登記が現在の真実をあらわしてるとは限らない|不動産購入前に知っておきたい注意点

不動産

少子高齢化の影響で、不動産業界でも相続が大きなテーマとなっています。

令和6年から相続登記が義務化されましたが、不動産が絡む相続についてのトラブルは多いです。

理由の一つに登記簿の記載が、必ずしも実態と一致するとは限らないことがあります。

 

この記事から分かること

  • 登記簿の記載が、なぜ必ずしも実態と一致するとは限らないのか
  • 登記に「公信力」が認められていない理由
  • 相続登記義務化はいつから始まり、誰が対象なのか
  • 過去の相続分の期限(2027年3月31日)と過料の内容
  • 登記簿を確認する際に意識しておきたいポイント

 

登記簿謄本は誰でも請求できる

登記簿謄本は、法務局に行けば誰でも請求できます。

登記簿謄本はあまりなじみがないため、権利証や登記識別情報と同じように大事に保管している人もいますが、登記簿謄本の目的はその時の不動産の状況を調べるためのものなので、保管してもあまり意味はありません。契約した時の記念としてなら別です。

手数料さえ支払えば、誰でも他人の不動産の登記簿を取ることができます。

 

登記簿に書いてあること

不動産登記簿には、土地や建物についての情報である表題部と、その不動産の権利状況を示す権利部とがあります。

 

表題部には、不動産の所在、地目、地番、面積、家屋番号、構造といったことが記載されます。

表題部に記載される内容は、土地と建物で異なります。

お客様が不動産屋に地番だけ教えられて、現地に向かってもなかなかたどり着かないのは、住所と地番は別ものだからです。

 

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地番と住所は何が違う?調べ方・登記簿の取得方法まで解説

 

権利部は、所有権に関する甲区と、所有権以外の権利を記載している乙区とに分かれます。

所有権が移ったり、差し押さえを受けているのは甲区を見ることでわかります。

抵当権やいくらの住宅ローンを借りたかは乙区を見ればわかります。

 

登記簿は「事実」ではなく「申請された記録」

登記簿謄本(登記事項証明書)は、法務局に行けば誰でも手数料を払って取得できます。

所在・地番・面積などを記載する「表題部」と、所有権や抵当権などの権利関係を記載する「権利部(甲区・乙区)」から成り立っています。

 

ここで重要なのは、登記簿は「事実」そのものではなく、あくまで「申請された記録」だという点です。

日本の登記制度は当事者からの申請に基づいて記載が更新される仕組みのため、申請がされていなければ、実際の権利関係が変わっていても登記簿には反映されません。

 

登記に「公信力」がない、ということの意味

不動産登記には「公信力」が認められていません。

公信力とは、登記の記載を信頼して取引した人を、たとえ登記が実態と違っていても法律的に保護する効力のことです。

 

つまり、登記簿の記載を信じて取引をしても、それだけでは保護されないのが日本の制度です(通謀虚偽表示のケースなど一部例外はあります)。

この点は、不動産取引において登記簿の情報を絶対視してはいけない理由の重要な部分です。

 

なぜ登記簿が実態とズレることがあるのか

不動産登記には、義務付けられているものと、そうでないものがあります。

登記の種類 義務の有無
新築・増築時の表題登記 義務(工事完了から1ヶ月以内)
所有権移転登記(売買等) 従来任意(登記しなくても当事者間の権利は有効)
相続登記 2024年4月から義務化(後述)

所有権移転や抵当権設定など権利に関する登記は、これまで任意とされてきました。

登記をしていなくても当事者間では真実の権利者に変わりありませんが、登記をしていないと事情を知らない第三者に対して自分の権利を主張(対抗)できません。

 

特に相続は、この「登記されていない不動産」が発生しやすい典型的な場面でした。

遺産分割協議がまとまらない、名義変更の手間を後回しにする、といった理由で、亡くなった方の名義のまま何十年も放置されている不動産が全国に多数存在していたのです。

 

相続登記義務化とは?いつから・誰が対象か

2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されました。

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記の申請が必要で、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

対象となるのは、施行日以降に発生した相続だけではありません。

過去の相続にも遡って適用されるのが、この制度の大きな特徴です。

 

相続登記の期限はいつまで?過去の相続分は2027年3月31日

施行日(2024年4月1日)より前に相続や不動産の取得を知っていた場合は、2027年3月31日が申請期限です。

祖父母・曽祖父母の代から名義変更されていない不動産も対象になるため、心当たりのある方は早めの確認が必要です。

 

なお、2026年4月1日からは、住所や氏名の変更登記も義務化されています(変更から2年以内、違反は5万円以下の過料)。

転居や結婚で登記簿上の住所・氏名に変更がある場合は、こちらも合わせて確認しておきましょう。

 

対抗力とはどういうことか

対抗力の話は抽象的でイメージしづらいので、具体例で見てみます。

土地の所有者Aが、事情によりBとCの二人に同じ土地を売却する契約を結んでしまったとします(実際には稀ですが、制度理解のための例です)。

この場合、土地の所有者が二人存在することになりますが、法律上どちらが優先されるかは「先に登記を済ませたかどうか」で決まります。

 

Bが先に所有権移転登記を済ませれば、Bは第三者であるDに対して「自分がこの土地の所有者だ」と主張できます。

一方、契約自体は有効でも登記を備えていないCは、Dに対して所有権を主張できません(Aに対してのみ主張可能です)。

 

契約書を交わしていても、登記を済ませていなければ第三者との関係では弱い立場になる、というのがこの例の要点です。

逆にいえば、「契約している=安全」ではなく、「登記されている=第三者に主張できる」という視点を持つことが大切です。

 

登記簿を確認する際に意識しておきたいこと

1.登記簿の名義が最新とは限らない

特に古い物件・相続が絡む物件は要注意。名義人がすでに亡くなっている「被相続人名義のまま」のケースも珍しくありません。

 

2.登記簿を信じて取引しても、実態と異なれば法的に保護されない場合がある

公信力がないため、契約前に登記情報と実態(現況・利用者・占有状況等)を突き合わせて確認することが重要です。

 

3.抵当権等の権利部(乙区)は特に注意深く確認する

抹消漏れの抵当権が残っていないか、権利部の記載も併せて確認します。

 

4.相続が絡む物件では、相続登記が完了しているかを必ず確認する

未了の場合、売買契約前に相続人全員の合意・登記手続きが必要になるため、取引のスケジュールに影響します。

 

5.気になる点があれば、登記簿だけでなく現地確認や関係者への聞き取りも含めて総合的に判断する

 

よくある質問

Q. 相続登記をしないとどうなりますか?
A. 正当な理由なく期限(不動産の取得を知った日から3年以内)を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

Q. 何十年も前に相続した不動産も対象ですか?
A. はい。過去の相続分も義務化の対象で、2027年3月31日までに登記が必要です。

 

Q. 登記簿を見れば、その不動産の権利関係は確実にわかりますか?
A. いいえ。登記には公信力がないため、登記簿の記載が実態と異なるケースもあります。特に相続が絡む物件では、登記簿だけでなく現況の確認も重要です。

 

まとめ

  • 登記簿は「事実」ではなく「申請に基づく記録」であり、実態とズレることがある
  • 登記には公信力がなく、記載を信じて取引しても法的に保護されるとは限らない
  • 対抗力は「契約の有無」ではなく「登記の有無」で決まる(二重譲渡の例)
  • 相続登記は長らく任意だったため、名義が古いままの不動産が多く存在してきた
  • 2024年4月の義務化(過去分は2027年3月31日が期限)により、今後は改善が見込まれる
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