一棟のオフィスビルやマンションであれば、老朽化したら建て替えを考えます。この場合の建て替えは所有者が自分で決めればいいだけです。
しかし、所有者が複数いる区分所有マンションでは、建て替えに賛成する人と反対する人がいて住人の意見が分かれる可能性が高いです。
多くの区分所有マンションは、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで作られています。
木造や軽量鉄骨よりは頑丈で寿命も長いかもしれませんが、それでもいつかは老朽化します。
マンションを運営していくためには、修繕をどうするかや、エレベーターを新設するか、マンション内のルールである規約の変更をするか等、管理についての取り決めが必要になってきます。
区分所有マンションの管理について決議するのが「集会(総会)」です。
集会は区分所有者で構成される
区分所有者が構成員となって参加する集会は、管理組合の最高意思決定機関とされています。
マンションの規約や管理者の選任、違反行為者に対する請求、建て替えといったマンション管理の重要事項は集会によって決められます。
区分所有者になったときは、当然に組合員の資格を取得します。
区分所有法では、少なくとも毎年1回は集会(通常総会)が必要とされ、また、区分所有者の1/5以上、かつ議決権の1/5以上で議題を示して集会の招集を請求でき、管理組合の理事長は必要な場合に理事会の決議を経て集会を招集(臨時総会)できます。
また、集会では原則としてあらかじめ通知された事項についてだけ決議をすることができます。
集会の議決権は、原則は共用部分の共有持分の割合(専有部分の面積)によりますが、規約で別段の定めもできます。
ちなみに賃借人は所有者ではないので議決権はありません。しかし、物件の使用方法については規約や集会の決議の決議に遵うことになります。
そして、集会の決議事項には、普通決議事項と特別決議事項とがあります。
普通決議事項は過半数で可決される
区分所有法では、普通決議は原則として区分所有者と議決権の過半数で決まるとされています。
標準管理規約では、普通決議は議決権総数の半数以上が出席したうえで、出席組合員の議決権の過半数で決まるとされています。
標準管理規約は管理規約のモデルです。
この標準管理規約には、一般分譲の住居専用マンションの見本である「単棟型」、土地に住居専用マンションが数棟ある場合の「団地型」、一階店舗でその上が住居といった「複合用途型」の3タイプがあります。
これらの標準管理規約をもとに、それぞれのマンションの実情に応じて、法律に反しない範囲で修正・削除・追加されます。
区分所有法で普通決議で決められる事項とされているもの
・共用部分の管理に関する事項(保存行為および重大変更のぞく)
・区分所有者の共有に属する敷地または付属施設の管理に関する事項(保存行為および重大変更のぞく)
・管理者の選任・解任
・管理者に対する訴訟追行権を認めること
・議長の選任
・管理組合法人の理事および監事の選任・解任
・代表理事の選任・共同代表の定め
・管理組合法人の事務
・共同利益違反行為者の行為停止等の請求
・共同利益違反行為者に対する訴訟で、管理者への訴訟追行権を認めること
・小規模滅失の復旧
保存行為は普通決議によらずでき、重大変更は特別決議で決まるので除かれてます。
特別決議事項は普通決議より厳しい
特別決議は重要な事項が多いので、普通決議より厳しい要件になっています。
区分所有者および議決権の各3/4以上が必要
・共用部分の重大変更
・区分所有者の共有に属する敷地及び付属施設の重大変更
・規約の変更・設定・廃止
・管理組合法人の成立・解散
・共同利益違反行為者の区分所有権の競売請求
・共同利益違反行為者の占有者への引渡し請求
・大規模滅失の復旧
・団地内の区分建物の、団地規約を定めることの各棟の承認
区分所有者および議決権の4/5以上が必要
・建て替え決議
・団地内の建物の一括建替え決議
区分所有者、議決権および敷地利用権の持分の価格の各4/5以上
・マンション敷地売却決議
おわりに
区分所有マンションに居住する人は多数いるので、資産の状況も様々です。
追加で建て替え費用が必要になっても大丈夫な人がいれば、年金生活で資産を取り崩しながら細々と生活している人もいます。
最近では、組合員の高齢化、無関心な組合員の増加で運営に支障が出ているマンションも増えています。
建替え決議が可決された場合に、反対する人は賛成する人に対して買取るように請求することができるとされていますが、事はそう簡単ではありません。
マンションの建替え事例がそもそも多くないので、今後は老朽化が問題になる区分所有マンションが増えると思います。引き続きチェックが必要です。