建物は古くなるほど固定資産税が安くなると思われがちですが、家屋の評価額は「建て直した場合の費用」の20%で下げ止まるといわれています。
築20〜25年の木造住宅は、売却査定で「建物価値ゼロ」とされることが珍しくありません。
それでも固定資産税の評価額は「建て直した場合の費用」の2割で下げ止まり、税金はかかり続けます。
木造住宅は築25年、鉄筋コンクリートのマンションは築60年が目安とされています。
ほとんどの人が知らないこの仕組みと税額の目安を、宅建士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士が解説します。
この記事から分かること
- 家屋の固定資産税評価額は「再建築価格 × 経年減点補正率」で決まる
- 経年減点補正率は20%が下限。木造住宅は築25年、鉄筋コンクリートの共同住宅は築60年が目安
- 建築費が上がると、古い家でも評価額が下がらないことがある
- 売却査定で「建物価値ゼロ」と言われても、固定資産税はかかり続ける
- 空き家を放置すると、土地の税額が上がる可能性がある
古い家ほど固定資産税は安くなるは半分だけ正しい

建物は年数がたつほど価値が下がるので、固定資産税も下がり続けると思われています。
実際には、家屋の評価額はある時点で下げ止まり、その後はほぼ横ばいになります。
築30年、40年の家でも、固定資産税はゼロにはならないことになります。
家屋の評価額の決まり方
家屋の固定資産税評価額は、次の式で計算されます。
評価額 = 再建築価格 × 経年減点補正率
- 再建築価格: 評価する時点で、同じ建物をその場所に新しく建てた場合にかかる費用
- 経年減点補正率: 建ってからの年数による価値の減り具合
ポイントは、評価の基準が「新築時の価格」ではなく「今建て直したらいくらか」である点です。
経年減点補正率は20%で下げ止まる
経年減点補正率は年数とともに下がりますが、20%に達すると、それ以上は下がりません。
20%に達する年数の目安は次のとおりです。
| 建物の種類 | 20%に達する年数の目安 |
| 木造の専用住宅 | 25年 |
| 鉄筋コンクリート造の共同住宅(マンション) | 60年 |
※構造や床面積当たりの単価によって年数は異なります。
木造の戸建ては築25年前後で下げ止まります。
マンションは60年かけてゆっくり下がるので、築年数のわりに固定資産税が下がらないと感じやすい建物といえます。
建築費が上がると、古い家でも下がらない
再建築価格は、3年に1度の評価替えで、その間の建築物価の変動を反映して見直されます。
2024年度(令和6年度)の評価替えでは、3年間の物価変動を反映する補正率は次の値でした。
| 構造 | 再建築費評点補正率 |
| 木造 | 1.11 |
| 非木造 | 1.07 |
建築費が上がる分、経年による減価が打ち消され、古い家でも評価額が下がらないことがあります。
なお、評価替えで計算した額が前年度の評価額を上回る場合は、前年度の評価額に据え置かれます。
そのため、古い家の税額が上がることはありません。
税額の試算:木造戸建ての場合
新築時の家屋の評価額を1,200万円とした場合の試算です。
| 時期 | 家屋の評価額 | 固定資産税(1.4%) | 都市計画税(0.3%) | 合計(年) |
| 新築から3年度(減額あり) | 1,200万円 | 8.4万円 | 3.6万円 | 12.0万円 |
| 減額終了後 | 1,200万円 | 16.8万円 | 3.6万円 | 20.4万円 |
| 築25年以降(下げ止まり) | 240万円 | 3.4万円 | 0.7万円 | 約4.1万円 |
※都市計画税は横浜市の税率0.3%で計算。新築住宅の減額(固定資産税の2分の1、120㎡まで)は全床面積に適用されたと仮定しています。再建築価格の変動は考慮していません。土地の税額は含みません。
築25年以降は、評価額が新築時の2割前後で横ばいになります。
この例では、家屋分だけで毎年約4万円がかかり続けます。
新築住宅の減額が終わると、一度上がる

新築住宅には、固定資産税を2分の1にする減額措置があります。
期間は一戸建てが3年度分、3階建て以上の耐火・準耐火住宅(マンションなど)が5年度分です。
減額が終わると税額は一度上がるので、入居から数年後に「固定資産税が急に増えた」と感じる人も少なくありません。
「建物価値ゼロ」なのに税金がかかる理由
中古住宅の売却査定では、木造の建物は築20〜25年ほどで「建物価値はほぼゼロ」とされることがよくあります。
一方、固定資産税の評価額は再建築価格の20%で下げ止まります。
市場では値段がつかない建物にも、税金はかかり続けます。
なお、家屋の評価額が20万円未満なら、免税点として固定資産税はかかりません。
ただ、再建築価格の20%が20万円を下回るのは、かなり小さな建物に限られます。
空き家で本当に注意したいのは土地の税金
住宅が建っている土地には、固定資産税を最大6分の1にする「住宅用地の特例」があります。
ところが、空き家を管理せずに放置し、市区町村から「特定空家」や「管理不全空家」として勧告を受けると、この特例が外れます。
そうなると、土地の固定資産税が大幅に上がる可能性があります。
相続した実家を空き家のまま持ち続ける場合、建物の税金が下がらないことに加えて、管理を怠ると土地の税金まで上がるリスクがあります。
家を買うとき・相続するときに考えておきたいこと

家を買うとき
- 固定資産税は住んでいる限りずっとかかる維持費として、ライフプランに入れておく
- マンションは下がり方がゆるやかなので、築年数が経っても税額が大きく変わらない前提で考える
- 新築の場合、減額が終わった後の税額を確認しておく
相続するとき
- 住む予定がない実家は、売却・賃貸・解体などの方針を早めに決める
- 空き家にする場合は、定期的な管理の手間と費用も見込む
固定資産税は、管理費・修繕積立金・修繕費とあわせて「家を持っているだけでかかるお金」です。
購入前にこうした維持費まで含めた家計の試算をしておくと、老後の安心につながります。
まとめ:建物の価値が0円になっても、税金は0円にならない
- 売るときの建物の価格は「買う人がいくらで買うか」、固定資産税の評価額は「今、建て直したらいくらかかるか」で決まる
- 木造住宅は築20〜25年で「建物価値ほぼゼロ」とされることが多い一方、固定資産税の評価額は建て直し費用の20%で下げ止まる
- 下げ止まる年数の目安は、木造住宅が築25年、マンション(鉄筋コンクリート造)が築60年
- 木造戸建ての例では、築25年以降も家屋分だけで年約4万円、30年で約120万円がかかり続ける
- 空き家を放置して勧告を受けると、土地の住宅用地特例が外れ、税金が上がる可能性がある
「古くなれば税金はほとんどかからなくなる」と思っている人は少なくありません。
実際には、建物がある限り、固定資産税は住宅ローンを返し終えた後も、老後もずっと続く維持費です。
家を買うときは、管理費・修繕積立金・修繕費と合わせて、固定資産税も「住む限りかかるお金」として家計の試算に入れておきましょう。
実家を相続する予定がある方は、住む・貸す・売るの方針を早めに家族で話し合っておくと、空き家の税負担を避けやすくなります。
