一棟のオフィスビルやマンションであれば、老朽化したら建て替えを考えます。この場合の建て替えは所有者が自分で決めればいいだけです。
しかし、所有者が複数いる区分所有マンションでは、建て替えに賛成する人と反対する人がいて住人の意見が分かれる可能性が高いです。
多くの区分所有マンションは、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで作られています。
木造や軽量鉄骨よりは頑丈で寿命も長いかもしれませんが、それでもいつかは老朽化します。
マンションを運営していくためには、修繕をどうするかや、エレベーターを新設するか、マンション内のルールである規約の変更をするか等、管理についての取り決めが必要になってきます。
区分所有マンションの管理について決議するのが集会(総会)です。
この記事から分かること
- 区分所有マンションの管理を決める「集会(総会)」の位置づけと議決権の考え方
- 普通決議・特別決議・建替え決議など、決議事項ごとに必要な賛成割合の違い
- 2026年4月施行の改正区分所有法で、建替え決議の要件が緩和されたポイント
- 建替え決議に反対した人がどのような立場に置かれるか(売渡請求権)
集会は区分所有者で構成される

区分所有者が構成員となって参加する集会は、管理組合の最高意思決定機関とされています。
マンションの規約や管理者の選任、違反行為者に対する請求、建て替えといったマンション管理の重要事項は集会によって決められます。
区分所有者になったときは、当然に組合員の資格を取得します。
区分所有法では、少なくとも毎年1回は集会(通常総会)が必要とされ、また、区分所有者の1/5以上、かつ議決権の1/5以上で議題を示して集会の招集を請求でき、管理組合の理事長は必要な場合に理事会の決議を経て集会を招集(臨時総会)できます。
集会では原則としてあらかじめ通知された事項についてだけ決議をすることができます。
集会の議決権は、原則は共用部分の共有持分の割合(専有部分の面積)によりますが、規約で別段の定めもできます。
ちなみに賃借人は所有者ではないので議決権はありません。しかし、物件の使用方法については規約や集会の決議の決議に遵うことになります。
そして、集会の決議事項には、普通決議事項と特別決議事項とがあります。
決議要件一覧|普通決議・特別決議・建替え決議の違い
| 決議の種類 | 必要な賛成割合 | 主な事項 |
| 普通決議 | 区分所有者・議決権の各過半数(標準管理規約では出席議決権の過半数) | 共用部分の管理(保存行為・重大変更を除く)、管理者の選任・解任、議長の選任、管理組合法人の理事・監事の選任・解任、共同利益違反行為者への行為停止等請求、小規模滅失の復旧 など |
| 特別決議 | 区分所有者・議決権の各3/4以上 | 共用部分の重大変更、規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の成立・解散、共同利益違反行為者への競売請求・引渡し請求、大規模滅失の復旧 など |
| 建替え決議 | 区分所有者・議決権の各4/5以上 | マンションの建替え、団地内建物の一括建替え |
| マンション敷地売却決議 | 区分所有者・議決権・敷地利用権の持分の価格の各4/5以上 | マンション敷地の売却 |
普通決議は原則として区分所有者と議決権の過半数で決まります。
標準管理規約では、議決権総数の半数以上が出席したうえで、出席組合員の議決権の過半数で決まるとされています。
標準管理規約というのは、管理規約のモデルをいい、一般分譲の住居専用マンションの見本である「単棟型」、土地に住居専用マンションが数棟ある場合の「団地型」、一階店舗でその上が住居といった「複合用途型」の3タイプがあります。
これらの標準管理規約をもとに、それぞれのマンションの実情に応じて、法律に反しない範囲で修正・削除・追加されます。
なお、保存行為(マンションの価値を維持するために行う行為)は普通決議によらずに行うことができます。
特別決議は重要な事項が多いので、普通決議より厳しい要件になっています。
建替え決議はさらに厳しく、区分所有者・議決権の各4/5以上が必要です。
建替え決議の要件が緩和されました
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これまで建替え決議は区分所有者・議決権の各4/5以上という高いハードルがありましたが、2026年4月1日に施行された改正区分所有法により、一定の条件を満たす場合には要件が緩和されました。
- 耐震性不足など一定の要件を満たす場合→ 4分の3に緩和
- 政令指定災害による被災の場合→ 3分の2に緩和
- 所在不明の区分所有者は、裁判所の認定を受けることで決議の母数(分母)から除外可能に
あわせて、建替え以外の再生手段として「一括売却決議」「敷地売却決議」「建物取壊し決議」「全部改良決議(一棟リノベーション)」が新設され、いずれも原則4/5(要件を満たせば緩和あり)で実行できるようになっています。
老朽化マンションが増えるなかで、建替え以外の選択肢も現実的に取れるようになったのが今回の改正の大きなポイントです。
まとめ
区分所有マンションに居住する人は多数いるので、資産の状況も様々です。
追加で建て替え費用が必要になっても大丈夫な人がいれば、年金生活で資産を取り崩しながら細々と生活している人もいます。
最近では、組合員の高齢化、無関心な組合員の増加で運営に支障が出ているマンションも増えています。
建替え決議が可決された場合、建替え決議に賛成した人(建替えに参加する人)は、反対して不参加の人に対して、区分所有権等を時価で売り渡すように請求することができます(売渡請求権)。
これは形成権であり、請求を受けた反対者は拒否することができず、請求の時点で売買契約が成立します。
マンションに住み続けたい反対者にとっては重い制度である一方、建替え自体を進めやすくするための仕組みでもあります。
マンションの建替え事例がそもそも多くない中、2026年の法改正で決議要件の緩和や新たな再生手段が整備されたことで、今後は老朽化マンションの再生が進みやすくなることが期待されます。

