不動産がある相続はなぜもめる?相続トラブルの原因と対策

ファイナンシャルプランナー

「相続なんてお金持ちの話」――そう思ってませんか?

確かに、相続税が課税されるのは全国で約9.6%(令和4年度・国税庁)ですが、相続でトラブルになるのは相続税がかからない家庭の方が多いといわれています。

神奈川県の課税割合は14.3%と全国3位の高さですが、それでも多くの方に相続税はかかりません。

 

相続は資産を引き継ぐことだけでなく、借金を引き継ぐこともあります。

相続税の有無に関わらず、特に不動産を含む相続はトラブルになりやすいという実態があります。

日本では2013年に高齢率が25%を突破し、現在も高齢者の割合は増加しています。

 

この記事では、不動産を含む相続がもめやすい理由・借金も相続する仕組み・相続放棄と限定承認の違い・遺言書の効果と種類について解説します。

この記事で分かること

  • 相続でもめやすいケースの特徴
  • 借金(マイナスの財産)も相続する仕組み
  • 相続放棄・限定承認の違いと手続き
  • 不動産が含まれる相続がもめる理由
  • 遺言書の種類と効果
  • 農地の相続の注意点

 

相続でもめるのはお金持ちだけではない

相続税が課税される相続は全国で約9.6%(令和4年度・国税庁)です。

裏を返せば、約9割の相続には相続税がかかりません。

しかし、家庭裁判所に持ち込まれる相続に関する調停・審判の件数を見ると、相続財産の総額が1,000万円以下の事案が全体の約3割を占めています。

相続税がかからなくてもトラブルになるというのが、相続の実態です。

 

神奈川県は相続税の課税割合が高い

神奈川県の相続税課税割合は14.3%と全国3位の水準です(令和4年度・国税庁)。

首都圏では地価が高いため、相続財産に占める不動産の割合が高く、課税される確率も高くなります。

 

資産ばかりではなく、借金(マイナスの財産)も相続する

相続財産というと不動産・預貯金などプラスの資産をイメージしがちですが、借金などのマイナスの財産(負債・債務)も相続の対象となります。

知らずにいると、相続開始後に多額の借金が発覚するというケースも起こり得ます。

被相続人(亡くなった方)が亡くなると、法律で定められた相続人は何もしなければ「単純承認」となり、プラスの財産もマイナスの財産も無条件で相続することになります。

 

相続放棄と限定承認

借金がある場合、相続するかしないかは相続人が選択できます。ただし、そのためには手続きが必要です。

 

相続放棄

相続を放棄する場合は、自分が相続人となったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

この3か月を過ぎると単純承認となり、借金を含む全ての財産を相続することになります。

相続を放棄すると、プラスの財産も含めて全て相続できなくなります

 

限定承認

限定承認は、プラスの財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐという選択肢です。

ただし、限定承認には以下の制約があります。

  • 相続人全員が共同で家庭裁判所に手続きをする必要がある
  • 相続人の一人でも反対すると利用できない
  • 手続きが複雑なため、専門家への相談が必要

 

3つの選択肢の比較

選択肢 概要 手続き 期限
単純承認 プラス・マイナス全て相続 不要(何もしない)
相続放棄 全ての財産を相続しない 家庭裁判所に申述 3か月以内
限定承認 プラスの範囲でマイナスを承継 相続人全員で家庭裁判所に申述 3か月以内

相続放棄・限定承認ともに3か月という期限があります。

借金の有無が不明な場合は、期限内に専門家に相談することが重要です。

 

相続というとプラスの財産を想像しがちですが、マイナスの財産も相続することもあることを知っていれば、最悪の事態は免れることが出来ます。

 

不動産が多いと相続でもめやすい理由

相続でもめる理由の一つが、日本の相続は不動産の割合が高いということです。

相続でもめるケースの中でも、特に不動産を含む相続はトラブルになりやすい特徴があります。

 

① 価値が分かりにくい

現金であれば金額が明確ですが、不動産は評価方法によって価値が変わります。

路線価・固定資産税評価額・実勢価格が異なるため、「どの金額が正しいのか」ももめる理由です。

 

② 分割が難しい

現金は均等に分割できますが、不動産は物理的に分割できません。

 

具体例:相続人が兄と弟の2人・相続財産が現金1,000万円と7,000万円の不動産のみ

  • 現金の分割は容易ですが、不動産は分割できません
  • 兄弟の一方が居住していれば、売却して換金することも難しくなります
  • 土地を面積で分筆しても、分け方によって土地の価値に差が生じます

 

