専用通路が共有のため、隣の土地と合わせて1軒の家しか建てられない土地|共有通路と再建築リスクの実例

共有道路 不動産

建物を建てる場合に重要となる法律が建築基準法です。

 

建物を建てる際に重要となる法律が建築基準法です。

建築基準法は、建物を建築する場合の最低基準を定めた法律で、土地の所有権があるからといって自由に建物を建てられるわけではありません。

建築基準法の制限を守らなければ、建物の建築は認められません。

 

建築基準法には「4m以上の道路に2m以上接道しなければならない」という接道義務があり、この道路付けが不動産の価値を左右することも珍しくありません。

 

一見すると普通の一戸建てに見えても、接道義務を満たしていないために再建築ができない不動産は少なくありません。

今回は、接道義務をめぐって実際に裁判で争われた事例(平成23年判決)をもとに、その内容を解説します。

なお、ここでいう「道路」は建築基準法上の道路を指し、法律によって道路の定義が異なる点にも注意が必要です。

 

この記事から分かること

  • 建築基準法の接道義務(4m以上の道路に2m以上接道)の基本
  • 共有通路が接道義務の落とし穴になった実際の判例
  • 説明義務違反が問われた場合の時効・期間制限の考え方(2020年民法改正による変更点)
  • 接道義務を満たさない土地の資産価値と、隣地購入による「限定価格」という考え方
  • 連棟式住宅・タウンハウスなど、再建築が難しい土地に建てられる建物の特徴

 

専用通路狭いため隣の土地と合わせて1軒の家しか建てられない

今回紹介する事例は、平成23年に判決があった裁判をもとにしています。

古くからの街には、こうした土地が意外と存在します。

 

登場人物

  • B土地所有者Bさん
  • Bさんから買取依頼を受けた不動産業者C
  • AとBを15年以上前に販売した不動産業者D

 

土地Aと土地Bは、幅2.7mの専用通路を共有しており、この専用通路は6mの公道に接していました。

専用通路は見た目には道路のように見えますが、法律上は道路ではなく「土地」であり、今回のケースではAとBが共有する土地でした。

共有道路

建物を建てる場合は4mの道路に接道していなければならないため、AとBの当初の建築の際には、4mの道路を設置することを条件に建築確認を取得していました。

しかし、Bさんが不動産業者に査定を依頼した時点では、AとBの共有通路があるだけの状態でした。

AとBの共有通路である以上、A・Bそれぞれの土地は単独では接道義務を果たしていません。

 

そのため、Bの土地の査定を依頼された不動産業者Cは、接道義務を満たしていないことを理由に買取できないと回答しました。

この査定をきっかけに、B土地が接道義務を満たしていないことを知ったBさんは、15年以上前にB土地を販売した不動産業者Dを相手取って訴訟を起こしました。

 

裁判の結果、不動産業者Dの説明義務違反が認められ、損害賠償請求の一部が認められました。

 

説明義務違反の時効・期間制限について

不法行為(説明義務違反等)に基づく損害賠償請求権は、民法724条により、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消滅するとされています。

 

この20年の期間について、当時(本判決当時)は判例上「除斥期間」(時効の完成猶予・更新の対象にならない、一律に権利が消滅する期間)と解されていました。

今回の事例で20年以内であったことが、損害賠償請求が認められた一因となっています。

 

ただし、2020年4月の民法改正により、この20年の期間は「消滅時効」と明文で位置付けられるようになりました。

消滅時効であれば、一定の事情がある場合に時効の完成が猶予されたり、更新されたりする余地があります。

現在同様の事案が問題になった場合は、改正後の民法724条にもとづいて判断されることになります。

 

接道義務を満たしていない不動産は多い

上記の事例のように、接道義務を満たしていない不動産は少なくありません。

接道義務を満たしていない土地は建物を建てることが難しく、一般的な不動産よりも資産価値が下がる傾向にあります。

 

代表的なパターンとして、次のようなケースがあります。

  • 2m未満しか接道していないケース
  • 再建築は可能だが、隣の土地と合わせないと1軒分の建築しかできないケース

 

今回紹介した事例は、後者のケースにあたります。

AとBの共有部分(専用通路)の幅は2.7mのため、AとBを1つの土地とみなせば「6mの公道に2.7m接道している」ことになり、両者を合わせて1軒を再建築する場合は接道義務を満たします。

しかし、Bの土地単独では再建築が難しいため、周辺の土地よりも資産価値が下がることになります。

 

土地を高く買ってくれるのは隣人?

2m接道していないケースであっても、隣接地の一部を購入することで再建築が可能になった例もあります。

この場合の取引価格は「限定価格」と呼ばれる考え方が一般的です。

 

限定価格とは、特定の条件下でのみ成立する不動産価格のことです。

隣接する土地の一部を購入することで接道義務を満たせるのであれば、購入する側にとってその土地の価値が上がるため、限定価格が成立することになります。

第三者から見れば他の土地と価値は変わらなくても、その特定の隣接地所有者にとっては価値が上がる土地、ということです。

 

整形地でなかったり、道路付けの悪い土地は少なくないため、隣接する土地を購入することで資産価値が上がるケースもあります。

こうした事情から、接道義務を満たさない土地を最も高く買ってくれる可能性が高いのは、隣人であることが多いといえます。

 

連棟式住宅という選択

今回紹介した事例の土地に建て替えを行う場合、1つの建物を左右に分ける「連棟式住宅」が選択肢として考えられます。

1つの建物ではあるものの、左右それぞれに所有者が存在する形態です。

 

建て替えを行う際は、それぞれの所有者の合意が必要になるため、建て替えのハードルは高くなります。

似た形態として、テラスハウスや、専有部分ごとに敷地の権利を持つタウンハウスもあります。

 

こうした土地・建物で特に問題になりやすいのが、住宅ローンの組みにくさです。

審査に応じない金融機関がある一方、金利は高くなるものの対応してくれる金融機関もあります。

 

まとめ

☐ 建築基準法の接道義務(4m道路に2m以上接道)を満たさない土地は少なくない

☐ 専用通路が隣地との共有になっている場合、単独では接道義務を満たさないことがある

☐ 説明義務違反の損害賠償請求権の期間制限は、2020年の民法改正で「除斥期間」から「消滅時効」に位置付けが変わった

☐ 接道義務を満たさない土地は資産価値が下がりやすいが、隣地所有者には「限定価格」で価値が上がることがある

☐ 再建築が難しい土地では、連棟式住宅等の選択肢や、住宅ローンの組みにくさにも注意が必要

 

 

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。法律に関する個別のご相談は弁護士等の専門家にご相談ください。

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