タワーマンションは、眺望やセキュリティ、駅近の利便性から人気の高い住まいです。
一方で、購入を検討する際に見落とされがちなのが「そのマンションに、実際にどれくらいの人が住んでいるか」という視点です。
2025年2月、神戸市の有識者会議が公表した報告書に、この点を裏付けるデータが示されました。
本記事では、この実態調査の内容を整理しながら、タワーマンション購入前に確認しておきたいポイントを、宅建士・マンション管理士・1級FP技能士の視点でお伝えします。
なお、本記事で取り上げるのは神戸市の調査データなので、横浜市を含む他都市の特定物件について同様の数値が当てはまるとは限りませんが、都心部のタワーマンションに共通して起こる構造的な傾向として参考にしてください。
この記事から分かること
- 神戸市の実態調査で明らかになった、タワーマンションの階層別「住民登録なし」割合
- 高層階の所有者のうち、実際にそこに住んでいない人の割合
- 非居住が増える背景にある事情(セカンドハウス・投資・相続など)
- 非居住の増加が管理組合の合意形成や将来の修繕にどう影響するか
- タワーマンション購入前に確認しておきたいチェックポイント
高層階になるほど、住民登録のない部屋が増える

神戸市「タワーマンションと地域社会との関わりのあり方に関する課題と対応策(報告書)」(タワーマンションと地域社会との関わりのあり方に関する有識者会議、2025年2月公表)によると、市内のタワーマンションにおける住民登録のない部屋の割合は、階層が上がるほど増加する傾向が確認されています。
| 階層 | 住民登録のない部屋の割合 |
| 1〜9階 | 14.0% |
| 30階以上40階未満 | 21.2% |
| 40階以上 | 33.7% |
| タワーマンション全体の平均 | 16.6% |
40階以上では、およそ3戸に1戸が住民登録のない部屋という結果です。
ただ、この数値はあくまで「住民登録の有無」による集計であり、住民登録がなくても実際に生活している方や、逆に住民登録があっても実態として居住していないケースもありうる点には注意が必要です。
40階以上では、所有者の半数以上が「そこに住んでいない」

同報告書では、所有者の居住・非居住の内訳についても示されています。
40階以上の所有者内訳
- そのマンションに居住:42%
- 非居住(市内の別の場所に居住):24%
- 非居住(市外に居住):23%
- 非居住(法人所有):11%
1〜9階の所有者内訳(比較)
- そのマンションに居住:64%
- 非居住:36%
高層階になるほど、所有していても実際には住んでいない人の割合が高まる傾向が、所有者データからも裏付けられています。
なぜ非居住の所有が増えるのか

非居住の所有が増える背景には、主に以下のような事情があると考えられます。
セカンドハウスとしての所有
眺望やセキュリティを重視し、普段の生活拠点とは別に保有するケース
投資・資産保全目的の所有
賃貸運用や資産の分散保有を目的とするケース
相続・転勤などによる空室化
相続した部屋にすぐには住まない、転勤で一時的に空室になるといったケース
戸建ては相続が原因で空家になることが多いですが、タワマンだと投資目的が原因で空家になることが多くなります。
これらは都心部のタワーマンションで構造的に起こりやすい現象といえますが、本来住みたい人が住めないというのは問題といえます。
非居住が増えると、何が起こりうるのか

①住みたい人が、適正価格で買えなくなるおそれ
報告書はまず、次の点を課題として挙げています。
「投資やセカンドハウス目的の所有が増えることで、価格が高止まりし、居住目的で取得を希望する者が適正価格で取得できず、貴重な住宅ストックが活用されていない可能性がある」
つまり、実際にそこで生活したい人が、投資・資産保全目的の需要と競合することで、価格が実需の水準以上に高止まりし、本来の目的である「住まい」として取得しにくくなる、という懸念です。
タワーマンションという住宅ストックが、居住用としてではなく資産保有の手段として使われる比重が大きくなることを問題視しています。
②管理組合の合意形成が難しくなるおそれ
もう一つの論点が、マンション管理への影響です。
懸念される流れ
- 所有者の生活状況や管理への意識にばらつきが生まれる
- 修繕積立金の値上げなど、重要な意思決定で合意形成が難しくなる
- 将来、必要な修繕や建替えの判断が遅れるおそれがある
報告書では、非居住の区分所有者が増えることで「管理組合における合意形成の障害になり、適切な修繕がなされず、将来的に景観や工作物責任等の外部不経済を招来するおそれがある」と指摘しています。
③住民税の問題
住民票を置いていない所有者からは、所得に応じた「個人住民税(所得割)」が入ってきません。
しかし、自治体側はタワマン周辺の道路・警察・消防・ゴミ処理などのインフラや行政サービスを提供し続ける必要があるため、行政のコストだけがかさむ形になります。
そのため報告書は、こうした「受益と負担のズレ」を是正する手段として、タワーマンションの非居住住戸を対象とした法定外税(新税)の創設を検討課題として挙げています。なお、これはあくまで検討段階の論点であり、2026年8月時点で新税が実際に導入されているわけではありません。
タワーマンション購入前に確認したいチェックポイント
以上を踏まえ、タワーマンション購入を検討する際は、価格や眺望だけでなく、以下の点も確認しておくことをおすすめします。
- 管理組合の届出・運営状況を確認したか
- 修繕積立金の積立方式(段階増額か均等積立か)を確認したか
- 所有者の居住・非居住比率について、管理会社や重要事項調査報告書等から確認したか
- 長期修繕計画の内容と、積立金残高の過不足を確認したか
- 管理規約や、これまでの総会での合意形成の実態を確認したか
これらは売買時の資料だけでは分かりにくい部分も多く、管理会社への確認や、専門家によるチェックが有効です。
まとめ
神戸市の実態調査からは、タワーマンションの高層階ほど住民登録のない部屋の割合が増える傾向、そして所有者の半数以上が「そこに住んでいない」ケースがあることが明らかになりました。
これ自体は珍しいことではありませんが、非居住の増加は将来的な管理組合の合意形成や修繕計画に影響しうる要素として、購入前に意識しておく価値があります。
タワーマンションの購入を検討される際は、価格や設備だけでなく、管理の実態にも目を向けることが重要です。
出典
- 神戸市「タワーマンションと地域社会との関わりのあり方に関する課題と対応策(報告書)」タワーマンションと地域社会との関わりのあり方に関する有識者会議、2025年2月
