「実家を相続したけれど、誰も住んでいない」「いずれ片付けようと思いながら数年経ってしまった」。
ご相談の中でも、こうした空き家のお話は少なくありません。
空き家は、住んでいなくても所有しているだけで税金・管理の手間・責任がついて回ります。
しかも放置期間が長くなるほど、リスクも対策のコストも大きくなりがちです。
この記事では、空き家を放置する3つのリスクと、神奈川県・横浜市で確認できる支援策、そしてライフプランとしての空き家の出口戦略を整理します。
この記事から分かること
- 空き家を放置すると高まる「防犯」「賠償」「増税」の3つのリスク
- 管理不全空家・特定空家に指定されるとどうなるか(固定資産税の特例が外れる仕組み)
- 相続した空き家の売却で使える「3,000万円特別控除」の要件と期限
- 横浜市の住宅除却補助など、神奈川県・横浜市で確認したい支援策
- 売却・賃貸・解体など、ライフプランの中で空き家をどう扱うかの考え方
空き家は増え、狙われやすくなっている
警察庁の「犯罪情勢」をもとにした報道によると、空き家を対象とした窃盗の認知件数は、2025年に全国で約1万4,000件(13,971件)となり、2020年と比べて約4倍に増えています。
このうち侵入窃盗が約85%を占めるとされています。
神奈川県でも、2023年に県警が8月末までに認知した空き家への侵入窃盗は523件にのぼり、2016年以降の記録で過去最高を更新したと報じられています。
人の出入りがなく、郵便物がたまり、庭が荒れている家は「誰も見ていない家」と見られやすく、貴重品を置いていなくても窃盗の対象になるようです。
空き家は「何もないから大丈夫」ではなく、「人目がないから狙われる」と考えたほうが安全だと思います。
空き家を放置する3つのリスク

リスク①防犯リスク(窃盗・不法侵入・悪用)
空き家で多いのは、窓ガラスを割って侵入される被害です。
茨城県警の資料では、空き家の窃盗件数が令和3年の173件から令和7年には893件へ増え、侵入手口はガラス破りが約8割、未遂も5割を超えるとされています。
盗られる物が少なくても、窓や室内が荒らされれば、修繕費や心理的な負担は所有者に残るでしょう。
また、警察庁などは、空き家や空き室が特殊詐欺の被害金や不正薬物の「受け取り場所」、犯人グループの活動拠点として悪用される事例について注意喚起しています。
呼びかけの主な対象は不動産業者ですが、「空き家のはずなのに荷物が頻繁に届く」「見慣れない表札が貼られている」「ペンでマークが付けられている」といった兆候は、所有者にとっても気づきの手がかりになります。
警察などが勧める基本的な対策は次のとおりです。
- 定期的に見回り、窓や出入口に異常がないか確認する
- 郵便物・チラシを回収し、ポストをあふれさせない
- 庭木や雑草を手入れして「管理されている家」に見せる
- 貴重品を置かない
- 家族や親族で早めに相談し、管理の担当を決める
リスク② 防災・賠償リスク(倒壊・火災・工作物責任)
古い空き家は、屋根瓦の落下、外壁の剥がれ、ブロック塀の倒壊、台風時の飛散などで、通行人や隣家に被害を出す恐れがあります。
民法717条(工作物責任)では、建物の設置・保存に欠陥があって他人に損害を与えた場合、まず占有者が責任を負い、占有者が損害防止に必要な注意をしていたときは所有者が責任を負うとしています。
所有者が自分で管理している空き家であれば、所有者が責任を問われる立場になります。
ここで押さえておきたいのは、責任の範囲です。
所有者が責任を負うのは、建物そのものの欠陥から生じた損害が中心で、第三者が無断で犯罪に使っただけの場合に、所有者が犯罪行為そのものの責任を負うわけではない、と弁護士も解説しています。
ただし、放置による倒壊や火災は別の話です。
なお、空き家は火災保険の扱いも住居用とは異なる場合があります。
契約内容によっては、空き家になった時点で補償の条件が変わることがあるため、保険会社や代理店に早めに確認しておくと安心です。
リスク③ 増税リスク(管理不全空家・特定空家)
3つ目は、固定資産税の負担が増えるリスクです。
住宅が建っている土地は、固定資産税・都市計画税が軽くなる「住宅用地の特例」があります。
| 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 | |
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 1/6 | 1/3 |
| 一般住宅用地(200㎡超の部分) | 1/3 | 2/3 |
空き家であっても、通常は住宅が建っていればこの特例が適用されます。
ところが、2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法により、「管理不全空家」または「特定空家」として市区町村から「勧告」を受けると、この特例が解除されます。
ただし、指定された時点で増税になるわけではないことです。
流れは次のとおりです。
| 状態 | 市区町村の対応 | 主なリスク |
| 管理不全空家(放置すると特定空家になるおそれがある状態) | 指導 → 勧告 | 勧告を受けると住宅用地の特例が解除され、固定資産税等が上がる |
| 特定空家(倒壊・衛生上・景観上などで著しく問題がある状態) | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 | 勧告で特例解除。命令に従わないと過料や行政代執行(費用は所有者に請求)の対象になる |
特例が外れると、税額が数倍になる可能性があります(土地の面積や評価額により異なります)。
そのうち片付けると放置しているうちに、税負担と管理責任がいっぺんに重くなるのが、空き家放置の怖さです。
