契約

不動産の売買契約で取引が解除となる場合の例

投稿日:2019年11月15日 更新日:

重要事項説明を受け、契約内容についてお互いが納得した後は契約になります。

不動産の取引が成立した場合は、基本的に解除できる例は限られていますので、契約書への署名捺印は必ず内容を確認することが大切です。

 

不動産の売買契約が締結された後は、お互いに生じた義務を実行に移すこととなり、簡単には契約を解除することはできなくなります。しかし、状況によっては契約を解除できるケースもあります。

クーリングオフによる契約解除

「クーリングオフ」というのは、クーリングオフについての告知を受けてから8日以内であれば、消費者と販売業者との間で締結した契約を一方的な意思表示のみで解除できるという仕組みです。

クーリングオフは、自宅に突然訪問されてしまうと、よく考える時間もなく契約してしまうことがあるので、頭を冷やす(クーリングオフ)期間を与え、期間内なら契約を解除できることにしたのです。

 

売主が不動産業者の場合において、不動産会社の事務所以外の場所で契約をした場合はクーリングオフが適用されることがあります(宅建業法37条の2)。

しかし、不動産会社の事務所で契約の申込みをしている場合は、クーリングオフによる解除はできません。

また、買主の希望で、買主の自宅や勤務先で契約したときもクーリングオフによる解除はできません。

 

クーリングオフによる契約解除をした場合は、仲介会社に支払った手数料は返還されます。

 

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手付金の放棄による解除

買主は、手付金を放棄することで契約を解除することができます。

売主が手付解除をする場合は、受け取った手付金の倍額を支払って解除できます。

手付金が300万円であれば、買主は300万円の手付金を放棄し、売主は600万円を支払うことで契約を解除できます。

 

売主が個人の場合は、買主は手付解除期日までに手付金を放棄することで契約を解除できます。

 

売主が不動産業者の場合は、履行の着手があるまでは、買主は手付金を放棄して契約を解除できます。

 

ちなみに売買代金のために住宅ローンの申し込みをしたことは、履行の着手にはあたらないとされています。したがいまして、買主が住宅ローンの申込みをした段階では履行の着手にあたらず、売主は手付の倍額を提供することで契約を解除できることになります。

 

危険負担による解除

危険負担とは、売買契約の締結後に天災や隣家からの失火などによって建物が滅失・毀損してしまい、引き渡しができなくなった場合に、その損害を売主と買主のどちらが負担するかをいいます。

売主は建物を引き渡す義務(債務)があり、買主は建物を受け取る権利(債権)があります。

つまり、建物が天災や火災によってなくなってしまった場合に、契約を解除する(売主が負担・債務者主義)のか、買主は代金を支払う(買主が負担・債権者主義)のかという問題です。

 

民法では、不動産の危険負担については、債権者主義を採っているため、買主は建物が滅失・毀損しても代金を支払わなければなりません。

 

しかし、実際の不動産売買契約書では、「建物が毀損して本契約の履行が不可能となったときは、お互いの書面によりその相手方に対して、本契約を解除できる」旨の特約が記載されています。

 

2020年の民法改正では、危険負担の条文が契約不適合責任に変更されます。

 

売主の契約違反による解除

契約が成立した後は、売主と買主双方に義務が生じます。

 

お互いに義務を負うことになるので、義務を行わなければ債務不履行になります。

債務不履行が重大な場合は契約違反による解除ができます。

ただし、債務不履行が軽微な場合は、損害賠償を求めることはできても契約違反による解除はできないとされています。

 

売主が催告しても建物を引き渡さない場合は、契約を解除して違約金を請求することができます。

また、契約書には、売買代金の〇%といったように違約金の予定額についての記載があります。

違約金の予定が設定されている場合は、契約違反の違約金は実際の損害にかかわらず、契約書に記載した額とされます。

 

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売主の瑕疵担保責任による解除

瑕疵とは欠陥のことをいいます。

契約した物件に重大な瑕疵があった場合に、契約の目的が達成されないときに限って契約を解除することができます。

 

契約した不動産が、住宅を建てられなかったり、違反建築物で建て替えなければいけない等、重大な瑕疵である場合は契約の目的を達成できないため、瑕疵担保責任による解除ができます。

 

修理により修復が可能な場合は、瑕疵担保責任による解除はできませんが、損害賠償請求はできるとされています。

 

2020年の民法改正では、瑕疵担保責任がなくなり、契約不適合責任となります。

 

ローン特約による解除

買主は、売買代金の支払いに関して、ローンを利用するときは、契約締結後速やかに融資申し込み手続きを行わなければならないとされています。

 

その場合に「融資承認期日までに融資の全部または一部の金額につき承認が得られないときは、契約解除期日までであれば、契約を解除できる」といったローン特約が付いているのが一般的です。

ローン特約による解除は白紙解除ですが、ローンの承認が得られない場合であっても、解除期日を過ぎると解除ができなくなります。

 

また、買主が故意に承認が受けられないようにしていた場合は、ローン特約による解除はできません。

 

 

不動産会社が買主に代わってローン手続きをすることが一般的に行われていますが、本来は買主が契約後速やかに融資申し込み手続きをするよう求められています。

不動産会社は、ローンが通らないと売上にならないので、買主に代わってローン手続きをしてくれますが、買主が自分でローン手続きを行うこともできます。

 

あくまでもサービスと位置づけて、ローン紹介料とかローンあっせん料といった名目で手数料を請求してくる業者もいます。

中には50万円のローン紹介料を請求する業者もいるそうです。

 

合意による解除

売主と買主の話し合いによって契約を解除することです。

どのような条件で解除するかは、当事者間で決めまることになります。

 

解除の原因が仲介会社になければ、仲介手数料は発生します。

 

不動産を買うときに契約が解除となるまとめ

・クーリングオフによる契約解除

・手付金の放棄による解除

・危険負担による解除

・売主の契約負担による解除

・売主の瑕疵担保責任による解除

・ローン特約による解除

・合意による解除

 

そのほか契約が取り消しになるものに、錯誤、詐欺、強迫、制限行為能力者といったものがあります。

 

 

参考

全日本不動産協会「売買契約における基礎知識」

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たくあん(ネトゲ)

横浜で不動産仲介業ファイナンシャルプランナーをしています。 住宅ローンが老後に与える影響は大きいです。 資産があるのにお金がないとは? いくらのローンなら返済していける? 年金について知らずに家を購入するのは無謀? 不動産だけでなく、ライフプランの相談にも対応してます。 担当ジャンル:雑記、不動産、ライフスタイル 資格:宅建士、管業、簿記1級、1級FP、社労士、1種証券、住宅ローンアドバイザー

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