少子高齢化の影響で、不動産業界でも相続が大きなテーマとなっています。
令和6年から相続登記が義務化されますが、不動産が絡む相続についてのトラブルは多いです。
とりあえず不動産を相続人全員の共有にしておくといった例は多いのですが、不動産をめぐってトラブルに発展することも多いです。
登記簿謄本は誰でも請求できる
登記簿謄本は、法務局に行けば誰でも請求できます。
登記簿謄本はあまりなじみがないため、権利証や登記識別情報と同じように大事に保管している人もいますが、登記簿謄本の目的はその時の不動産の状況を調べるためのものなので、保管してもほとんど意味はありません。契約した時の記念としてなら別ですが。
手数料さえ支払えば、誰でも他人の不動産の登記簿を取ることができます。
今なら法務局にわざわざ行かなくてもオンラインによって請求することができます。
登記簿謄本の閲覧や請求には、費用がかかります。
登記簿謄本 | 600円 |
オンライン請求送付(窓口交付) | 500円(480円) |
要約書・閲覧 | 450円 |
閲覧だけなら登記情報提供サービスを使うことでもっと費用を抑えることができます。
登記簿に書いてあること
不動産登記簿には、土地や建物についての情報である表題部と、その不動産の権利状況を示す権利部とがあります。
表題部には、不動産の所在、地目、地番、面積、家屋番号、構造といったことが記載されます。
表題部に記載される内容は、土地と建物で異なります。
お客様が不動産屋に地番だけ教えられて、現地に向かってもなかなかたどり着かないのは、住所と地番は別ものだからです。
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「地番」と「住所」の違いとは?
不動産のチラシに書いてある場所を探してみたけれど、目的地にたどり着かなかったということはありませんか? チラシに書いてある場所だと思ってカーナビに入力したら、見当違いの場所を指していてよく分からないと …
権利部は、所有権に関する甲区と、所有権以外の権利を記載している乙区とに分かれます。
所有権が移ったり、差し押さえを受けているのは甲区を見ることでわかります。
抵当権やいくらの住宅ローンを借りたかは乙区を見ればわかります。
登記できる権利変動は、保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅です。
保存の登記は、法律上発生した権利を保存するための登記で、所有権保存や不動産の先取特権の保存があります。
設定の登記は、当事者間で物件が発生する場合にする登記で、抵当権設定登記があります。
移転の登記は、登記された権利を第三者に移転する登記で、所有権移転などです。
変更の登記は、既にされた権利の登記事項に変更が生じた場合に行う登記です。
処分の制限登記は、差押え等が行われたときに行われる登記です。
消滅の登記は、権利が消滅した場合の登記で、抵当権抹消登記などです。
義務付けられている登記と義務付けられていない登記
不動産登記には、登記が義務付けられているものと、登記が義務付けられていないものとがあります。
建物を新築・増築したりする場合は、建築確認申請の手続きを経てから工事を行いますが、工事が完了した後は1ヶ月以内に建物の表題登記が義務付けられています。
新築や増築に関するものは、面積や原因および日付が記載されるので表題部に関するものとなります。
一戸建てだけでなく、区分マンションも新築したら、分譲業者等が表題登記の申請を行います。
反対に所有権の移転や抵当権といった権利関係に関しては、登記が義務付けられていません。
登記をしてないからといって真実の権利者であることに変わりはありません。
だからといって登記をしていないと事情を知らない第三者に対して対抗できないとされています。
動産と違って不動産では、不動産に関する物権の得喪・変更は登記をしなければ第三者に対抗できないとされているからです。対抗は主張することです。
登記がなくても主張できるのは、無権利者や不法占拠者、信義誠実の原則に反するよう人などです。
登記の公信力
不動産の登記には、公信力が認められていません。
公信力とは、登記が本来の権利関係とは違っている場合に、それを信頼して取引を行った者に対しては、登記に記載されている通りの権利関係が存在したと認めて法律の効力を発生させることをいいます。
つまり、日本の登記制度では、真実の権利関係と登記上の権利関係が違う場合、登記上の記載を信じて取引を行ったとしても、保護されないということになります。
ただし、これには例外があって、通謀虚偽表示といった例等があります。
例えば、土地の所有者であるAとBが売買契約を締結するつもりがないのにもかかわらず、お互いに通謀してBに所有権が移転したと見せかける場合です。
この場合は、売る側のAも買う側のBも、意思が存在しないので本来であれば無効となります。
しかし、第三者であるCは、このことを知らないのでCから見ればBが土地の所有者だと信じるはずです。
こういったケースではAは自分が所有者であることをCに主張することができなくなります。
民法第94条
1.相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2.前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
ここでいう善意とは、「事情を知らないということ」です。
登記がなくても対抗できる人
・無権利者
・不法行為者や不法占拠者
・背信的悪意者(信義誠実の原則に反する人)
・詐欺又は強迫によって登記申請を妨げた者
・他人のために登記申請をする義務のある者(司法書士とか)
登記の対抗力
既に説明してますが、不動産の所有権を他の人に主張できることを対抗力といいます。
不動産の所有権を第三者に主張するには登記が必要とされています。
例えば、土地の所有者であるAが、BとCの二人に土地を売却する契約を締結した場合は土地の所有者が二人もいることになります。
このような場合にBとCが土地の所有権を第三者であるDに主張するには所有権の登記が必要になります。
Bが土地の所有権移転登記を行ったのであれば、Bは第三者であるDに対して自分が土地の所有者であることを主張できます。
反対に登記を備えていないCは、Dに対して自分が土地の所有者と主張できません。CはAに対してのみ所有権を主張することができます。
今回のまとめ
・登記簿上の情報は、必ずしも真実を表しているとは限らない。
・登記には、義務付けられているものと義務付けられていないものがある。
・相続では登記が義務付けられていない。→義務化されました。
・第三者に対抗するには登記が必要。
相続登記が義務化されましたが、令和6年4月からなので、それより前に不動産を相続した場合は、必ずしも登記簿の名義変更をしているとは限りません。
増築や新築の場合は1ヶ月以内に表題登記が義務付けられていますが、相続した場合は必ずしも義務ではなく罰則もなかったので登記しない人も多いです。
相続しても登記してなければ、登記簿の情報が真実を反映していないことになります。こういう場合は調査するしかありません。
参考 全日本不動産協会「不動産の登記には公示力はあっても、公信力はない……」