「安心R住宅(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)」は、平成30年(2018年)4月から運用されている制度です。
これは個人ではなく、不動産の事業者を対象とする制度で、事業者が登録団体の実施する研修を受講したうえで登録することにより、条件を満たした中古住宅に「安心R住宅」の標章を使用できるようになります。
中古住宅の購入を検討している方は、広告や物件情報でこの標章を見かけることがあるかもしれません。
標章を使用できるのは、国土交通大臣に登録された事業者団体(2026年8月時点で13団体)に所属し、研修を修了した事業者に限られます。
会社に1人以上の研修修了者がいる必要があるため、不動産会社によっては、社員が研修を受講しているケースもあります。
この記事から分かること
- 安心R住宅制度とは何か(対象・要件・国が定めた基準)
- 中古住宅に対するイメージと、制度が作られた背景
- 標章を使うために必要な条件(耐震性・建物状況調査・情報開示)
- 制度開始(2018年)から現在までの実施件数の推移
- 不動産会社側が研修を受講する仕組み
安心R住宅の制度とは
安心R住宅は、耐震性があり、建物状況調査(インスペクション)が行われた住宅であって、リフォームの実施または提案について情報提供が行われている中古住宅に対し、国が「安心R住宅」という標章の使用を認める制度です。
ポイントは、(1)中古住宅であること、(2)耐震性の基準を満たしていること、(3)建物状況調査が行われ、問題がある箇所についてリフォームの実施・提案がなされていること、の3点です。
標章があることは、一定の基準を満たした中古住宅であり、必要な情報開示がされていることを意味するため、購入を検討する人にとってもメリットがあります。
今までの中古住宅に対するイメージ

従来、中古住宅は瑕疵担保責任(欠陥があっても補償されない契約)が免責されるのが一般的でした。
また、消費者からも「古いので不具合があるのではないか」「見た目がよくない」「情報が少ない(情報の非対称性)」といったイメージを持たれがちでした。
そのため、日本の不動産取引は新築物件が中心で、中古物件の流通は他の先進国と比べて限定的とされています。
欧米では不動産取引の多くが中古住宅といわれる一方、日本では新築住宅の取引が中心という違いがあり、既存の住宅ストックをどう流通させるかは、長年の政策課題とされてきました。
安心R住宅制度は、建物状況調査(インスペクション)の普及とあわせて、この課題への対応策の一つとして導入されたものです。
安心R住宅の標章を使うための条件

不動産会社が「安心R住宅」の標章を使うためには、売主と専属専任媒介契約または専任媒介契約を結んだうえで、「安心R住宅として広告する」ことについて売主の承諾を得る必要があります。
標章の使用は、購入する側にとっての安心材料になるだけでなく、売主にとっても他の物件との差別化につながります。
耐震性と構造上の不具合・雨漏りに関する基準
安心R住宅では、まず耐震性と、構造上の不具合・雨漏りに関する基準を満たす必要があります。
耐震性については、原則として昭和56年6月1日以降の建築確認を得て建築されていることが基準となります。
この日を境に耐震基準が見直されており、それ以前の「旧耐震基準」は震度5程度を想定した設計であるのに対し、それ以降の「新耐震基準」は震度7相当の揺れにも耐えられるよう設計されています。
また、建物状況調査(インスペクション)を実施し、構造上の不具合や雨漏りが認められないこと、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合していることも要件とされています。
リフォームによる印象の改善
リフォーム工事が行われていれば、室内の印象は大きく改善します。
未実施の場合でも、今後実施するリフォームの提案を示すことで、購入希望者がリフォーム後の状態をイメージしやすくなります。
広告に室内写真を掲載することで、水回りや設備の状況を事前に確認できる点もメリットです。
住宅情報の開示
広告の際には、建築時の情報、維持保全の状況、保険や保証に関する情報など、住宅の評価に関わる書類情報が、調査報告書(安心R住宅調査報告書)として示されます。
購入希望者が詳細な情報を求めた場合、売主側には開示の対応が求められるため、購入を検討する側にとっても情報を得やすい仕組みになっています。
安心R住宅の研修

安心R住宅の標章を使用するには、事業者の会社に1名以上、研修を修了した人がいる必要があります。
研修はWeb形式で完結し、テキストをダウンロードしたうえで動画を視聴し、受講後の効果測定に合格すると登録申請書をダウンロードできる流れです。
効果測定は資格試験のような難易度の高いものではありません。
一方で、標章の使用にあたっては、使用細則やルールが定められています。
制度開始から現在までの実施件数の推移
国土交通省が公表している実施状況(安心R住宅調査報告書の提出件数)によれば、年度ごとの件数と累計件数は次の通りです。
| 年度 | 年間件数 | 累計件数 |
| 平成30年度(2018年度) | 1,266件 | 1,266件 |
| 令和元年度(2019年度) | 1,424件 | 2,690件 |
| 令和2年度(2020年度) | 1,201件 | 3,891件 |
| 令和3年度(2021年度) | 1,253件 | 5,144件 |
| 令和4年度(2022年度) | 1,769件 | 6,913件 |
| 令和5年度(2023年度) | 2,092件 | 9,005件 |
| 令和6年度(2024年度) | 1,937件 | 10,942件 |
| 令和7年度(2025年度) | 2,213件 | 13,155件 |
制度開始から2025年度までの累計件数は13,155件です。
年間の件数は毎年1,200〜2,200件程度で推移しており、直近数年はやや増加傾向にあるものの、中古住宅市場全体の取引件数と比べると、依然として一部にとどまっているのが実情です。
制度が「広く定着した」と言い切れる段階ではなく、少しずつ利用が積み上がっている、という状況として捉えるのが実態に近いと考えられます。
まとめ
☐ 安心R住宅は、耐震性・建物状況調査・情報開示という3つの基準を満たした中古住宅に付けられる標章
☐ 標章を使用できるのは、登録事業者団体(2026年8月時点で13団体)に属し、研修を修了した事業者に限られる
☐ 耐震性の基準は、原則として昭和56年6月1日以降の建築確認を受けていること
☐ 制度開始(2018年度)から2025年度までの累計提出件数は13,155件で、年間1,200〜2,200件程度で推移している
☐ 中古住宅を検討する際は、標章の有無だけでなく、調査報告書の内容を自分でも確認することが大切

