不動産のトラブルの中でも、敷金や保証金をめぐるトラブルは件数が多く、国土交通省が原状回復に関するガイドラインを公表しているほどです。
賃貸物件の退去では、不動産会社立会いのもとで物件を引き渡し、その後修繕費を差し引いた金額が返金されるのが一般的な流れです。
しかし、この返金額をめぐってトラブルに発展するケースは少なくありません。
敷金の精算では、不動産会社はどうしても貸主側の立場に立つことが多いのが実情です。
そうした中、借主側に立って敷金トラブルの解決を支援する「敷金診断士」という専門家がいます。
この記事から分かること
- 敷金診断士とはどんな資格・専門家か
- 敷金診断士に依頼するとどんなサポートが受けられるか
- 敷金・保証金トラブルの実態と、原状回復義務の考え方
- 敷金診断士試験の概要(受験料・合格率・出題科目)
敷金診断士とは
敷金診断士とは、賃貸における敷金・保証金をめぐるトラブルの解決を図る専門家として、特定非営利活動法人日本住宅性能検査協会が認定する民間資格です。
同協会が実施する試験に合格し、所定の講習を経て登録を受けた人が、敷金診断士として認定されます。
第三者としての立場から、賃貸物件の適正な原状回復費用を査定し、敷金・保証金トラブルの円滑な解決に努めるのが役割です。
全国の消費生活相談窓口には、敷金・保証金をめぐる苦情・相談が年間1万件を超えて寄せられています(年度により件数は変動します)。
敷金診断士は、こうした相談に対して的確なアドバイスを行う専門家として、今後の活躍が期待されている資格です。
敷金診断士に依頼できること

敷金診断士に依頼すると、以下のようなサポートを受けられます。
- 不動産会社との退去立会いに関する相談対応
- リフォーム費用の調査、査定書の作成
- 退去時の入居者・管理会社立会いへの同席、室内調査
- 国土交通省の原状回復ガイドラインに基づく、自然損耗・経年劣化・汚損の判断アドバイス
これまでの退去立会いは、どうしても不動産会社主導でリフォーム費用や敷金の精算が進められる傾向がありました。
本来は借主が負担しなくてよい費用まで請求されてしまうケースも見受けられます。
借主側に立つ敷金診断士の存在は、こうした不動産業務の健全化につながることが期待されています。
敷金診断士試験の概要
敷金診断士試験を実施しているのは、特定非営利活動法人日本住宅性能検査協会です。
試験はコンピューターを使ったCBT方式で、全国約200会場から受験地を選べます。
| 項目 | 内容 |
| 試験方式 | CBT方式(4肢択一・50問) |
| 試験時間 | 90分 |
| 合格基準 | 正解率7割程度 |
| 合格率 | 概ね60〜70%(非公開・団体発表の目安) |
| 受験料 | 8,800円(非課税)※金額は変更される場合があります |
| 登録に必要な費用 | 登録講習料・登録手数料が別途必要(金額は協会公式サイトでご確認ください) |
※費用体系は改定されることがあるため、最新の金額は日本住宅性能検査協会の公式サイトでご確認ください。
試験科目は、法令系科目と建築系科目に分かれます。
法令系科目
民法、借地借家法、消費者契約法、区分所有法、宅建業法、品確法、民事訴訟法、標準賃貸借契約書など、建物賃貸に関わる法令・判例
建築系科目
建築物の構造・概要、建築物に使用される主な材料、建築物の部位の名称、建築設備の概要、建築物の維持保全に関する知識、建築物の劣化・修繕工事に関する事項
こんな人におすすめ

敷金診断士は、これから不動産の賃貸業界への転職を考えている人に特におすすめの資格です。
管理業務がメインの不動産会社でも、知識が役立ちます。
敷金だけでなく、賃貸・管理業務全般の知識を学べるのも特徴です。
賃貸業・管理業に携わるときは貸主側の視点、独立した第三者として活動するときは借主側の視点、というように立場を使い分けられる点も、この資格ならではの強みです。
原状回復義務とは
退去後にどこまで部屋を直すかという範囲を「原状回復義務」といいます。
原状回復の範囲については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が参考になります。
経年劣化や通常の使用による損耗は、原則として借主の負担にはならないとされている点がポイントです。
まとめ
- 敷金診断士は、借主側に立って敷金・保証金トラブルの解決を支援する民間資格
- 実施団体は特定非営利活動法人日本住宅性能検査協会
- 敷金・保証金をめぐる相談は全国で年間1万件超にのぼる
- 退去時の原状回復費用に納得がいかない場合は、国土交通省のガイドラインや敷金診断士への相談が選択肢になる
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、資格試験の受験料・登録費用等は変更される場合があります。最新情報は必ず実施団体の公式サイトでご確認ください。個別の敷金トラブルについては、専門家にご相談ください。

