2019年度の年金額が0.1%の増額となりました。
この話は年末年始にニュースにもなっているので、ご存知の方も多いかと思います。
しかし、年金がどのようにして増額したかまでご存知の方は、そう多くはないと思います。
理由は年金制度が複雑なためです。
年金額について、「年金は物価に連動してるからインフレに強い」といったことが言われてますが、実際はそう単純ではありません。
公的年金には、大きく国民年金と厚生年金がある
まず最初に、公的年金について基本的なことをお話しします。
公的年は、大きく分けると「国民年金」と「厚生年金」とに分けられます。
日本は、「国民皆年金制度」を取っているため、日本国民は何かしらの年金制度に加入しています。
そして、国民年金は基礎年金といわれるように、日本国民全てが対象になる年金です。
厚生年金や共済年金は、2階部分とか上乗せ年金といわれ、厚生年金の被保険者期間に対応する年金を国民年金と一緒に受け取れます。
厚生年金は会社員、共済年金は公務員の人などが対象になります。
そのため自営業者や会社員の専業主婦の期間が長い人は、それだけ受け取れる年金が少なくなります(厚生年金と比較して)。
引用 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/shurui-seido/20140710.html
国民年金の保険料は定額ですが、厚生年金の保険料は一定の率になっているので、厚生年金は報酬が大きいほど支払う保険料が高くなります。
そのかわり受け取る年金も大きくなるため、報酬が多ければ比例して年金も多くなります。
ということは、厚生年金の年金額はその人の報酬や被保険者期間次第となります。
反対に国民年金は、自営業者でも学生でも、無職の人でも対象になるので、未払いや免除の期間がなければ満額の対象となることになります。
国民年金の満額
国民年金の満額は、780,900円に物価変動や手取り賃金を考慮した改定率を乗じて求めます。
改定率は、前年の改定率を改定したものがその年度の改定率として使われます。
改定の方法は、新規裁定者か既裁定者かによって基準となる指標が異なります。
新規裁定者とは68歳未満の年金受給者をいい、既裁定者とは68歳以上の年金受給者をいいます。
そして、新規裁定者は名目手取り賃金変動率が、既裁定者は物価変動率といった指標が改定に使用されます。
ただし、名目手取り賃金変動率と物価変動率の2つが上昇し、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る時は、両者とも名目手取り賃金変動率を基準として年金額が改定されます。
そして、平成30年の名目手取り賃金変動率はプラス0.6%、物価変動率はプラス1.0%という結果なので、基準はプラス0.6%となります。
マクロ経済スライド
現在は、年金額の伸びを抑制するためにマクロ経済スライド制が取られています。
長生きは素晴らしいことばかりではありません。
ある一定の年齢からどれだけ生きるかを余命と呼びますが、平均余命が伸びるということは、今後年金受給者がどんどん増えることを意味します。
マクロ経済スライドでは、平均余命の伸びが考慮されて、年金額が抑制されます。
また、少子高齢社会では、働き手が減少していくことが想定されるので、被保険者数の変動を改定率に盛り込むことになっています。
マクロ経済スライドでは、公的年金の被保険者数の減少が考慮されて、年金額の伸びが抑制されます。
平均余命の伸びと公的年金の被保険者数の合計をスライド調整率といい、平成31年度のスライド調整率はマイナス0.2%でした。
キャリーオーバー制度
平成30年度からは、マクロ経済スライドによる調整が行われなかった場合の未調整分を翌年度に持ち越すキャリーオーバー制度が導入されました。
翌年度に持ち越されたキャリーオーバー分は、翌年以降にマクロ経済スライドが適用されれば、その時に繰り越された分の調整を行います。
平成30年度は、スライド調整率マイナス0.3%が実施されず、繰り越されたため平成31年度はその分の調整を行います。
名目手取り賃金変動率プラス0.6%に、スライド調整率マイナス0.2%、キャリーオーバー分のマイナス0.3%の率をそれぞれ乗じます。
その結果、平成31年度の改定率は「0.1%」の上昇となりました。
平成31年度(2019年)の国民年金の満額
国民年金の満額は、「780,900×改定率」で求めますが、改定率は前年の改定率を改定して行います。
前年の改定率は0.998だったので、平成31年度の改定率は0.999となります。
その結果、780,900×0.999=780,100円(50円未満切り捨て50円以上100円に切り上げ)となりました。
平成31年度の国民年金の満額は、780,100円となります。
まとめ
国民年金の満額は「780,900円×改定率」によって計算する。
マクロ経済スライドは、年金の伸びを抑制する制度である。
マクロ経済スライドでは、平均余命の伸びと公的年金被保険者数の減少による調整が行われる。
平成30年度から実施されたキャリーオーバー制により、マクロ経済スライドで調整されなかった未調整分は、翌年度以降に繰り越される。
どうも今の政府を見てる限り、いかに税金・保険料を多く取り、年金はどうすれば支給しないで済むか、といったことを手を変え品を変えで実施しようとしてる気がします。
将来のお金について考えておく重要性が増してます。