国民年金の上乗せ制度なので、厚生年金の人は基礎年金の被保険者でもあります。

国民年金 厚生年金
自営業、第2号被保険者の配偶者(専業主夫・主婦)、無職、学生 会社員、公務員

 

公的年金は分かりにくいので、ここで少し例を挙げて特徴を説明してみます。

夫が厚生年金の被保険者である専業主婦の妻は国民年金の第3号被保険者になるので、保険料は支払ってませんが年金は払った扱いになります。ただし、夫が会社員を辞めて自営業になると妻は第3号被保険者の要件を満たさないので、第1号被保険者となり、国民年金の保険料について納付が必要です。

社会に出てずっと自営業で働いてきた人は国民年金しか受け取れませんが、厚生年金の被保険者として働いている人は厚生年金だけでなく、国民年金も受け取れます。

このように年金制度はとても分かりにくくなっています。

死亡者の要件

遺族厚生年金を受給するには、死亡者の要件、保険料納付要件、遺族の要件を満たす必要があります。

 

遺族厚生年金を受給するための死亡者の要件は以下のものがあります。

1.厚生年金保険の加入中に死亡したとき

2.厚生年金保険の被保険者であった者が、被保険者であった間に初診日がある事故や病気が原因で、初診日から5年を経過する日前に死亡したとき

3.障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき

4.老齢厚生年金の受給権者が死亡したとき

5.老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人が死亡したとき

上記1~3は短期要件と呼ばれ、4~5は長期要件と呼ばれます。

短期要件と長期要件のどちらに該当するかで年金の計算方法に違いがあります。

もし、短期要件と長期要件のどちらにも該当する場合は、申し出がなければ短期要件を満たした扱いになります。

保険料の納付要件

上記、死亡者の要件のうち、1および2の人は保険料の納付要件が問われます。

1.厚生年金保険の加入中に死亡したとき

2.厚生年金保険の被保険者であった者が、被保険者であった間に初診日がある事故や病気が原因で、初診日から5年を経過する日前に死亡したとき

 

保険料の納付要件は以下の通りです。

イ.死亡日の前々月末までに被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、その被保険者期間の2/3以上あること

ロ.死亡日の前日において、死亡日の前々月末までの1年間に保険料の滞納がないこと(令和8年3月末では死亡日において65歳未満)

遺族の要件

遺族厚生年金を受給することができる遺族は、配偶者、子、父母、孫または祖父母です。また、被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持されていなければいけません(生計維持関係)。

生計維持関係とは、年収が850万円未満であって、生計を同じくしていること(生計同一)です。

生計維持 = 年収850万円未満 + 生計同一

 

遺族厚生年金の順位は以下のとおりです。

配偶者と子(どちらもいる場合は配偶者が優先) 夫は55歳以上
子は18歳達する日以後の3月31日まで(20歳未満で障害がある)
父母 父母は55歳以上であること、支給は60歳から
18歳に達する日以後最初の3月31日まで、あるいは20歳未満で障害がある
祖父母 55歳以上であること、支給は60歳から

遺族厚生年金には優先順位があり、先順位者が受給権者となります(後順位の受給対象者は受けられない)。

障害があるとは、障害等級1級または2級に該当する場合です。

 

また、被保険者または被保険者であった者(死亡した者)が、死亡した時に胎児であった子が出生した時は、将来に向かってその子は生計を維持されていた子とみなされます。そのため、出生した時から遺族厚生年金の受給権が発生します。

遺族基礎年金と遺族厚生年金を同時に受け取る場合

 

遺族基礎年金の受給要件も満たす場合は、遺族厚生年金との併給が可能です。

例えば、子が18歳未満で厚生年金の被保険者の父が亡くなった場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けられます(母が遺族年金を受けとる、母がいなければ子)。

 

遺族厚生年金を受給してる人が、自分の老齢厚生年金を受け取れるようになると、一人一年金の原則の対象になります。

ただ、65歳以降は例外として、遺族厚生年金と老齢基礎年金を同時に受け取ることができます。

また、老齢厚生年金もある場合は遺族厚生年金よりも自身の老齢厚生年金が優先されます。この場合に老齢厚生年金が遺族厚生年金よりも少なければ差額が遺族厚生年金として支給されます。

まとめ

・厚生年金保険にも死亡を原因とする年金(遺族厚生年金)がある

・遺族厚生年金を受給するには死亡者の要件、保険料納付要件、遺族の要件を満たす必要がある

・遺族厚生年金には死亡者によって短期要件と長期要件がある

・遺族基礎年金は18歳に達する日の最初の3月31日までの子がいないと受け取れない

・遺族厚生年金は子がいることが要件となっていない

・夫、父母、祖父母は55歳以上でないと遺族厚生年金の対象になれない

・夫、父母、祖父母は55歳以上でも年金の支給は60歳から

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