③ 共有にすると将来が複雑になる

とりあえず共有で相続した場合、世代が替わるごとに相続人が増え続けます。

数十年後には共有者が数十人・数百人になり、処分不可能な状態になるケースもあります。

不動産の相続は、先送りにするほど解決が難しくなります。早めに専門家に相談することが重要です。

 

神奈川県での不動産相続の特徴

神奈川県は地価が高いエリアが多く、相続財産の中で不動産が占める割合が大きくなりやすい傾向があります。

横浜市・川崎市などの都市部では特にこの傾向が強く、不動産の評価額が相続税の基礎控除を超えるケースも少なくありません。

 

7割以上の人が相続でもめないと思っている

自分が死んだあとの遺産相続で遺族がもめないと思っている人は7割以上に達するそうです。

もめないと思っているので遺言書を用意していないケースが結構あるようです。相続税がかからない場合の相続の方が裁判に発展する事件が多くなっていることは知っておくとよいでしょう。

 

もめる相続を防ぐ|遺言書の効果と種類

相続トラブルを防ぐ最も有効な対策の一つが遺言書の作成です。

遺言書で財産の配分・遺言執行者を指定しておくことで、相続人間の争いを未然に防ぐ効果があります。

また、配偶者・子・父母以外の相続人に対する遺留分の問題を整理しておくことで、トラブルを避けることができます。

 

遺言書の3種類

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがありますが、遺言書は法律に則った方式でなければ無効になってしまいます。

自筆証書遺言は、費用を抑えることができますが、自己流だと無効になるケースもあります。

 

種類 特徴 メリット デメリット
自筆証書遺言 全て自筆で作成 費用がかからない 形式不備で無効になるリスク
公正証書遺言 公証人が作成 確実に有効・紛失リスクなし 費用がかかる
秘密証書遺言 内容を秘密にできる 内容を誰にも知られない 利用されることが少ない

確実に有効な遺言書を残したい場合は、費用はかかりますが公正証書遺言の作成がおすすめです。

 

自筆証書遺言書保管制度

2020年から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。

 

この制度のメリット

  • 法務局が預かるため、紛失・改ざんの心配がない
  • 裁判所での検認が不要になる
  • 相続人への通知もしてくれる
  • 費用は3,900円

自筆証書遺言の形式を法務局がチェックしてくれるため、形式不備による無効を防ぐことができます。

 

認知症への備え

遺言書は意思能力がある状態で作成する必要があります。

認知症になってしまうと意思能力の問題が生じ、遺言書が作成できなくなる場合があります。

遺言書の作成は、元気なうちに検討することが重要です。

 

相続の専門家について

相続を専門にしているのは、弁護士・司法書士・行政書士といった士業が多く、相続税については税理士が専門家になります。

注意したいのは、これらの専門家であっても全員が相続に精通しているわけではないという点です。

相続の相談をする場合は、その専門家が実際に相続案件を多く扱っているかを確認することが重要です。

また、不動産が絡む相続の場合は、不動産の専門家との連携も有効です。不動産の評価・売却・管理といった実務面でのアドバイスを得ることができます。

 

農地の相続は届け出る

地方の土地を相続する場合、農地が含まれることがあります。

相続で農地を取得した場合は、農業委員会への届出が必要です。

 

農業委員会では農地の管理・貸し出しに応じてくれることもあるので、農地を相続した場合は相談してみることをおすすめします。

 

また、開発する場合の手続きは以下のように異なります。

  • 市街化区域内の農地の売買:農業委員会への届出で対応可能
  • 市街化調整区域の農地の売買・開発:農業委員会の許可が必要

地方の土地相続では市街化調整区域であるケースも多く、想定外の制約があることがあります。土地の区域の確認も早めに行うことをおすすめします。

 

まとめ

もめる相続の特徴

  • 相続税がかかる相続だけがトラブルになるわけではない
  • 相続財産が少額でも、不動産が含まれるとトラブルになりやすい

 

借金の相続

  • マイナスの財産も相続の対象となる
  • 相続放棄・限定承認は3か月以内に手続きが必要

 

不動産が含まれる相続がもめる理由

  • 価値の評価が難しい
  • 物理的に分割できない
  • 共有にすると将来が複雑になる

 

対策

  • 遺言書の作成(できれば公正証書遺言)
  • 自筆証書遺言書保管制度の活用
  • 元気なうちに専門家に相談
  • 不動産の相続は先送りにしない

 

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の法律・税務上のアドバイスを提供するものではありません。相続に関する個別の判断は弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。

相続税の課税割合データは国税庁令和4年分の統計に基づきます。制度は本記事執筆時点(2026年4月)のものです。

 

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