2020年の4月に民法の改正があり、当時は不動産業界でも話題となりました。
不動産の契約でも民法は関わってくるので、法律の施行前には講習会や勉強会がよく実施されてました。
民法で賃貸借について条文が定められてるので、土地の賃借権ではこれに遵うことになります。
ただ、建物の賃貸借や建物がある土地については、借地借家法というものが優先されます。
民法は広い範囲で適用される一般法ですが、借家や借地は賃貸人に比べて立場が弱いので、賃借人保護の観点から借地借家法という特別法で守られています。
一般法の民法と特別法の借地借家法
一般法は適用される対象が広い法律で、特別法は適用される対象が特定の範囲に限られます。
特別法に規定がある場合はそちらが優先され、特別法に規定がなければ一般法が適用されます。
借地借家法は、建物の賃貸借や、建物の所有を目的とした土地の賃貸借や地上権についての規定を定めています。
なので建物の賃貸借などでは借地借家法が適用され、駐車場などの建物所有が目的ではない土地は民法が適用されます。
また、借地借家法は、弱い立場の賃借人を保護する観点から、民法よりも賃借人に有利な規定となっています。
例えば、賃借人が賃借権を主張(対抗)するには、民法では賃借権の登記が必要とされていますが、賃貸人には登記の協力義務がないので、これだと主張できなくなってしまいます。
そこで借地借家法では、賃借人保護の観点から、借家については建物の引き渡しを受けていればよく、借地については土地上の建物の登記があれば、それぞれ主張が認められることになっています。
このように建物の賃借人には誰にでも主張できる強い主張(対抗力)が認められています。
借家権
借地借家法では、賃借人保護のために様々な規定が設けられています。
・借家の契約期間は1年以上(1年未満の場合は期間の定めがないものになる)
・契約期間の定めがある場合、期間満了の1年から6か月前に通知をしないと従前の内容で更新されたとみなされる(期間の定めのない借家契約になる)
・賃貸人が更新を拒絶するには正当事由が必要
・賃借人から解約を申し入れる時は3か月前(賃借人に有利な取り決めは可能・1か月前が多い)で、賃貸人から(正当事由必要)は6か月前から申し入れる必要がある
・「賃料を増減しない」といった特約をした場合、増額しないのは有効だが、減額しないのは無効(賃借人保護のため)
賃借人が契約期間の満了で終了する契約を結びたいのであれば、定期借家契約という契約方法があります。定期借家契約には以下の特徴があります。
・契約書の書面で定期借家であることが明示されている。
・定期借家契約であることを書面を交付して事前に説明する。
・定期借家契約でも、期間満了の1年前から6か月前に通知が必要。
・賃料を固定させることができる。
・期間の更新がない(再契約可)。
借地権
借地権には、普通借地権と定期借地権とがあります。
普通借地権は、30年以上の期間が必要で、30年未満の期間を定めても30年になります。
更新後の存続期間は、1回目は最低20年、2回目以降は最低10年となります。
賃貸人(地主)が更新拒絶するときは正当事由が必要です。
借地上に建物があるときに賃借人がそのまま使用し続け、賃貸人も異議を述べなければ、借地契約は更新されたものとみなされます。
定期借地権
・定期借地権
期間50年以上、書面によってしなければならない、建物買取請求権なし
・建物譲渡特約付き借地権
期間30年以上、書面がなくてもよい、建物買取請求権あり
・事業用定期借地権
期間10年以上50年未満、公正証書が必要、建物買取請求権なし
おわりに
借地借家法では、それぞれに契約の期間がありました。民法の場合の賃貸借の期間は最長で50年となっています。
建物の賃貸借でよくあるトラブルに家賃の滞納があります。
1か月でも家賃を滞納したら部屋を出ていかなければいけないと思う人もいるかもしれません。うっかり忘れたということもありますし、普通は1か月程度の滞納では解約されません。
裁判では、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたかどうかが見られますが、1か月程度では破壊されたとはみられることは普通ありません。
なので、多くの賃貸借契約書には、賃料を2か月又は3か月以上滞納したら無催告解除できるといった条項があります。
これから一人暮らしを始める人の中には、大家さんが怖い人だったらどうしよう、追い出されないかと不安かもしれませんが、普通に部屋をしてる限り、あまり心配することはありません。