宅建業者講習に参加してきました。
不動産会社が加入する保証協会では、宅地建物取引業法第64条の6に基づき、業務に従事する人向けの研修を実施することが義務付けられています。
宅地建物取引業保証協会は、一定の課程を定め、宅地建物取引士の職務に関し必要な知識及び能力についての研修その他宅地建物取引業の業務に従事し、又は従事しようとする者に対する宅地建物取引業に関する研修を実施しなければならない。
これは保証協会側に研修の「実施」を義務付ける規定であり、宅建士証の更新に必要な法定講習(64条の4)とは別のものです。
かつては、この講習の受講証に押印を受け、免許更新時に提出することが運用上求められていましたが、新型コロナウイルスの影響を受けて以降、受講証の押印・提出は不要になっています。
ただし、これは手続き上の証明義務がなくなっただけで、講習の受講自体は引き続き推奨されています。
直近1年間に実際にあった相談・紛争事例をもとに、不動産会社がどう対応すべきだったかが解説されるため、実務上の価値は高く、筆者も可能な限り参加するようにしています。
今回は、実際の講習で取り上げられた事例の中から、土地と建物の契約をめぐるトラブルを紹介します。
これから土地を購入して家を建てようと考えている方にとって、実務上とても参考になる内容です。
この記事から分かること
- 不動産会社が定期的に受けている「宅建業者講習」とはどんな研修か
- 建築確認が下りる前に契約してしまい、トラブルに発展した実際の事例
- 宅建業法36条(契約締結等の時期の制限)が定めている内容
- 接道義務の例外(建築基準法43条2項の認定・許可制度)
- 土地を買って家を建てる際に確認しておきたいポイント
実際にあったトラブル事例

以下は、宅建業者講習で使用された資料からの事例です。
アパート経営を計画していた相談者(買主)は、媒介業者Aの仲介で、売主業者Bとの間で「第三者が所有する土地」について売買契約を締結すると同時に、Bとアパートの建設工事請負契約を結びました。
さらに同じ日付で、相談者とBは「建築確認が下りたら、この契約を土地付き建物の売買契約に差し替える」という契約変更の覚書を交わしました。
ところが、その後相談者の融資が否認されたことから、契約解除をめぐるトラブルに発展しました。
なぜこの契約が問題だったのか

宅地建物取引業法第36条(契約締結等の時期の制限)では、次のように定められています。
宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物につき、自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない。
簡単に言うと、宅地造成の許可や建物の建築確認が下りる前に、その土地・建物の売買契約を締結してはならないというルールです。
今回の事例では、建築確認が下りる前に「土地売買契約」と「建設工事請負契約」を別々に結び、建築確認が下りた後で両者を「土地付き建物売買契約」に一本化しようとしていました。
これは、実質的に建築確認前の土地付き建物売買と変わらないにもかかわらず、契約形式を分けることで宅建業法第36条の規制を回避しようとするものと判断され、同法第65条第1項第2号(業務停止処分等の対象)に該当するおそれがあると指摘されています。
さらに、契約を一本化した後の売買代金をもとに媒介報酬を請求することも、報酬額の上限を定めた同法第46条第2項に違反するおそれがあるとされました。
国土交通大臣・都道府県知事は、宅建業法第72条に基づいて、こうした取引の実態を調査する権限を持っています。
今回の事例も、この調査によって詳しい経緯が明らかになりました。調査の結果、A・B双方は「買主が土地だけでも先に押さえたいと強く希望したため、イレギュラーな契約になった」「契約解除になったため、実際には契約の一本化も報酬請求も行っていない」と釈明しています。
買主として知っておきたいポイント
この事例から、土地を購入して家を建てる際に注意すべき点が見えてきます。
- 建築確認が下りる前の契約には、法律上の制限があることを理解しておく
- 土地の売買契約と建設工事請負契約を「別々に」結ぶよう提案された場合、その理由をきちんと確認する
- 融資の可否は、契約前に金融機関の事前審査で見通しを立てておく
- 契約内容に「建築確認後に契約を差し替える」といった覚書が付いている場合は、その意味とリスクを十分に理解してから署名する
イレギュラーな契約形式は、買主側の希望(「土地だけでも早く押さえたい」など)から生じることもあります。
しかし、その結果、後々のトラブルや融資否認時の解除交渉が複雑になるリスクがあることは、知っておいて損はありません。
接道義務の例外にも改正がある(建築基準法43条2項)

同じ講習では、平成30年9月25日施行の「建築基準法第43条第2項」も取り上げられました。
建物を建てる際は、原則として道路に敷地が接していなければなりません(接道義務)が、特定行政庁が交通上・安全上・衛生上支障がないと認めた場合は、例外的に建築が認められます。
改正前は「43条1項ただし書き」と呼ばれていたこの例外規定は、法改正により次の2つに整理されました。
- 43条2項1号(認定制度):敷地が幅員4m以上の道に2m以上接し、利用者が少数であるなど一定の基準を満たす建築物について、特定行政庁が個別に認定するもの
- 43条2項2号(許可制度):敷地の周囲に広い空地があるなど一定の基準を満たす建築物について、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可するもの
この改正内容や、道路の基準を定めた建築基準法施行規則第10条の3についても、講習で解説されました。
まとめ
- 宅建業者講習は保証協会が実施する研修で、コロナ以降は受講証の押印・提出が不要になったが、受講自体は引き続き推奨されている
- 建築確認前に土地売買契約と建設工事請負契約を分けて結ぶ手法は、宅建業法36条の規制を回避するものとみなされるおそれがある
- 融資否認による契約解除トラブルは、建築確認前の変則的な契約から生じやすい
- 土地を買って家を建てる際は、契約形式や融資の見通しを事前にしっかり確認することが重要
- 接道義務の例外(43条2項1号・2号)は、平成30年の法改正で認定制度と許可制度に整理された
土地の購入や建築請負契約を検討する際は、契約の形式が通常と異なっていないか、建築確認や融資のタイミングに無理がないかを、契約前に確認することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約内容や取引の適法性を判断するものではありません。実際の契約にあたっては、宅地建物取引士や専門家にご確認ください。本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

