不動産協会やFP協会などでは、様々なテーマで一般消費者向けの講習会を定期的に行っています。
中でも「相続」に関係したテーマが人気で、少子高齢社会を反映した内容のものが多い印象です。
相続税の基礎控除が6割になったことで、相続税の対象者が3%から8%にまで増加しましたから、そういったことも影響しているのかもしれません。
図解不動産業シリーズなら不動産のことをマンガで学べる
住宅新報社という不動産関連に特化した書籍を販売している出版社があるのですが、発行している書籍に「図解不動産業シリーズ」というものがあります。
このシリーズでは、不動産実務に関することをマンガで説明しているので、暇つぶしに読むこともあります。
楽しめながら読めるだけでなく、ためになる本です。
このシリーズを集めているので、移動時間に立ち寄った本屋で相続コーディネート入門を見つけて購入して読みました。
本自体は、数年前に改定されて以降、そのままなので、最近の流行を抑えていませんが、相続対策の基本を知ることは出来る内容になってます。
この本では、相続コーディネーターという人が全ての相続についてコーディネートして、お客さんはそこに相談すれば相続に関しては全て解決できるという仕組みを紹介しています。
節税対策と納税対策は、税金に関することなので、税理士が窓口に立つことが多いです。
遺産分割対策では、弁護士、司法書士、行政書士などが窓口として話を進めていくことが多いです。
しかし、全ての窓口となる人が今まではおらず、税金は税理士、遺産分割は弁護士や司法書士など、そして所有不動産は不動産会社へ、お客さんがそのたびにそれぞれの専門家に相談するというのが一般的でした。
相続をコーディネートする人が窓口にたって全てをコーディネートできれば、お客さんにもわずらわしさが減るというメリットがあるわけです。
3つの相続対策+1
相続には3つの相続対策があると昔から言われています。
「節税対策」「納税対策」「遺産分割対策」の3つが昔から言われている相続対策です。
最近は、この3つに加えて「認知症対策」も重要視されています。認知症になったら相続対策自体がほぼできなくなるからです。
相続対策では、生命保険と不動産を利用したものが今もメジャーです。
しかし不動産は、節税対策では最も有利な資産ですが、遺産分割対策では争いになりやすいです。
相続財産に不動産が含まれていると争いになりやすい
日本では、個人の財産に不動産が占める割合が高いといわれています。
お金はないけど資産はたくさんあるといった人がいますが、こういう人は資産に占める不動産や有価証券の割合が高いからです。
有価証券なら売却も楽ですが、不動産となると少し面倒です。不動産の相続は、争いになりやすいといわれています。
理由としては、現金と違って分割が難しいことが挙げられます。また、不動産の評価が素人だと分からないため分割した結果不満が出やすいからです。
不動産を売却して現金化できますが、必ずしも現金化を望む相続人ばかりとは限りません。
不動産は分割が難しいことから、とりあえず共有で相続しておくといったケースが多いのですが、共有になると売却が困難になります。
さらに相続した人が死亡して、相続人がさらに増えたりすると、収拾がつかなくなります。
価値ある不動産が相続によって価値のない不動産になることも
協議がまとまらず相続人で不動産を共有して相続するのは、よく見られます。
価値のある不動産であっても、相続で価値が死ぬこともあります。
不動産は他人に貸し出しているため家賃収入があり、立地も一等地で満室経営だったのですが、数億円の価値がある投資物件を共有で相続したため、家族で争うことになったケースもあります。
また、相続人が高齢だと売却が難しくなることがあります。
ただでさえ共有は売却が難しいといわれているのに、高齢だと認知症の疑いと協議中に死亡することも起こります。
認知症になると不動産の売却が難しくなるのは知られています。
後見人制度では積極的な売却を認めていないため、売却しないと生活費がない等の理由がないと不動産の売却は認められないからです。
共有不動産でも法律上は売却できるかもしれませんが、他に共有者がいる不動産を購入しようと思う人は少数です。
結局共有の場合は、全員の同意が必要なので、認知症は本人が生きてる限りは不動産を処分できなくなります。
もし、その間に他の相続人が認知症になったり、死亡して相続人がさらに増えたりしたら、収拾がつかなくなってしまいます。
マンガで分かる相続の基本
相続に関することは、専門用語が多いのですが、図解されているので文字だけのものよりわかりやすいです。
目次
第1章 相続コーディネートに取り組むためのポイント(相続に取り組んだきっかけはこうだった
相続の最初から最後まで ほか)
第2章 知っておきたい相続の真実!(知っておきたい相続の真実
相続税は安くなる。評価を下げれば節税できる ほか)
第3章 知っておきたい!相続の基礎知識(誰が相続人になるのか
相続税がかかる財産・かからない財産 ほか)
第4章 相続コーディネートの実務とポイント(相続コーディネート手続のプロセス
相続のターニングポイントを理解する ほか)
第5章 相続コーディネートの実例(価値のある土地を残したHさん
収益のない自宅を賃貸住宅にしたKさん ほか)
著者は、現在は資格ビジネスみたいな怪しいこともしているみたいですが、この本で述べていることはもっともだと思います。
確かに相続の専門家はそれぞれ自分の分野だけの仕事で終わっているため、上手くいっているように見えて実はうまくいっていないことも多く、特に相続財産に不動産があると問題が潜在化してしまうことは考えらます。
本書は、不動産業者向けに書かれていますが、相続にかかわっている専門家や相続税がかかるといわれる人々にも読んで損はないと思います。
ただし、ここに書いてあるのは少し古いので、アップデートは必要だと思います。
基本的な相続は、評価を下げる相続税対策、納税資金をどのようにして準備するかの納税対策、円満な相続のための遺産分割対策は何十年も変わってないので一緒です。
さいごに
最近は、医療技術の発展により寿命が伸びていますが、それに比例して認知症の人も増えています。
厚生労働省の認知症対策推進総合戦略の概要によれば、現在は65歳以上の7人に1人が認知症とのことで、団塊の世代が75歳以上になる2025年には65歳以上の約20%(5人に1人)が認知症になるといわれています。
認知症対策になると相続対策自体ができなくなるので、早め早めの行動が大事です。