令和二年度の宅建業者講習は、テキストを使った自習になっています。
宅地建物取引業者、いわゆる不動産業者のことですが、宅地建物取引業者には毎年講習を受けることが義務付けられています。
この講習は、宅建業者講習と呼ばれており、神奈川県であれば、横浜、川崎、藤沢といった大きめの都市で、何百社もの不動産業者の人が集まって講習が行われます。
各地でそれぞれ開催されるのですが、特に予約が必要というわけでなく、自分の受けたい場所や都合のつく日に受ければいいことになってるので、外出のついでに受講しています。
ちなみに昨年は藤沢で、前々年は川崎方面に行ったついでに受講しました。
令和2年度については、新型コロナウイルスがいつ終息するか不明なため、感染症の拡大防止の観点から会場での講義を行わず、不動産協会のホームページからダウンロードした教材を使っての自習となりました。
テキストを使った自習はなかなか捗りませんでしたが、何とか期限内に終わりました。
令和2年度の宅建業者講習は、学習報告書の提出が必要
例年であれば、会場に足を運んで講義形式で宅建業者講習は行われます。
その際に講習受講証を持参して会場で押印してもらうのですが、試験のようなものはなく、出席さえすれば押印してもらえます。
毎年、講習受講証に押印してもらい、宅地建物取引業免許の更新時には、5回分の押印がされた受講証の提出が必要です。
神奈川県知事免許の宅地建物取引業者は、免許更新の際に、業法施行細則第1条第3号の規定に基づき「知事が必要と認める書類」として、研修受講証の「受講記録」(写し)の添付が必要になります。
神奈川県の場合は、「全日神奈川 宅建業者講習」で検索すると、トップページに宅建業者講習の案内ページが表示されるので、ここからテキストをダウンロードします。
神奈川県は公開期限が7月10日までで、学習報告書の期限は7月31日になっています。
公開期限と報告期限とにずれがあるので、ダウンロードだけは早めにしておいた方がよさそうです。
令和2年度神奈川県の宅建業者講習
神奈川県本部のホームページから教材をダウンロードして自習し、学習報告書を提出
公開期間:令和2年6月1日~7月10日
報告期限:令和2年7月31日
宅建業者講習は、代表者が必ずしも受けなければいけないというわけではなく、1社につき1名が学習すればよいことになっています。
1社につき1名が学習すればよいのは、今回に限らずいつもそうです。
テキストでの自習だと大変なので、神奈川県本部に分かりやすい動画みたいのはないか問い合わせてみましたが、そういうものはやっていないとのことです。
これだと学習報告書だけ提出して自習しない人の方が多そうです。
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自習してみて
例年の講習であれば、講師が教材での要点を中心に講義してくれるので楽なのですが、自習だとテキストを読みながら理解が必要なのでかなり苦痛です。
宅建業者講習なんて、ただ出席するだけの形式的な制度だと思ってましたが、やはり参加すればそれなりに知識のアップデートができます。
ほとんどの業者は報告書を提出するだけだろうと思いながら、1か月くらいかけてテキストを読み終えました。
面倒でもパラパラと資料を見て、知らない箇所だけ読むだけでも違うと思います。
特に2020年からは民法改正があり、いくつかの部分は不動産業者にも大きく関わっています。
特に契約不適合責任、危険負担の債務者主義は関りが強いです。
あわせて任意規定と強行規定について見直しをしておくのがよさそうです。
民法改正について、分かりやすそうな本がないか図書館に行ったのですが、新型コロナウイルスのせいで席の利用が禁止されてました。
現在、図書館では貸し出しは行ってますが、席の利用は禁止とのことです。
コロナの状況を見ながら、利用の再開を目指すとのことです。
以下、気になった部分です。
依頼者の承諾のない借賃1月分の媒介報酬の受領
宅地建物取引業法の第46条には、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる」ことが記載されています。
そして、賃貸借の仲介については、依頼者の承諾がないと仲介手数料1か月分の報酬を受けることが禁止されています。
といっても実際は「仲介手数料1か月分を支払うものとする」みたいなことを契約書に入れられていて、借主はよく分からないまま同意したことになっています。
賃貸で部屋を借りる際、多くの業者が1か月分の仲介手数料を請求してくるので、手数料は原則0.5か月払えばよいということを知っておくと交渉すれば負けてくれるかもしれません。
特定物でも債務者が危険を負担することに
売買契約が成立した後、買主及び売主の双方に責任がないのに履行不能となった場合、どちらが負担するかというのが危険負担の問題です。
改正前の民法では、不動産などの特定物は、買主及び売主に責任がない場合は、買主が負担することとされていました。
例えば、不動産の引渡し前に落雷などで建物が滅失してしまった場合でも、買主は現金の支払いは免れないというものです。
ただし、不動産の実務では、契約書に売主が負担するように変更されていました。
目的物の引渡しを受ける「債権者」と、引き渡す義務を負う「債務者」から、債権者が負担する場合を債権者主義、債務者が負担する場合を債務者主義といいます。
今回の改正で債権者の危険負担についての部分が削除され、不特定物だけでなく、特定物も含めて債務者が負担することになります。
変更後
民法536条
1.当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2.債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
民法412条の2
1.債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2.契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
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瑕疵担保責任が契約不適合責任に
瑕疵担保責任の瑕疵とは、欠陥のことをいいます。
瑕疵担保責任は、不動産取引後に発覚した瑕疵(隠れた瑕疵)について誰が責任を負うのかという問題です。
契約不適合責任では、契約内容に適合しない引渡しだった場合は、買主は売主に対して履行の追完を催告できるようになります。
不動産の引き渡し後に瑕疵が見つかり、契約内容に適合しないのであれば買主は履行の追完を請求でき、履行の追完がない場合は代金の減額を請求できることになります。
民法562条
1.引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2.前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
民法563条
1.前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2.前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3.第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。