賃貸物件と分譲マンションでは建物・設備の質が違います。
同じマンション内の家賃とローン返済額を比較しながら、質の違いを無視した「賃貸か購入か」論が世には溢れています。
世にあふれる賃貸vs持家論について、なぜ意味がないかを家賃とローン返済額を比較しながら解説します。
この記事から分かること
- 賃貸物件と分譲マンションで建物・設備の質に差が生まれる理由
- 同じマンション内での家賃とローン返済額(管理費・修繕積立金・固定資産税込み)の比較例
- 「賃貸か購入か」を金額だけで比較する記事の落とし穴
賃貸物件と分譲物件の質の差

賃貸物件と分譲マンションを比較すると「賃貸物件より分譲マンションの方が質がよい」のが普通です。
分譲マンションはお金をかけているので、普通の賃貸アパートよりはるかに質がよく設備も優れています。
分譲マンションは、設備・建物の質が良いので、エリアの平均的な賃料では分譲マンションは借りられません。
なぜこれほど質に差が出るかというと、そもそも建てる目的が違うからです。
分譲マンションは「一生の住まい」として購入者に選んでもらう必要があるため、断熱性・防音性、共用施設(エントランス、宅配ボックス、ゲストルームなど)のグレードを上げて資産性・居住性を高める方向に設計されます。
一方、賃貸マンションは事業として一定の利回りを確保する必要があるため、初期の建築コストを抑えた仕様になりやすい傾向があります。
もちろん、近年はハイグレードな設備を備えた賃貸マンションも増えており、賃貸だからといって一律に質が低いわけではありません。
ただし、同じ立地・同じ広さで比較した場合、分譲マンションの方が総じて建築コストをかけているケースが多いのは事実です。
不動産投資の相談では、キャッシュフローの分析をしますが、賃貸の目的は家賃収益なので自分が住むわけではなく、質が下がるのは致し方ありません。
設備や建物の質を良くすれば購入費が高くなりますが、嵩んだ購入費を回収できるかどうかを考えなければならなくなります。
反対に分譲マンションや一戸建ては自分が住むのですから質にこだわるというわけです。
分譲マンションは購入者が住むことを予定して建てられていますが、賃貸マンションは購入者が住むわけではないので当然といえます。
分譲マンションが賃貸に出ているケース
分譲マンションの一室が賃貸物件として貸し出されているものを、不動産業界では「分譲賃貸」ということがあります。
分譲マンションは本来、購入者が住むために建てられたものですが、転勤や住み替え、相続などの事情で所有者がそのマンションに住み続けられなくなり、賃貸として貸し出されることがあります。
分譲賃貸は、一般的な賃貸マンションよりも建物・設備のグレードが高いことが多く、住み心地を重視する借主から人気があります。
一方で、分譲賃貸には特有の注意点もあります。
- 家賃は、オーナーの住宅ローン返済額を基準に設定されることが多く、周辺の賃貸相場より割高になりやすい
- 契約期間が限られた定期借家契約になっているケースが多く、契約更新ができない場合がある
- マンション全体の管理規約に加えて、オーナー独自のルールが定められていることがある
- 不動産投資や賃貸経営に不慣れな個人がオーナーであることも多く、対応に時間がかかる場合がある
ある分譲マンションで賃貸と買い手を募集した例

同じ分譲マンション内でも、売る人がいれば、賃貸として貸す人もいます。
同じ分譲マンションでも、ローンで買えば月々5.8万円なのに、賃貸で募集しているのは13万円といったことも珍しくありません。
これだけの情報でみれば、買った方がよさそうに思えますが、持ち家の場合は賃貸と違って様々な費用がかかります。
この物件では毎月の管理費が17,000円かかり、修繕積立金は18,000円、固定資産税が毎年98,000円くらいかかります。
固定資産税を月割りにすると、98,000円÷12か月=約8,167円です。
1か月あたりの費用合計は、17,000円+18,000円+8,167円=43,167円です。
ローンと合わせると、58,000円+43,167円=約101,167円になります。
それでも家賃の13万円と比べれば、月々3万円弱は購入の方が安く済む計算です。
賃貸だと気づきませんが、持ち家だと結構費用がかかるということです。
それでも持ち家の方が毎月のコストが安いのは、最初から賃貸収益が目的の人は自分が損してまで貸し出さないからです。
普通に考えれば、自分が損してでも人に貸し出すということは、基本的にはあり得ないのではないでしょうか。
ただ、そういった例は普通賃貸借よりも一定期間の賃貸借(定期借家とか)で見ることがあります。
自宅を購入したが、転勤になってしまい、自宅を空き家にしておくのはもったいないから等といった理由です。
「賃貸か購入か」比較記事で見落とされやすいポイント

ネットや雑誌で、賃貸と売買はどちらが得かという記事を見かけます。
こういった記事は、お金だけで比較しているので、建物の質については考慮されていません。
質の異なる物件で賃貸と売買のどちらが得かを比べるのは無駄です。
建物の質以外にも、こうした比較記事で見落とされがちな要素があります。
団体信用生命保険(団信)の効果
住宅ローンを組む際に加入する団信は、契約者が死亡・高度障害になった場合にローン残債が保険金で完済される仕組みです。
実質的に生命保険の役割も兼ねているため、家賃と単純比較すると持ち家側の実質的なメリットが過小評価されがちです。
資産価値の変動リスク
購入した物件は将来値上がりする可能性もあれば、値下がりする可能性もあります。
賃貸にはこのリスクがない代わりに、資産としては残りません。
住み替えの自由度
賃貸は転勤や家族構成の変化に合わせて住み替えやすい一方、持ち家は売却や賃貸化の手続きに時間とコストがかかります。
修繕積立金の将来的な値上げリスク
分譲マンションの修繕積立金は、大規模修繕のタイミングで値上げされることが一般的で、購入時の金額のまま将来も続くとは限りません。
まとめ
- 分譲マンションは購入者自身が住むために建てられ、賃貸物件は大家さんの家賃収益のために建てられるものなので、同じ賃料帯でも質に差が出やすい
- 分譲マンションの一室が賃貸に出ているものは「分譲賃貸」と呼ばれ、質は高いが家賃が割高になりやすく、定期借家契約が多いといった特有の注意点がある
- 家賃とローン返済額だけを比べると購入の方が安く見えても、管理費・修繕積立金・固定資産税を加えると実際の負担額は近づく
- 「賃貸か購入か」の比較では、建物の質に加えて、団信保険の効果・資産価値の変動リスク・住み替えの自由度・修繕積立金の将来的な値上げといった要素も考慮する必要がある

