今の日本では、少子高齢社会の問題なしには多くのことが考えられなくなりました。
人口減少、年金不安、空家問題……こうしたニュースを見ない日はなくなり、少子高齢化は日常のことになりました。
不動産については、今でも「横浜なら大丈夫」「住宅ローンは完済すれば安心」「マンションの管理は管理会社に任せておけば大丈夫」といった昔の常識が前提のまま語られる場面が少なくありません。
日本の人口構造が大きく変わったように、不動産を取り巻く前提条件も変わり始めています。
それは、価格の上下といった表面的な話だけでなく、街・建物・家計の持続性にもかかわる問題です。
ただ、少子高齢社会だからといって将来に過度な不安を感じる必要はなく、重要なのは変わりつつある現実を正しく知り、自分に合った選択肢を持つことです。
今回は、不動産(宅建士)、家計(1級FP)、マンション管理(マンション管理士)といった3人の専門的な視点から、少子高齢社会において住まいをどのように選び、維持していくかを整理していきます。
日本が直面する3つの不都合な現実

人口減少時代の到来と空家の急増
日本の人口は2008年にピークを迎え、今では年間の死亡者数が150万人を超え、出生数を大幅に上回る状況が続いています。
今の日本の現状は、人口が自然減少する、いわゆる多死社会に本格的に入ったといえます。
不動産市場では、家が余ることが前提となる市場になっているため、立地の悪い物件は売却も賃貸も難しくなるリスクが高まっています。地方を中心に維持費だけがかかる負動産になるケースが増えています。
インフラ維持コストの増大
道路や水道といった公共インフラ、分譲マンションの建物や設備は、高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、今はその多くが更新時期を迎えています。
神奈川で唯一消滅可能都市といわれている三浦市では、人口の減少が続いており、その影響としてインフラ維持の増加が課題になっています。
実際、私の知人の中には、水道料金の大幅な値上げが予定されていることをきっかけに、将来の生活コストを考えて転居を決断した人もいます。
また、マンションでも空き家が増える一方で、建物の老朽化に伴う修繕コストは増え続けています。こういった構造的なギャップが続けば、管理不全に陥るマンションが増える可能性があります。
インフレと金利上昇への転換
日本では、長くデフレと超低金利の時代が続いてきましたが、近年は物価上昇とともに金利も上昇局面に移行しつつあります。
今までのように「貯金していれば安心」「低金利だからフルローンでよい」といった考えでは、将来のリスクを高める原因になりかねません。
インフレ時代は現金が目減りし、金利が上昇すれば住宅ローンの負担は重くなるのが現実です。こういったことを理解せずに判断することは将来のリスクにつながります。
第1章:不動産の専門家(宅建士)の提言

人口減少が加速させる「地価の二極化」とは?
以前であれば、横浜の土地ならどこでも安心でしたが、今は横浜でも二極化が徐々に進みつつあります。
横浜以外の都市では、少子化で若者が減り、自治体がインフラを将来にわたって維持できるかが大きな課題になっています。
その結果、行政サービスやインフラを集約するコンパクトシティ化が進むエリアと、そうでないエリアとで、生活の利便性や不動産の価値に差が生じつつあります。
宅建士の提言
今後の不動産選びでは、物件のスペックだけでなく、その街が30年後もどれだけ人口を維持できるかという視点を持つことも大切です。
宅建士の立場からは、不動産の立地だけでなく、その街の住みやすさや都市の方向性を見据えて不動産を選ぶことを提言します。
第2章:家計の専門家(1級FP)の提言

人生100年時代のキャッシュフロー戦略
今から30年ほど前は、不動産を相続しても売却すれば現金化できるのが普通でした。しかし、昨今の日本では価格をいくら下げても買い手が見つからない不動産が出てくるようになりました。
また、住宅ローンを完済しても安心とは限らず、建物の修繕コストの値上がりなど、住まいにかかるコストは生涯続きます。
少子化で年金が不安な中、不動産を保有していることが負債になっている家庭も増えつつあります。
現在進行形でローンを返済している人にとっては、金利が上昇すれば、毎月の返済が数万円単位で増えるリスクもあります。
FPの提言
FPとしては、金利上昇リスクと老後資金を同時に考え、住まいを持ち続ける前提ではなく、必要に応じて換金できる資産として考えることをおすすめします。
また、固定金利が上昇してしまった現在、あえて変動金利から急いで固定金利に借り換えず、借り換えたつもりで生じる差額を積立て投資に回すことも有効な選択肢の一つです。
将来、変動金利が固定金利を上回りそうなら繰上げ返済に充てることがきますし、あえて繰上げ返済をせずに老後の資金として活用する選択も可能です。
第3章:マンションの専門家(マンション管理士)の提言

分譲マンションを取り巻く二つの老い
マンションを購入するうえで、避けて通れないのが二つの老いです。
一つは建物の老い、もう一つは住民の老いです。
建物は、築年数の経過とともに外壁や設備、給排水管が老朽化し、定期的な修繕や取替が必要になります。
住民の老いが進めば、修繕積立金の値上げに対する合意が得られず、修繕積立金の不足で将来の修繕ができなくなる可能性が出てきます。
また、少子化で新しい入居者が入らず、マンションが高齢者ばかりになれば、理事会のなり手が不足するかもしれません。
- マンションの老い→建物の老朽化
- 住民の老い→年金暮らしの為、修繕積立金の値上げができない
マンション管理士の提言
分譲マンションを購入する時は、検討段階から管理規約と修繕計画を調べ、将来にわたって管理が機能するかを見極めることが重要です。
マンション管理士の立場からは、安いだけでなく、将来にわたって価値を維持できるかという視点を持って物件選びをすることを提言します。
また、マンションの組合員になったのであれば、管理を他人任せにせず、一定の関心を持って積極的にかかわっていく姿勢も重要です。
まとめ
少子高齢社会の不動産選びとして、今回紹介した不動産(宅建士)、家計(FP)、マンション管理(マンション管理士)という3つの視点は、1つのライフプランという線でつながっています。
土地や立地の選択は、将来その不動産を「売れるのか」「住み続けられるのか」という出口に直結します。
住宅ローンや修繕費、老後資金といった家計の問題は、長生きするほど重要性を増していきます
そして、マンションであれば、建物だけでなく「住民」と「管理体制」が将来の資産価値を左右します。
どれか一つだけを見て判断すると、「買ったときは良かったが、後になって重荷になる」という事態になりかねません。
少子高齢化が進むこれからの時代に必要なのは、物件単体で見るのではなく、全体の中で住まいをどう位置付けるかという視点かもしれません。
不動産は、人生で最も高額な買い物の一つだからこそ、
- その街に人は残るのか
- その家計は長く持続するのか
- そのマンションは将来も管理され続けるのか
こうした問いに向き合うことが、将来の安心につながります。
大切なのは、現実を知ったうえで、自分自身のライフプランに落とし込み、納得できる選択をすることです。
不動産は買って終わりではなく、住み続けながら、見直し続けていくものです。その視点を持つことが、少子高齢社会を生き抜く住まい戦略の第一歩といえるのかもしれません。
