一見よさそうに見える物件でも、実は問題を抱えていることがあります。
たとえば、一戸建てであれば、建築基準法や条例の違反をしていたり、建物に登記がされていない部分があるなどです。マンションであれば、修繕積立金の滞納が多かったり、かつての秀和幡ヶ谷レジデンスみたいな変な規約を設けているものもあります。
こういった物件は取引の障壁となることが多く、そうなると資産価値に影響したり、住宅ローンの審査が通りにくくなる可能性もあります。住宅ローンの審査が通りにくかったり、利用できない物件は資産価値が低いだけでなく、購入が現金取引に限定されるので、流通上の問題があるということです。
流通上の問題となる主な例
不動産の価格が周辺の物件と比較して安いとしたら、それは何かしらの問題があるかもしれません。
例えば、高級住宅地にあるのに建物が建てられないために著しく低い価格で募集してたり、法令や条例違反で流通上の問題を抱えていたりです。
- 周りより評価が著しく低い(建築不可)
- 法令や条例に違反している物件(違反建築)
- 権利・境界で問題を抱えている物件(共有持分・境界未確定)
- 長屋・連投式建物(評価が低い・建替えが難しい)
- 建物に未登記部分がある物件(抵当権設定できない・住宅ローンが難しい)
- など
1.既存不適格建築物
既存不適格建築物とは、建築確認申請時の建築基準法には適合していたものの、その後の法改正によって現在は法令の要件を満たさない物件をいいます。
たとえば、耐震性能が現在の基準を満たさなかったり、用途地域の変更によって建物の容積を満たさなくなったなどです。
- 耐震基準の改正
- 排煙性能の義務化(エレベーター)
- 建ぺい・容積率オーバー
- 用途地域の変更
- 接道要件の変更
- など
最初から法令に適合しない場合は、既存不適格建築物ではなく違反建築物なので、住宅ローンの対象外になるのが普通です(現金取引)。
違反建築物は是正命令が出る可能性がありますが、既存不適格建築物はすぐに改築しなければいけないわけではありません。
ただ、他の物件と比べて評価が下がる可能性はありますし、増改築をする場合は現在の法令に適合させることが必要です。
2.再建築不可物件
再建築不可物件は、その名の通り家の再建築ができない物件です。
よくあるのは接道義務を満たしていない土地です。
建物を建てるには、4m以上の道路に2m以上接道しなければならない義務があり、道路が2m以上接道してなければ原則として再建築ができません。
昔からある町だとこういった物件は多いですが、建て替えができなければ資産価値に大きな影響を与えます。
不動産の価値も低く、住宅ローンの借入れが難しいので購入できる人は少なくなります。購入する側にとっては安く手に入れることができます。
建物を取り壊すと再建築できませんが、フルリフォームやリノベーションして住み続けることは可能です。また、再建築不可の物件を専門に買い取っている業者もいます。
3.近隣トラブルがある
これはマンションより戸建てに多いですが、隣人トラブルがあると普通は嫌がられます。
隣人とのトラブルにより、境界の立ち合いを拒否されたり、境界でもめている人もいます。
不動産の取引では、トラブルがある場合は重要事項説明に記載しなければならないとされており、近隣トラブルを抱えている物件は取引にも悪影響です。
近隣に死体焼却炉や宗教団体の施設などがある場合も嫌がられることが多いです。
取引は相手あってのものなので、トラブルを抱えている物件は流通上の問題となることになります。
4.心理的瑕疵物件
対象物件で自殺や殺人事件などが過去にあったりすると、心理的瑕疵物件といわれて一般的に嫌悪されます。
不動産業者には、買主や賃借人に説明する義務があるので、隠すことは難しく、そうなると物件の評価が低くなります。
心理的瑕疵の例
- 物件で自殺・事件があった
- 孤独死で放置された期間が長く、特殊清掃が入った
- 墓地や暴力団事務所・宗教団体の活動拠点といった嫌悪施設がある
- など
販売価格や賃貸価格が安くなるので、中には喜んで取引する人もいますが、ほとんどの人はマイナスに捉えるので取引に悪影響を及ぼすのが普通です。
- 心理的瑕疵物件→安くして売る・業者に売る
5.建物に未登記の部分がある
建物を増築した場合にその部分が未登記だと、取引前に表示の登記が必要になります。
未登記のままだと所有権や抵当権の登記もできないので、住宅ローンが利用できず、現金払いの人しか購入できません。
中には建ぺい率や容積率をオーバーしていて、住宅ローンの審査の対象外になる物件もあります。
このような理由から未登記のある建物は取引が難しくなります。
- 未登記の物件がある→事前に未登記部分を登記する
- 建ぺい率・容積率オーバー→ローン利用できない→取引に問題
6.マンションの修繕積立金の滞納率が高い
区分所有マンションの20%は、多かれ少なかれ修繕積立金を滞納している組合員(所有者)がいるといわれます。
管理費・修繕積立金の滞納があるマンションは買って大丈夫?後悔しないためのポイント
修繕積立金は、マンションの資産価値を維持していく上で重要な積立てなので、滞納率が高く積立金が少ないと修繕が滞る可能性があります。
また、必ずしも長期修繕計画が妥当でなく、毎月の修繕積立金の額が適当でないこともあります。
たとえば、新築では物件を早く売るために修繕積立金を安く設定することが行われています。
長期修繕計画の原資が不足して借入れで準備できたとしても、結局はマンションの組合員が負担するので、現在の金額が低ければ将来的に高騰したり、一時金を請求される可能性があります。
だからといって自主管理だと、マンションの管理が悪くなったり、資産の評価が低く見られる可能性があります。
滞納については不動産会社が調べてくれます。
購入時に確認するポイント
- 重要事項説明をよく理解する
- 不明な点は業者に質問して解決する
チェックポイント
- 登記事項証明書・公図のチェック
- 接道状況と再建築の可否
- 用途市域・建ぺい率・容積率
- 告知事項はないか
- 境界確認書・測量図
- 隣地との関係(越境・トラブルなど)
まとめ
不動産は見た目や価格だけでは判断できません。
価格が周辺と比べて著しく低かったり、法令違反をしていたり、未登記の建物があるなど、取引上の問題がある物件があります。
不動産探しでは、信頼のおける不動産業者やFP等の専門家を見つけることが重要です。
信頼のおける専門家
- 顧客の利益を考えてくれる
- 売上至上主義でない
- コミュニケーションを重視する
不動産は上を見たらキリがないので、予算の範囲で探すということも大切です。
- 理想を追うと住宅ローン破綻のリスクが高まる
- 人生100年時代に住居費に偏るのはリスク
- 不動産の価値は変動する