ペットを飼っているマンションで飼育を禁止する規約の変更は有効か

投稿日:2021年12月14日 更新日:

「規約を新しく設定してペットの飼育を禁止することは可能でしょうか?」

 

区分所有マンションでは、それぞれ構造や居住者が多様なので、個々のマンションに合わせて管理・運営が行われています。

マンションの管理・運営のルールを定めたものが規約といわれるものです。

 

マンションの共用部分に区分所有者のペットが糞尿をまき散らしていれば、当然、行為の停止を請求できます。

問題は実際の被害が発生していないのに、ペットの飼育を禁止する規約の設定・変更が可能かどうかです。

この場合は、その規約の変更が一部の区分所有者(ペットを飼っている所有者)の権利に特別の影響を及ぼすかどうかによるとされています。

もしも規約の変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすのであれば、規約の設定にはその人の承諾が必要になります。

区分所有マンションのルールを定めた区分所有法と管理規約

区分所有マンションでは、区分所有法と管理規約がルールになります。

区分所有者であれば、総会に参加して管理規約を変更することも可能です。

総会は全ての区分所有者が構成員となる、そのマンションの最高意思決定機関だからです。

 

この総会の決議には、普通決議と特別決議があります。

普通決議は規約で別段の定めをした時を除いて、原則として区分所有者および議決権の各過半数で決まるとされています。

特別決議はマンションの重大事項に関するものなので、区分所有者および議決権の各3/4以上で決することになります。

 

規約の変更・設定・廃止については、特別決議により変更することが可能です。

となるとペットの飼育が可能なマンションであっても、規約が変更されてペットの飼育が禁止となることはあり得ます。

反対に規約の変更があれば、ペットの飼育禁止のマンションからペット飼育可のマンションになることも可能です。

 

特別の影響とは

特別の影響とは、規約の設定の必要性や合理性と、それによって一部の区分所有者が被る不利益とを比較して、不利益が受忍限度を超えることをいいます。

受忍限度というのは、社会通念上ガマンできる限度のことをいいます。

 

区分所有マンションでは、規約の設定や変更をする際に一部の区分所有者に不利益を押し付けることがないよう、特別の影響を及ぼすときは、その区分所有者の承諾を得なければならないことになっています。

 

そこでペットを禁止する旨の規約の変更が、現在ペットを飼っている区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすかが問題となります。

もし特別の影響を及ぼすのであれば、規約を変更するには現在ペットを飼っている区分所有者の承諾が必要になりますし、特別の影響にあたらないのであれば、総会の決議の成立により規約を変更することができるわけです。

つまり特別の影響を及ぼすなら、ペットを飼っている人の承諾が必要 → 却下の可能性となるわけです。

 

ペットを禁止する規約の変更を認めた判例

ペットを禁止する規約変更を定めることができるかどうかは、実際に過去に裁判で争われています。

ペットの飼育をめぐって規約で禁止できるかどうかは、いずれも実害発生の有無を問わず特別の影響にあたらないとされ、総会の決議が成立すればペット飼育を禁止する規約を定めることができるとされています。

 

規約の適用に明確さ、公平さを期すことに鑑みれば、ペット飼育禁止の方法として、具体的な実害の発生を待たず、類型的に有形無形の影響を及ぼす危険、恐れの少ない小動物以外の動物の飼育を一律に禁ずることにも合理性が認められるから、このような動物の飼育について、共同の利益に反する行為として、これらを禁止することは区分所有法の許容するところであると解するのが相当である。

最判平成10年3月26日

盲導犬の場合ように、その動物の存在が飼主の日常生活・生存にとって不可欠な意味を有する特段の事情がある場合以外は、規約により動物飼育の全面禁止の原則を規定することも認められる。

高判平成6年8月4日

参考 別冊ジュリスト不動産判例百選 192

 

現にペットを飼育している人もいることから、一般的には現在飼育中の犬猫一代限りで認めることが多いようです。

 

おわりに

ペットは飼い主にとっては癒しですが、他人にとっては糞や騒音の原因です。

ペットの飼育を禁止するという規約の設定は、現在ペットを飼っている区分所有者の権利に特別な影響を及すものにはあたらず、一律にペットを禁止することも合理性があると判断されています。

総会の特別決議で正規の手続きを取れば、実害の有無を問わずペットの飼育を禁止することも可能です。

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