神奈川県・横浜市で確認したい支援策

① 相続した空き家を売るなら「3,000万円特別控除」
相続した空き家(被相続人の居住用だった家)を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
売却時の税負担を大きく減らせる可能性がありますが、要件と期限が細かく決まっています。
主な要件は次のとおりです。
- 令和9年(2027年)12月31日までに譲渡すること
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物は対象外)であること
- 被相続人が相続開始の直前まで一人で住んでいたこと(老人ホーム等に入所していた場合は要件あり)
- 相続から売却まで、事業・賃貸・居住に使っていないこと
- 売却価額が1億円以下であること
- 親族など特別な関係のある人への売却ではないこと
- 耐震リフォームをして売るか、家屋を解体して土地として売ること(令和6年1月1日以降は、売却後に買主が耐震改修または解体をする場合も、売却した翌年の2月15日までに行えば対象)
- 相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除額は2,000万円まで
- 自治体から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告をすること
「相続したら3年以内」が大きな目安になります。
相続登記や遺産分割が長引くと、期限に間に合わなくなることがあるため、早めの準備が重要です。
② 解体費用の補助(横浜市の住宅除却補助など)
解体費用の補助については、「最大50万〜100万円」といった情報も見かけますが、自治体と条件により異なります。
横浜市で確認できる主な制度は次のとおりです。
| 制度 | 内容(概要) | 注意点 |
| 横浜市住宅除却補助制度 | 古い木造住宅等の除却費用を補助。補助上限額は区分により20万円〜50万円 | 平成12年5月末以前着工などの要件あり。令和8年度の申請期間は令和8年4月1日〜12月28日。予算状況により早期終了の場合あり |
| 建築物不燃化推進事業補助 | 重点対策地域内の老朽建築物の除却を補助。最大150万円 | 対象地域が限られる |
横浜市住宅除却補助制度は空き家専用ではなく、不燃化推進事業の対象地区外などの条件があります。
長屋・共同住宅の空家は、特定空家を除いて対象外とされています。
年度ごとに内容が変わるため、必ず横浜市の公式ページや担当窓口(防災まちづくり推進課)で最新情報を確認してください。
神奈川県内の他の市区町でも、除却補助やリフォーム補助を設けている場合があります。
「お住まいの市町村名+空き家+補助」で、公式サイトを一度確認してみてはどうでしょう。
ライフプランとしての空き家管理
空き家の問題は、「建物をどうするか」だけでなく、「そのお金と時間を、自分や家族のライフプランの中でどう使うか」という問題でもあります。
| 選択肢 | 向いているケース | メリット | 注意点 |
| 売却(建物付き・更地) | 今後住む予定がなく、老後資金や相続の分割資金にしたい | 管理負担がなくなり、現金化できる。3,000万円特別控除が使える可能性 | 要件・期限あり。耐震改修や解体のタイミングに注意 |
| 賃貸(リフォームして貸す) | 立地が良く、賃貸需要が見込める | 家賃収入を得られる。建物を維持できる | リフォーム費用、空室・修繕リスク、管理の手間。3,000万円控除の対象外になる |
| 解体して更地にする | 建物が老朽化し、売却・活用の見込みが立たない | 倒壊や防犯リスクがなくなる | 解体費用がかかる。住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がる場合がある |
| 現状維持(管理を続ける) | 近い将来に家族が住む・使う予定がある | 思い出の家を残せる | 見回り・修繕費・税金が継続的にかかる |
どれが正解というものではありません。
ただ、「決めないまま放置する」ことが、いちばんコストがかさむ選択になりやすい点は共通しています。
- 老後資金が不足しそうな場合は、売却して資金化することを検討する
- 立地が良い場合は、リフォームして賃貸にするなど、収益化も選択肢になる
- 次世代に引き継ぐ場合は、更地にするか、管理しやすい状態にしておく
まとめ|空き家は「早めに決める」ことが最大の対策
- 空き家は人目がないために狙われやすく、防犯リスクが高い
- 倒壊や火災による損害は、所有者の賠償責任につながる可能性がある
- 管理不全空家・特定空家で「勧告」を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れる
- 相続した空き家の売却には、3,000万円特別控除があるが、要件と期限に注意
- 横浜市の除却補助は、対象・上限額・期間が限られるため、事前確認が必須
- 売却・賃貸・解体・維持は、ライフプランに合わせて早めに選ぶ
「どれを選べばいいか分からない」という場合は、税金・不動産・資金計画をまとめて整理することで、道筋が見えやすくなります。
※本記事は2026年10月時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断・補助金の受給を保証するものではありません。3,000万円特別控除や補助制度は、要件・期限・予算が変更される場合があります。
参考
- 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法(改正空家法)」
- 横浜市「住宅除却補助制度」
- 警察庁「令和7年の犯罪情勢」、茨城県警察の空き家窃盗に関する資料
