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厚生年金基金の設立不可で注目される3階部分の年金

投稿日:2015年11月11日 更新日:

国民年金を1階部分、国民年金の上乗せの厚生年金を2階部分といったりしますが、厚生年金基金の設立不可によって3階部分の年金が注目されています。

 

一般的に年金といったら国民年金と厚生年金を思い浮かべる人が多いと思います。

国民年金は全ての国民が対象ですが、会社員や公務員が被保険者になれる公的年金が厚生年金です。

かつて大手企業等では、企業年金のために厚生年金基金を設立していました。

 

厚生年金基金が、国に代わって運用するのが「代行給付」といわれる部分です。

厚生年金基金では、厚生年金の一部を代行部分として運用し、従業員にプラスアルファとして上乗することができました。

厚生年金基金は、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金にプラスして給付される企業年金の一種で、年金の3階部分といえます。

 

ところが、この代行部分の運用をめぐって問題が起きています。

これからは厚生年金基金の設立が原則できなくなった

平成26年4月1日以後は、厚生年金基金の新規の設立が認められなくなりました。

厚生年金基金では、老齢厚生年金の一部を国に代わって支給するとともに、企業ごとにプラスの独自給付を行ってきました。

 

この老齢厚生年金の一部を国に代わって支給するのが代行部分といわれるもので、厚生年金基金のうち代行部分の積立金がない状態を「代行割れ」と呼びます。

今問題となっているのが、この代行割れと呼ばれるものです。

 

各厚生年金基金では、被保険者の保険料を運用するのですが、昨今は低利回りや低金利によって運用を頑張っても代行部分の確保が難しくなっています。

運用が思うようにいかない結果、多くの基金で代行割れが起きています。

 

ちなみに、厚生年金基金が解散した場合は、基金が代行して行っていた部分は国に引き継がれます。

基金の解散により、支給元が国に変わりますが、老齢厚生年金の原則の給付額は変わらないことになっています。

 

企業年金の中心は確定給付企業年金と確定拠出年金に

企業年金が普及するきっかけになったといわれているのが適格退職年金と厚生年金基金でした。

 

適格退職年金は、税制優遇があった影響で急速に拡大しましたが、バブルが崩壊したことによって企業年金の運用が厳しい状況が続きました。

また、従業員の受給権保護が十分でなかった適格退職年金は、企業の不祥事を招くことになり、今では廃止になりました。

 

そして、厚生年金基金も代行部分の上乗せ給付が難しくなり、今では代行返上が多く行われています。

これらを踏まえた結果、平成25年の改正によって新たに厚生年金基金の設立ができなくなりました。

 

厚生年金基金に代わって注目されているのが、確定給付企業年金と確定拠出年金です。

両者の違いは、確定給付企業年金は受け取る年金が決まってますが、確定拠出年金は受け取る年金が決まってないということです。

確定拠出金では、自分で掛け金を運用して、その運用した結果を将来の年金として受け取りますから、将来年金がいくらになるかは運用の結果次第になります。

 

つまり、誰がリスクを負って年金を運用するかの問題です。

確定給付企業年金は受け取る金額が決まっていますから、自分で運用する必要はなく、リスクは会社が負ってくれます。

反対に確定拠出年金は自分で運用するので、運用結果次第で年金を増やすことが出来る反面、上手くいかなければ予定していたほど年金が増えないことも考えられます。

この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする(確定拠出年金法第1条)。

追記:現在よく聞くiDeCoがこの確定拠出年金の個人型になります。

 

そのため、確定拠出年金が3階部分の中心になれば、運用の巧拙が老後の生活に影響を与えることになるはずです。

 

注目される確定拠出年金個人型

特に現在、注目されているのが「確定拠出年金の個人型」です。

確定拠出年金が特に注目されている理由は、今までは確定拠出年金の利用者は限られてましたが、改正によってほとんどの人が加入できるようになったからです。

今までの確定拠出年金個人型は、主に将来の年金が少ない自営業者等が対象でした。これを改正して主婦や会社員にも加入を認めるようにしたのです。

 

確定拠出年金には、企業型と個人型がありますが、対象者を拡大したのは個人型のほうです。

個人型では自分で掛け金を拠出しますが、拠出した掛け金は税金の計算で所得から全額控除されます。

運用中の利益にも課税されず、受け取り時も公的年金と同じ扱いをしてもらえます。

 

確定拠出年金は、公的年金だけではやっていけない老後を救う手段として注目されています。

追記:確定拠出年金個人型は、改正後にiDeCo(イデコ)の名称となりました。

 

政府は第3の企業年金を検討中?

日本経済新聞によれば、掛け金を企業が運用して、その運用成果に基づいた年金が将来受け取れるという第3の企業年金制度を検討しているそうです。

 

確定拠出年金が普及しない理由の一つが、運用を社員が自己責任で行わなければいけない点です。

運用知識がある人は別ですが、ほとんどの人は運用についての知識がありません。

ましてや運用リスクを自分で負うとなると、金融知識のない人は積極的にリスクを取ることができません。

その結果、多くの人が運用を放置してしまうことになります。

 

検討中の第3の企業年金では、運用のリスクは社員が負いますが、運用自体は金融のプロが行うそうです。

たとえリスクを自分で負うとしても、プロが変わって運用してくれるなら、社員さんも受け入れやすいかもしれません。

 

おわりに

グリーンピア問題、保険料の私的流用、消えた年金問題、その他年金関係者の天下り、官僚や政治家は年金制度を分かりにくくして私的なことに使ってる場合ではありません。

年金保険料を運用する年金積立金管理運用独立行政法人も元々は天下り先として設立されたものです。

年金制度を取り巻く環境は経済に影響されますが、不祥事も多いのが年金制度です。

国民は日本の制度にも関心を持つことが必要です。

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