不動産のトラブルで上位に入るのが土地の境界の問題です。
今回は、なぜ境界トラブルが起きやすいのか、その背景と対処法を解説します。
この記事から分かること
- 土地の境界トラブルが多い理由(不動産制度の分かりにくさ)
- 公図・登記簿が必ずしも正しいとは限らない背景
- 公簿売買と実測売買の違い
- 越境した枝・根の取り扱い(2023年民法改正後のルール)
なぜ境界トラブルは起きやすいのか
日本の土地は、誰かしらの所有に属するはずですが、一目見て誰の土地であるかは分かりません。
現在住んでいる人がいるからといって、その人がその不動産を所有しているとは限りませんからややこしいのです。
土地は、個人で保有していることがあれば、会社で保有していることもありますし、国や地方自治体が所有していることもあります。
相続をきっかけに多くなるのが共有ですが、共有だと一つの土地に所有者が二名以上存在することになります。
共有名義の土地全部を処分するには全員の同意が必要なので、二次、三次と相続が続いて一等地なのに放置されてる土地もあります。
このように不動産自体が分かりにくく複雑であるため、土地の境界にまつわる問題も分かりにくく、結果としてトラブルに発展しやすくなります。
不動産を分かりにくくしてるもの

土地の境界でもめる原因の一つが、不動産自体がわかりにくいということです。
不動産は生活にとても身近なものなのに、不動産取引は法律が絡むため分かりにくく、また、不動産価格も不動産業者でない限り、相場が分かりにくいと言われます。
不動産取引では法律用語が飛び交うため、法律に触れたことがない人にとっては難しく感じるようです。また、不動産価格は常に変動しますし、個人対個人の相対取引であるため不動産価格の把握が難しいです。
不動産では、建物と土地のそれぞれの所有者が異なることもあります。
外国の中には、建物は土地の従物という扱いになっており、所有者が一緒という国もあります。
しかし、日本の不動産制度では土地と建物は別物という考えですから、これも分かりにくい要因となっています。
また、住所とは別に土地には地番という番号が付けられています。
「住所は三丁目の6-3なのに、地番は1112だけど、どうゆうことか?」なんて質問を受けることもあります。
同じ住所の一つの土地なのに、住所と地番が違うことも不動産を分かりにくくしているのかもしれません。
土地の数え方の単位は、一筆、二筆というように筆が単位で数えるのですが、土地と建物を購入したら土地が5筆だったということもあります。
同じ人の所有権でも、土地を分けたりする(分筆)ことがあれば、別々の土地を合体させる(合筆)することもあるように、そもそも住所と地番は別物です。
こうした制度の違いが、不動産をより分かりにくくしている一因です。
当事者間の認識の違いが生むトラブル

ここまで不動産は目に見えないから分かりにくいとか、制度自体が分かりにくいと言いましたが、分かりにくいことは当事者間の認識のずれを生じさせることにもなります。
よくあるのが、Aさんは1-1という1筆の土地が自分の所有だと認識していたら、隣のBさんも自分の所有だと認識していたため、両者が譲らず争うというケースです。
お隣さん同士何十年も仲良くやってきたのに、土地の認識の違いで関係がこじれるといった話は珍しいことではありません。
例が多くないかもしれませんが、民法には時効取得というものがあります。
例えば、本当は他人の土地なのに、自分のものと認識して長年使用してきた場合に、本来は所有権がないのですが、法律で所有を認めてしまおうというものです。なかには本来の所有者なのに普段から近所付き合いのある人だったので放っておくこともあるかもしれません。
取得時効によって土地を取得した人と、土地を失った人が今後も良好な関係を築けるかといわれたら……まあ、疑問です。
これも当事者の認識の違いからくるものです。
庭を手入れしたとか、外構工事をしたことで、見た目が変わって土地の境界について誤解が生じることもあります。
当初はお互いが正しく認識していたとしても、時間の経過とともに境界の認識がずれてくることもあるようです。
公図も登記も必ずしも正しいとは限らない

公図というのは土地の図面をいい、登記というのは法務局に登録してある不動産の情報です。
公図の歴史は明治時代の地租改正事業にさかのぼり、当時は土地の図面を所有者自身が作成して提出していました。
中には精度の低いものもあったとされ、古い公図をそのまま信頼するのは難しい場合があります。
測量技術が発展した現在でも、面積や長さに多少の誤差が生じることはあります。
登記簿には不動産の所有権や抵当権に関する情報のほか、面積も記載されています。
ただし公図の精度に限界がある以上、登記簿上の面積も実際とは異なる可能性があります。
こうした背景もあり、不動産取引では「公簿売買」がよく行われています。
公簿売買と実測売買の違い

不動産取引には、公簿売買と実測売買があります。
都心の一等地では、わずかな面積の違いが数百万〜数千万円規模の差になることがあるため実測売買が行われることが多く、地方など土地価格がそれほど高額でない場合は、測量費用の負担も踏まえて公簿売買が選ばれる傾向があります。
公簿売買
公簿売買は、登記簿に記載された所在・地番・面積に基づいて取引を行う方法です。
登記簿上の面積と実際の面積が異なっていても、清算は行いません。
実測売買
実測売買は、実際に土地を測量し、実測面積に基づいて取引を行う方法です。
登記簿上の面積との差額は後日清算されます。
境界標も絶対ではない

土地の境界には境界標が設置されているのが一般的です。
境界標があれば境界に間違いないと思われがちですが、必ずしも正確とは限りません。
当事者間で境界を簡易的に決めていたり、まれに境界標が移動されているケースもあるためです。
境界を確定する必要がある場合、当事者間の話し合いだけでなく、法務局の「筆界特定制度」(行政による筆界の判断)や、裁判所での「境界確定の訴え」といった手続きを利用することでより明確になります。
境界標は境界を示す重要な目印であり、無断での移動・撤去は禁止されています。
越境の問題
境界をめぐっては、越境の問題もトラブルになりやすいポイントです。
庭木の枝や根が隣地に越境することがあります。
民法では、越境した根は自分で切り取ることが認められています。
一方、枝については、従来は竹木の所有者に切除を求める必要がありましたが、2023年4月の民法改正により、竹木の所有者に切除を催告しても相当期間内に対応されない場合や、所有者が不明な場合など、一定の条件のもとで越境された側が自ら枝を切除できるようになりました。
なお、リフォームなどのために最小限度の範囲で隣地に立ち入ることは法律上認められていますが、実施の際は事前の説明や配慮を欠かさないことが、後のトラブルを避ける上で大切です。
まとめ
土地の境界に限らず、不動産はトラブルが生じやすい分野です。
主な理由として、次のような点が挙げられます。
- 公図が必ずしも正しいとは限らないこと
- 登記も必ずしも正しいとは限らないこと(日本の不動産登記は公信力を持たない)
- 不動産制度自体が分かりにくいこと
- 境界が目に見えないこと
- 不動産が高額であること
- 当事者間で認識の違いが生じやすいこと
不動産の種類によって、起きやすいトラブルの傾向も異なります。
- 賃貸:賃貸人との関係、隣人トラブル、金銭トラブル
- 区分マンション:管理費・修繕積立金の不足、滞納トラブル、騒音トラブル
- 戸建て:境界トラブル、通行トラブル
境界トラブルを避けるためには、普段からの近隣との良好な関係づくりも大切です。
認識の違いに気づいた際は、感情的にならず早めに専門家へ相談することをおすすめします。

